つまりただの日常回。まぁ本編にこんなのほほんとした時間はほぼないからね。こういうところで私の精神力を補充してます。すごく書いてて楽しいです。
では、どうぞ。
「「「「あけましておめでとうございます!」」」」
「クリスマスに続いて年明けも一緒に過ごせるとはね。嬉しいわ!」
ギャリーはそう言うと俺たち3人をゆっくりと見る。三者三様に着物を着ているからだろうか。まぁ俺は紋付羽織袴なのだが。
そんな見慣れない格好をしているからなのか、ギャリーは目を輝かせてこちらを見てくる。
「キャー!イヴ!メアリー!2人とも似合ってるわ!ステキよ!」
「ふっふーん!まぁ当然よ!私はお父さんがお父さんだもの!」
「うーん……わたしには派手じゃないかなぁ?メアリーみたいにキレイじゃないし。」
「イヴ。似合ってるぞ。安心しろ。」
なんて四種四様に言葉を放っていく。どうやらイヴは着物が似合っている自信が無いらしい。しかしそんな心配など無用の産物だろう。とてもよく似合っている。口下手でそんな言葉しか言うことは出来ないけど。
一頻り服装で盛り上がったところで俺は懐からポチ袋を出して、イヴとメアリーへそれぞれ渡す。このお金の出処は俺のお年玉だ。早く働いて自分の稼いだお金で払えるようになりたいが、まだ先の話だろう。
「ねぇトシ?この小さな袋は何?」
「お兄さん。この中に何が入ってるの?」
「2人ともその中身を見てご覧?」
怪訝な表情を浮かべながら2人はポチ袋の中身を見る。その瞬間に驚いた表情をするが、すぐに嬉しそうに笑顔を浮かべ始める。
「ねぇトシ!これって!」
「このお金もらっていいの!?」
「あぁ。俺から2人への“お年玉”だ。大切に使うんだぞ?」
「「うん!」」
あぁ。両親や親戚のおじさん達はこの笑顔のためにお年玉を渡していたんだな。そんな感じがした。それにしてもやっぱりお金は万国共通で喜ばれるもんなんだな。
そんなふうに考えているとギャリーがジト〜っとした目でこちらを見つめてくる。恐らくお年玉の文化を伝えてなかったからだろう。喜んでいるふたりを横目に俺は余っていたポチ袋をギャリーにそっと手渡す。
「ごめん。伝え忘れてた。これに2人の年齢的に……大体10ドル位入れるんだ。」
「ふーん?ニホンって変な文化があるのね。ヒロトシはいくら入れたの?」
「俺は1人1000円。まぁさっきも言ったけどだいたい10ドルだな。」
「なるほどねぇ……。ま、伝え忘れたことは水に流すわ。アタシも渡してくるからちょっと待っててね。」
そういうと、ギャリーは素早くポチ袋に10ドルずつ入れて2人の元へと向かっていった。まぁ俺が渡しておいて、年上のギャリーが渡してないのは体裁が悪いのだろう。それに俺がしっかりと事前に伝えていれば済んだ話だ。ギャリーからのお小言は甘んじて受け入れよう。
「でもなんでお年玉なんて渡すの?」
「確かに!お金をあげるなんて私考えられない!」
「あーっと。それを聞いてくるか。うーん……なんて説明すればいいのか。」
「え〜。わかんないの〜。ヒロトシっておばか?」
「いや、説が幾つかあるんだよ。」
そう言って俺はお年玉について説明する。曰く歳神(年神)を正月に迎えるために丸い鏡餅(歳神の象徴)を用意し、それを家長によって子供に分け与えられたその餅のことを
聞かれると思って調べておいてよかった。しかしこんな話をしても2人にはよく分からないだろう。
「うへぇ。よく分かんない。イヴは?今の分かった?」
「うーん……。わたしもよく分からなかったな。」
「まぁ神様からの子供の1年の健康を願った贈り物が元なんだよ。お年玉としてお金を渡すようになったのは65年前らしいし。」
