皆様お久しぶりでございます。約5ヶ月間なんの音沙汰もなく大変申し訳ありません。
今回の作品は前後編となる予定となっております。もしかしたら中編ができる……かも?できる限り8月中に描き終われるように頑張りますのでよろしくお願いします。
では、どうぞ。
夏休み(前編)
7月も終わりには差し掛かったある日。
「あ゛ぁ゛〜……。夏休み1ヶ月しかねぇのにこの課題の量……。やる気失せるわぁ……。」
「ちょっと大利!!お友達が来てるわよ!!」
「んぁ?友達ぃ??……今日誰かと遊ぶ約束してないような……まぁいいか。今行くー!!」
俺は部屋を出て玄関の方へと重い足をゆっくりと動かす。もしかしたら今日は誰とも会わない日だと俺が勝手に勘違いしているだけで実は何かしら約束を取り付けていたのかも、と記憶を終業式以前まで遡らせてみるも友達とそんな話をした記憶はさっぱりない。
はてさて誰が俺を訪ねてきたのかと少しワクワクしながら玄関へのっそのっそと歩いていくと、土間の所にはイヴとメアリーがおそらく母さんから貰ったであろうチューペットを2人で分け合っていた。
「おーっす。今日は2人でどうした?なんか会う約束とかしてたっけ?」
「あ、トシ。んーん?別に会う約束してないよ?ねーイヴ?」
「うん。それで何する?って話になった時にお兄さんに会いたいね〜って話になったから来ちゃった。」
「いや来ちゃったって……。まぁ課題に絶望してただけだからいいけどさぁ……。」
俺がそう言うと2人はチューペットを片手に目をキラキラと輝かせてこちらを見つめてくる。その目力に少しだけ圧されたが何も感じてないような素振りをして咳払いをひとつ落とす。
「それで?俺のとこに来た理由はわかったけどギャリーは?2人が揃っててあいつが居ないなんて珍しいじゃん。」
「あ〜……ギャリーはねぇ……仕事が終わらなくって今日も出勤なんだってさ。」
「まじかぁ……あいつもだいぶ社畜してんだなぁ……。」
「……?お兄さんしゃちくってなに?」
「社畜って言うのは……まぁいっぱい働いてる人達の事だな。」
そんな事を話してると母さんがパタパタとスリッパの音を立てながらこちらに向かってくる音が聞こえる。その音を聞いて未だに玄関で話してた事がバレたらグチグチ言われそうだと思った俺は急いで2人に声をかける。
「2人とも取り敢えずあがって。俺の部屋行こう。」
「え!?いいの!?トシの部屋入るの初めて!!イヴは?」
「わたしも初めて!お兄さんの部屋には何があるのかすごく楽しみ!」
「何って……特に変わったものは無いと思うぞ。あ、でもあんまり部屋の中荒らすなよ?特にメアリー。」
「んな!?なんで私だけなの!?イヴにも言ってよー!」
「もちろんイヴにも言ってるつもりだよ。だけどイヴは誰かが唆さない限りそういう事はしないと思ってるから。その点メアリーは気になったら何でも手に取るだろ?そこの差だな。」
「納得いかなぁい!!差別はんたーい!!」
「あはは……。」
そう言いながら俺たちは家の中をずんずんと進んでいく。その間も2人はキョロキョロと辺りを見渡している。そんなに見られても普通の家だと思うんだけどなぁ……。
そんなことを思いながら俺の部屋の扉に手をかけると2人の期待値が最高潮に達したのかすごく楽しみを抑えられていないのがありありと伝わってくる。
「ほれ。これが俺の部屋だ――――――。」
「わぁ……!ここがお兄さんの部屋……!」
「うーん……なんかフツー。」
