Ib〜ハッピーエンドへ行き着くためには〜   作:月舘

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今回で漸く次の部屋に行けます。(行くとは言っていない)
テンポが遅いのはわかってるんですけどどうも書きすぎてしまう癖があるようで。
まぁこれからもゆっくりのんびり進めていきますね。




では、どうぞ。


猫の間

未だ状況が掴めていないイヴちゃんの手を優しく引いて大きな絵画の前へと歩いていく。あまり時間も掛からずに絵画の前に着くと、なるほどこれはでかい。遠目で見ていた時には気づかなかったがこんな大きな紙に魚を一刀両断する絵のみが描いてあるのはなんだか寂しいようにも思える。背景も白いままだし何を意図してゲルテナは描いたのだろう。

 

そんなことよりも魚の頭の部分を探さなければ。恐らく先程の音はここから頭が落ちた音だろう。まず絵画から物体が落ちてくるとか正直訳が分からないが、それは無個性が動いて襲ってきたり、ありがこちらに理解できる言語を喋っている時点で今更な事だ。それならば落ちた頭はどこへ行ったのか。そんなのは決まっている。

 

 

「そりゃ絵の下に転がってるよな。下手に転がってなくて安心した。」

 

「……お兄さんって独り言多いよね。いつもなにかブツブツ喋ってる。」

 

「え。そうかな?そんなつもりは無いんだけど……。」

 

「ちゃんと自分のことは知ってないとだめだよ!お兄さんは独り言が多い!」

 

「はいはい……。わたくしは独り言が多いです……。」

 

 

自分では全く多いとは思わないのだがまぁ人から見たら多いのだろう。……今度本当に独り言が多いのか母さんに聞いてみよ。

 

まぁ何はともあれ魚の頭と尾が見つかったわけだ。これをひとつにすればきっと真ん中の部屋もなんとかなるだろう。

 

 

「イヴちゃん。これをさっき拾った魚のしっぽの方とくっつけてみて。多分ひとつになるから。」

 

「わかった!」

 

 

少し元気が戻ってきたイヴちゃんはふたつを重ねる。すると何故か元々切られてなかったかのように継ぎ目が無くなったひとつの魚の模型が出来上がった。

何が起きたのかさっぱり分からないがまぁ気にしても仕方が無いだろう。聞いたところで誰も種明かしできないだろうし考えるだけ無駄だ。

 

そんなことより魚の模型は完成したのでこれでこの部屋からおさらばすることが出来る。どうせ次の部屋もまともな部屋では無いのだろうが、同じところにずっと居るよりは幾分か精神に優しいだろう。

 

 

「それじゃあイヴちゃん。魚の窪みの所に嵌めに行こうか。それでここから早く離れよう。」

 

「うん!早く行こ!」

 

 

そう言うと彼女は俺の手を引っ張って扉の方へと向かう。扉の前に来た際に一瞬だけ後ろの方を気にしていたが、すぐ前を向いて扉の向こうへと小走りで駆けていく。俺は少し怖いもの見たさで例のカーテンのボタンを押したい気持ちを抑えつつイヴちゃんの背中を追う。

 

今までいた部屋と真ん中の部屋とを繋ぐ扉を閉めて改めてほぼ扉しかないこの部屋を見渡す。こうしてちゃんと見ると確かに壁の窪みは魚のような形をしていることが伺える。

 

 

「じゃあ早速嵌めようか。ササッとここを出て元の場所に戻りたいしね。」

 

「うん!わたしも早くママとパパに会いたいもんね!」

 

「元気があって大変よろしい。……あ、俺の事はイヴちゃんの両親にあんまり言わなくていいからね?」

 

「なんで?お兄さんにはお世話になったもん。ママとパパにちゃんと言ってお礼しないと!」

 

「うん。お礼とかは大丈夫だから。無事に帰れたってことが何よりのお礼だから。」

 

「え〜!つまんな〜い!」

 

 