ちなみにお年玉を渡す習慣が確認できたのは中世。わかりやすく言うと武士がまだいた時代だ。その頃は武士は太刀。町民は扇。医者は丸薬を渡していたようだ。そんなことを教えてくれたWikipedia先生。ありがとうございました。おかげで日本人の威厳が保たれました。
そんなこんなしているとどうやらお昼を過ぎたようで、子供たちの方からくぅ〜と可愛い音が聞こえてきた。今日は元旦だし、あそこの神社はそこそこ広いから屋台なども多少は開いているだろう。
「それじゃあ皆で初詣に行こうか。人がいっぱいいるから手を繋いでいこう。」
「ハツモウデ?そういえばクリスマスパーティの時にも言ってたわね。どんなイベントなのかしら。」
「簡単に言えば去年1年の感謝と今年1年の無事を祈る行事だな。神様に去年はありがとう今年もよろしくって挨拶をしに行くんだ。」
「へぇ!なかなかロマンチックじゃない!ねぇ2人とも!」
「うん!私行きたい!神様にありがとうって言いたい!」
「えぇ〜。私外出たくないなぁ。この世界に来れたのはみんなのおかげであって神様のお陰じゃないし〜。」
イヴとギャリーは初詣に対してノリノリなのだがメアリーはどうやら乗り気ではないらしい。恐らく俺たちがあの世界に行くまで誰に願ったところで外に出られなかったからなのだろう。神という存在を嫌っている節があるように感じる。
しかしここは日本。一神教では無く万物に神が宿り見守ってくれているとされている多神教国家だ。連れて行って損は無いだろう。もしかするとゲルテナも日本では神認定されているやもしれない。
「メアリー、この国では全てのものに神様が宿っていると伝えられているんだ。」
「全ての物……。ならこの家にも?この服にも?」
「そう。だから日本人はものを丁寧に使う人が多い。それに初めはただの“モノ”でも丁重に扱い続けると付喪神、つまりは神様になれるとされているんだ。」
「ただのモノでも……神様に……。」
「そんな幾つもの神様に挨拶をするためにみんな初詣に行っているんだ。メアリーも大切なものがあるのなら一緒に初詣に行こ?」
俺がそう言うとメアリーは顔を伏せる。元々絵画だったメアリーにこの話をしたのは悪手だったか。それともこの考え方が気に食わないのか。そんな悪い方向に俺は捉えてしまった。まぁ日本には善神が多いとはいえ良いエピソードばかりではないからな。仕方ない。
「私も……なれるかな。」
「え。何になりたいの?」
「神様に、私もなれるかな。」
そっちか。まぁ俺は未だにメアリーが人間なのか絵画なのか知らないからなんとも言えない。でもこの世界に来ることが出来ているあたり、恐く人間の体なのだろう。人間から神になる……。ダメだ。即身仏しか思いつかない。しかも神じゃなくて仏だし。
「そうだなー。知り合いを大切にして。使っているものを大切にして。そして何より自分を大切にして日々を過ごしたらなれるかもしれない。」
「かもしれないって……。確かなことは言えないの?」
「だって俺の知り合いに神様いないからね。いるのなら確かなことを伝えられたんだけど。」
「そっか……。」
「でも神様になりたいなら色んなものを大切にしないといけないよ。」
「なんで?神様ならなんでも自由にできるじゃん。ものだって作れる。」
「ならなんで神様は俺たち人間を増やした?それは必要だからだ。そして今日この日まで人類は滅亡していない。つまりは人間を大切に扱っているんだ。弛まないように試練を与えながらね。」
そこまで言うとメアリーは思案の表情を浮かべる。どうやら揺れているようだ。あまりこんな真面目な話をめでたい日に支度は無かったのだが、まぁ致し方あるまい。こんな年もたまにはあるものだ。