「いや……だから特に面白いものはないって言ってるじゃん。まぁそこの漫画でも読んでてよ。」
「うん、わかった。」
「ねーねートシぃ。パソコンでなんかゲームとか出来ないのー?」
「パソコンはダメ。パソコンする位なら今から外に遊びに行くぞ。」
俺がそう言うとメアリーはあからさまに不機嫌ですと言わんばかりにほっぺを膨らましてこちらに抗議の視線を送ってくる。俺はそれを無視して課題に手をつける。俺も部屋の中にいるから下手はできないだろう。
――――――
「―――ふぅ……。取り敢えず一区切り着いたなぁ。イヴとメアリーは今何して……るって寝てるのかよ……。」
「大利〜お菓子とジュース持ってきたわよ〜って……2人とも寝ちゃったのね。」
「お、ありがと母さん。後で2人と食べるよ。」
「アンタもさっさと課題終わらせるのもいいけどこの子達構ってあげなさいよ?」
「わかってるって……。でも多分俺より母さんの方が話しが合うんじゃない?同じ女性ってのも相まってさ。だったら俺より―――。」
「大利、それ以上は言っちゃダメよ。少なくとも今日はアンタに会いにきたんだから。」
「……わかったよ。」
母さんは俺がそう返事した事に満足したのかいつもより優しい笑顔を浮かべて俺の部屋を出ていく。それを視線だけで見送った俺は寝ている2人の傍に座りなんとなく頭を優しく撫でる。擽ったそうに、しかし嬉しそうに体を少し捩らせる2人を見ながら俺もゆっくりと意識を手放していった―――。
――――――
「やぁヒロトシ。今日は随分と早い就寝だね?」
「パパ……おべんきょうたいへんそう……。」
俺が目を開くとまるでアニメに出てくるような洋館の一室のような所で1人用のソファに腰かけていた。俺は今起きた出来事になんの驚きも見せず、目の前のじいさんとリリーに意識を向ける。
「うっす。なんか眠くなったから寝たわ。リリーも心配してくれてありがとな。でも大丈夫だから安心しな?」
「ううん……わたしはパパのことすごくしんぱい……。それって……めいわく?」
「そんな事ないよ。でもいつも心配させてちゃ申し訳ないからな。だからそこまで気にしなくていいぞ。」
「うん……ぜんしょはする……。」
「善処って……なんだか政治家みたいな言い回しするなぁ……。」
そんな言い回しをじいさんが教えたのかと思い、少しそちらを見やるがじいさんは何も知らないと言わんばかりに首を横に振る。なんとも説得力の無い否定だと少し思いながら俺はリリーに向き直り話をしようと口を開こうとしたその時。館が激しく揺れて、それと共に叫ぶような声が遠くから聞こえてくる。
「――トシ!起きて〜!」
「おやおや、
「あーはいはい、分かりましたよ……。じゃあリリー、また夜会いに来るからそれまでいい子にしていてくれるか?」
「うん……。わたしいいこにしてる……。」
「ありがとう。じゃあ行ってくるな。」
俺はリリーの頭を一撫でして部屋の扉を開けてその外へと歩く。すると視界が真っ白になっていくと同時に思考も真っ白に――――――。
――――――
「トシ〜!起きてよ〜!」
「お兄さん!起きて!」
「―――んぁ……?今何時……?」
俺は2人が何故そこまで一生懸命起こそうとしていたのか気になっていたが、それよりもどれくらい時間が経ったのか気になり時計を見る。
すると時計は俺が母と話した時間からそんなに経っていない事がわかった。なんで俺をそんなに血相を変えて起こしていたのだろう?
