本文がなんか勝手にワチャワチャやってくれたおかげで本編に活かせそうな設定がいくつが出来上がっちゃいましたので、ifではなくtipsとしてupさせていただきます。
これ以上多くは語りません。
では、どうぞ。
あれから9年の月日が経った。あの2人とはあまり会えてないけど彼女とは時折連絡を取りあって近況を報告している。そこに彼が居ないのは少し悲しいけれど、なんでも彼女を養うために奔走しているのだとか。例の美術館から連れ出した責任として保護者の代わりとして頑張るのはいいがあまり無茶をしてこちらを心配させて欲しくない気持ちもある。未成年の身としては強く言えないけれど。
そんなこともありなかなか会えない2人だけど、今日という日は別。だって私達3人があの美術館で出逢えた日なんだから!
「あらイヴ!お久しぶりじゃない!どう?元気にしてた?」
「お久しぶりギャリー!私は元気だったよ。そっちこそ無理してない?メアリーから聞いたよ?毎日遅くまで仕事してるって。」
「あら……心配かけちゃったかしら。でもアタシはあの子の親代わりだもの。アタシがしっかりしなきゃ。ね?」
「もぅ……。だからって子供に心配かけてたら元も子もないでしょ?メアリーもきっと申し訳なく思ってるよ?」
「うーん、そうかしらねぇ……。あの子の為を思うとやる気が出てくるのよ。」
そう言うギャリーの表情はとても無理しているようには見えないとてもいい笑顔で、私は少しその表情に見蕩れてしまった。
「ギャリーごめーん!ちょっとお手洗い混んでて……イヴ!お久しぶり〜!こうやって顔を合わせるのいつぶりだろう!」
「メアリーあんたねぇ……。アンタ達ほぼ毎日電話してるじゃないの。それに御手洗なんて大声で言うんじゃないわよ、お下品なんだから。イヴからも何か言ってやってちょうだい。」
「お久しぶり、メアリー。私はメアリーのそういう所、らしくってとてもいいと思うよ?」
「ほらー!ギャリーが融通きかないだけなんだよー!私の知り合いみんなこう言ってくれるもん!」
と、ここから2人の口論が始まる。まぁ口論と言っても本気のものではなく2人とも楽しんでやっている、所謂お遊びのものだ。何時ものやり取りとも言えるこの一連の流れを見ていた私は、懐かしさと共に何故だか悲しみを覚えている。
私は心の中のそれを表に出すまいと必死に耐えて蓋をしようとしたのだが、溢れ出してしまった感情は濁流となり私の頭を駆け巡る。ダメ……抑えられない……。
「ねぇ!イヴはどっちの味方!?私?それともギャ…リー…え?ちょ!?イヴなんで泣いてるの?嫌なことでもあった?」
「もしかしてアタシ達なんかイヴの気に触るような事言っちゃってたかしら!?あぁん!もぅ!アタシったらそれに気づかないで!……本当にゴメンなさいね?」
「違う……違うの。私にもなんでか分からないの。」
私がそう言うと2人の頭の中にはクエスチョンマークが浮かんだようで、お互いに目を見合わせて頭を傾げている。私にもなんでこの感情が湧いてきたのかよくわからないけど、これを無視しちゃいけない気がする。
少しして落ち着いた私は、なんだか身に覚えのない記憶が頭の中に増えている気がすることに気づく。あの美術館の記憶ですら“ちゃんと”思い出せたというのに一体何なのだろう。これは記憶はあるけど思い出はない……。“同じ美術館”の記憶なのに何故か違うもののように感じる。自分自身がなんだか薄気味悪く感じ、背筋に悪寒が走る。頭が痛くなり気分がどんどん悪くなっていく。ここは何処なのだろう。本当に現実の世界なのだろうか?私は本当に“わたし”なのだろうか?呼吸が荒くなり、思考が働かなくなっていく。あの人…は誰…なん…………。
「──ヴ!イヴ!しっかりしなさい!聞こえてる!?」
「……?あれ……今、私……。」
「よかった!あんた、急に泣き出したと思ったら顔色が悪くなっていくんだもの。すごく心配したんだから!……イヴ、急にどうしたのよ?今まで今までこんなこと無かったじゃない。」
「わかんない……。何が何だかもうわかんないの……。あの美術館で知らない記憶があるの……。そこには……ここにいないもう1人の人がいて……。でもその人は見た事なくて……。それで……。」