何も起きない年などない。それは俺たち4人がよくわかっている。だからこそ見えない何かに縋りたくなる時もあるものだ。しかしその感覚がメアリーには無いのかもしれない。今まであの現実味のない美術館にいたのだから。
「分かった。今回は一緒に行ってあげる。でも今回だけだよ!」
「あぁ。それでいいよ。きっとイヴとギャリーも喜ぶ。な?」
「うん!一緒に行けてすごくうれしい!」
「むしろメアリーを置いて3人で行くなんて考えてなかったわ。当たり前でしょ?」
そう2人から言われ満面の笑みを零すメアリー。そんな彼女を俺は暖かく見守っていたのだが、それが気に食わなかったらしくまたムスッとした表情に戻りそっぽを向く。
「ふんっ。トシなんて知らないっ!」
「あらあら。嫌われちゃったわね。」
「俺としてはあんまり笑い事じゃないんだけどな……。」
「お兄さん。わたしが励ましてあげる。」
ギャリーに笑われ、イヴに励まされながら俺はははっと乾いた笑いをする。まぁ何はともあれこれで4人揃って初詣へと行ける。
さすがにこの世の中、神様を信じている人は数少なくなれどこういう年中行事は無くならないで欲しいと思うのは俺が日本人だからなのだろうか。楽しいからという理由もあるがやはり意味のある大切な行事なのだから。
なんだ事を思いながら3人と自分の格好を見直してこれは視線を集めるだろうなぁとこれからのことを憂う。しかしこれでいいのだと思う。俺たちのいい思い出としてこれからも語れるのだから。
「よーし、じゃあ神社に出発するぞー。ご飯も向こうで済ませるからそのつもりでよろしくー。」
「神社でご飯って何かあるの?」
「あぁ。屋台が出てる。」
「ジャパニーズヤタイ!私すごい楽しみ!」
「メアリー。無駄遣いはしないように。アタシはお金貸さないからね。」
「ぶー!ギャリーのケチ!オカマ!守銭奴〜!!」
「ちょっと!オカマは関係ないじゃないの!後アタシは普通の男よ!」
「あはは!2人ともなかよくね!」
きっと神様はこの光景を見て腹を抱えて笑ってるだろう。そんな神様にする俺の願いはただ1つ。
“今年もこの関係が崩れませんように。”
それだけだ。
今回の皆の格好です。本当なら本文で出したかったけどどこにも入れる余地が無かったのであとがきにて失礼いたします。
イヴ:赤い着物。右腕の袖と足元の端に白のグラデーションが入っており、アクセントに梅の花が散りばめられている。
メアリー:上が黄色、下が緑のセパレート型着物。下は無地だが上は麻の葉模様が白線で入っている。
ギャリー:ピンク黒のグラデーションの入った紋付羽織に黒地の袴。グラデーションはちょうど胴の半分くらいに入っている。袖の部分にはこれでもかと桜が散りばめていて、胴の部分に枝に付いた桜が描かれている。
則内大理:黒の紋付羽織に灰色の袴。よく見る紋付袴。それ以上でもそれ以下でもない。
こちら主人公以外全てGoogle先生の画像検索で調べたので探したら見つかるかと思います。ありがとう。Google教授。
主人公の来てるものが地味な理由はみんなの分をレンタルしに行ったらお店の人に勧められて、結局一番地味なやつを選んでいるからです。その後3人(特にギャリーとメアリー)からバッシングを受けてます。
この子はそういうことしちゃうんです。でも目立ちたくないから仕方ないね。
前回はギャリー回、今回はメアリー回でしたね。ということは次は……はい。満を持して彼女の出番です。
なんのイベントにするかは迷い中。バレンタインデーか。ひな祭りか。まぁそこら辺にしようかと。
それとイヴちゃんが本編よりしっかりしているように見えるのは仕様です。そりゃあんな経験すれば……ねぇ?
次の暦イベント(イヴメイン)はどっちがいい?
-
バレンタインデー
-
ひな祭り
-
主に任せる