イヴちゃん、なにやらしっかりしすぎではないだろうか?普通の小学生には思えないような発言が飛び出ている気がする。今どきの小学生がここまでちゃんとしているのなら俺の小学生時代はなんだったのだろうか。少なくとも俺の場合は面白ければなんでも良かったのだけは覚えてる。あとは怒られないために謝っていた記憶しかない。実に憐れである。

 

しかし、もし俺たち二人とも五体満足で戻れたとしてそんなお礼などされた日には倍返し以上しなければこちらの気が済まないというもの。だって俺もイヴちゃんがいたからここまでメンタルをやられずに来られているのだから。言うなればwin-winの関係なのだ。それなのにこちらだけ貰うのはおかしいだろう。だから双方渡し合うか、お互いに何もしないの2択しかないと思う。

 

 

「イヴちゃん。ここから出られたとしてもここのことを皆信じてくれないと思う。それこそ両親さえも半信半疑で聞くと思う。それでも言うのなら止めはしないよ。」

 

「あっ……そっかー……。たしかに信じてもらえないかもしれないね。わたしだったら信じないもん。」

 

「でしょ?だからイヴちゃんの両親に伝えるのは無し。もちろん俺も父さんと母さんにここのことは伝えないつもり。」

 

「わかった!これはわたしたちだけの秘密!……なんかワクワクするね!こういうの!」

 

 

そう言って彼女は満面の笑みを浮かべる。やはりこういう誰にも言えない秘密というものは万国共通でワクワクするものなのだろう。

 

一連の流れもひと段落していよいよ俺達は窪みのある壁と向き合う。恐らくどこかに次の部屋へとつながる道が出てくると思うのだがこの部屋なのか。はたまた両隣の部屋のどちらかなのか。

 

 

「じゃあ魚の人形をここに入れよっか。」

 

「わかった……。うぅ……緊張する……。」

 

「そんな酷いことは多分起きないと思うからそんなに緊張しなくていいよ。ほら、さっきのやつやって力抜いてこ。」

 

「うん……。」

 

 

そう言って彼女は肩に力をきゅっと入れ一気に脱力する。お陰で肩の力は抜けたようで表情も少し柔らかくなったように見える。そしてそのままイヴちゃんは窪みに魚の模型を嵌める。すると壁の内側からなにやら大きく重いものがどこかに擦りながら動いているような音が聞こえる。次の瞬間、目の前の壁が上へと上がると同時に大量の猫の鳴き声のような音が部屋中に響き渡る。

 

奥の部屋まで壁が上がりきると同時に猫のような鳴き声も止む。何が起きたのかわからず呆然と立ち尽くしてしまっていた俺とイヴちゃんはゆっくりとその思考を再起動させ始める。なぜ猫の鳴き声がしたのかはあまりよくわかってないがまぁ関連性があっての事だろう。と、そこまで考えてからふと目のような模様があったことを思い出し上の方を見上げてみると黒目だったところは赤い縦の線に変わっていた。それこそまるで明るいところにいる猫の目のようになっている。

 

 

「なるほど……。そういう事か。」

 

「猫さん……どこ……?」

 

「イヴちゃん。上を見上げてご覧。」

 

「えっ……?……あ!猫さんの目!」

 

「多分この壁自体が猫みたいだね。だから魚を要求してきたり壁が開く時に鳴き声が聞こえたりしたんだね。」

 

 

なんて話もあまり聞かずにイヴちゃんは猫の目に釘付けのようだ。猫が好きなのはわかるが俺としては早々に進んでおきたいところ。何とかここから離れるために策を巡らそうとしたがまぁここは強行突破で行こう。

 

 

「はーい。じゃあ先に進むよー。早くしないと置いてっちゃうよー。」

 

「え〜!もう行くの!待ってー!」

 

 

いつも通りどこか締まらない空気のまま俺達は次の部屋の扉へと歩き出した。願わくばこの先も危険なことが起こりませんよう。




次回こそ猛唇注意です。あと唾もですね。漸く美術館始まったなってところになってくるので執筆速度も上がってくれればいいのですが。
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