「2人ともそんなに慌ててどうした……?」
「だって……お兄さんが急にバタって倒れたから……。」
「私達すごく心配になって……。」
「あぁ……ただ急に眠くなったから寝ただけだから。だから気にしなくていいぞ。そんな事よりさっき母さんがお菓子と飲み物持ってきてくれたからそれ摘もうぜ。」
「いや気にするよっ!お菓子は貰うけどっ!」
「お兄さんに何もなくってよかった……。」
2人とも安心したのかメアリーはお菓子を、イヴはジュースを口に運んでいく。それにしても俺はそんなに急に意識を失ったのか。まぁ確かに寝る前の記憶は2人の頭を撫でるまでしかないからきっと2人の言っている事は確かなのだろう。
……それにしてもなぜ2人は俺がバタッと倒れたことを知っているのだろうか。少なくとも俺が2人の頭を撫でていた時は寝ていたはず……。もしかして……。
「なぁ……2人とも起きてただろ。」
「ん?なんの事?」
「だから、俺が寝る前。2人とも起きてただろ。」
「お、お兄さん……?なんでそんなにこわい言い方するの……?」
「そりゃ気のせいだ。」
俺がそう言い切ると2人は肩をびくりと震わせる。この様子を見るにどうやら2人とも起きていたらしい。という事は恐らく俺と母さんの会話も聞いていたと思っていた方がいいかもしれない。
「……なぁ。俺といるの楽しいか?」
「……急にどうしたのトシ。私達なんかトシの気に障るような事したかな?」
「いや……ただ俺みたいな奴よりギャリーとか、うちの母さんとかの方が話してて楽しいんじゃないかって思ってな。」
「うーん……それはお兄さんの考えすぎなんじゃないかな?わたし達はお兄さんと一緒にいてすごく楽しいよ?」
イヴがそう言うとメアリーは勢いよく頷いてイヴの意見に同調する。俺は2人のその姿を見てなんだか少し申し訳ない気持ちになりつつもそれを表に出さないように意識をする。
「……そっか、ならよかったよ。」
「うん!だからこれからも私達の前からいなくならないでねトシ!」
「わかってるよ。」
俺はそう言うとタイミングを見計らったかのように部屋の扉がノックされる。その後すぐに扉が開かれて母さんから「お昼ができたからイヴちゃんとメアリーちゃんも食べてって!」と言われ、3人でリビングへと向かう。
リビングには大皿に盛り付けられた素麺がこれでもかと存在感を主張している。どうやら今日の昼は腹には溜まらないようだ。
「ほらほら!3人とも早く座っちゃって〜!今素麺つゆ渡すからね〜!」
「はーい!」
「ありがとうございます!」
「母さん、これ薬味とかは冷蔵庫の中?」
「そうよ〜。薬味も今から出すから少し待ってて〜。」
母さんはそう言うとつゆの入った茶碗を3つ机に置いて、その後すぐに薬味の入った小鉢を机の上に並べる。
「さぁ!召し上がれ!」
「「いただきまーす!!」」
「いただきます。」
――――――
「「ごちそーさまでした!!」」
「ご馳走様。」
やはり素麺は夏といえばの風物詩と言っても過言でないだろう。この涼し気な見た目と薬味とでとても涼しい気分に浸れる。まぁ気分だけで外はとても暑いからこのクーラーの効いた部屋から出たくは無いのだが。
「お粗末さま〜。イヴちゃん、メアリーちゃん。こんな質素なご飯でごめんなさいね?」
「いえ!すっごく美味しかったです!トシのお母さんありがとうございます!」
「お兄さんのお母さんありがとうございます!」
「いいのよぉこれくらい!―――あ、そうだ!明日の夜この辺りで夏祭りあるんだけど2人とも、行きたい?」
母さんがそういうと2人の目はキラキラと輝き始める。やはり夏といえば祭り。それが日本の共通認識であると言ってもいいくらいだからそろそろここら辺でもやるだろうとは思っていたがまさか今日の明日だとは思っていなかった。
しかし問題なのはそこではなく、次に発せられた母さんの一言だった。
「もし行きたいならうちの大利連れてっていいわよ♪」
「――――――は?」
――――――は????
ということで次回は夏祭りとなります。お祭り自体普段行かない身なので少し不自然なところとかあるかもですがそこは目を瞑っていただけると幸いでございます。
それではまた次回。