そこまで言って私は口を閉ざす。だって彼は……メアリーの代わりに彼処に残ったのだから。
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イヴは一体どうしたのだろう。今までこんなことは無かったのに何故今になってこんなことに?それにイヴの言っていることがよく分からない。あそこの脱出の際、私達3人以外に人間は居なかった。それは私が私である以上、そこに間違いなどあるはずが無い。“ワタシ”は元々そういう存在だったから。
……少しやりたくないがイヴの為だ。使える手はなんでも使ってやる。
「ギャリー。ちょっと携帯貸して?」
「……それはいいけど何すんのよ、こんな大変な時に。くだらないことなら後にして頂戴。」
「ちょっと連絡したいところがあってね。スグ終わるから〜ちょっと借りるよ〜。」
「あ、ちょっとメアリー!せめて何をするのか言いなさいよー!アンタ聞いてんのー!」
いちいちうるさいギャリーは置いといて私は早速とあるところに電話をかける。正直出る出ない以前にかからない可能性も有る上に、もしかかっても私の要件を真面目に聞いてくれるかも分からない。しかし、そんな相手だからといってかけない訳にはいかない。
「さっさと出てよ……。─────パパ。」
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「─なるほど?つまりはその見覚えのない男があの美術館の探索の手助けをしてる記憶が急に思い起こされた、と。」
「うん……。見た感じアジア圏の人っぽかった。でも私はアジアに旅行に行ったこともないしアジア圏の人と会ったことも無い。それに向こうの有名人って感じでもなかったの。」
「うーん……。アタシもそういうのを思い出していれば何かしら言えたんだけど……どうもアタシは何ら変わってないのよねぇ。……って言うかメアリーはどこまで行ってんのよ。アタシの携帯持ってなにしてるのかしら。」
全く。あの子は時折突拍子もない行動をとることがあるけど今回もその類いかしら。何にせよさっさと戻ってきて欲しいわ。……それにしても今年はとんだ記念日になっちゃったわね。今夜のディナーの予約、キャンセルする事態にならなければいいけど。
「……ねぇギャリー?」
「ん?イヴどうかした?」
「今日はごめんね。私のせいでこんなことになっちゃって。」
「やぁねぇ!イヴが謝ることなんてないのよ!今回はちょっと間が悪かっただけだもの!そんなに気にしちゃダーメ!」
「でも……。」
「アンタは気にしすぎなのよ。アタシ達にそんな遠慮はいらないのよ?それにイヴにはいつも助けて貰ってるからこういう時くらいは頼りにしてちょうだい。」
アタシがそういうとイヴは頭を傾げるが、イヴに伝わらなくてもいいの。いつもアンタ達のことを考えて頑張る活力を貰ってるなんて知るはずがないものね。それに……
(イヴはアタシ達の希望だもの。あんたが落ち込んでるところをいつまでも見ていたくはないわ。)
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「おまたせ〜。イヴ、今の調子はどう?」
「メアリー……。うん、今は落ち着いたかな。メアリーは……。」
「あ、ちょっとメアリー!アンタどこほっつき歩いてたのよ!あたしの携帯まで持っていって何がしたいのよ!」
「ん〜。パパと連絡取りたくてね。」
メアリーがそう言うと2人の空気は凍りついた。彼女は今なんて言った……?パパ?一般的に父親に分類される人が呼ばれる名称であるパパと?
「えぇ〜〜!!!」
「メアリー……ゲルテナさんと連絡取れたの……?でも大分前に無くなってなかった?」
「2人とも私をどういう存在か忘れてる?一応パパの描いた絵画なんだけど。それにあの世界に2人……特にイヴを呼んだのは私よ?これくらいちょちょいのちょいよ!」
「アタシ、改めて同居人が人外なんだって認識したわよ……。いくらなんでも規格外すぎよ……。」
メアリーはドヤ顔で2人を見ているが、生憎と2人ともそれを気にかけている余裕はないようだ。それも致し方ないだろうが、メアリーはそれが気に食わなかったのかドヤ顔がみるみる膨れっ面へと変貌していく。
「ちょっとぉー!もっとなんかないのー!私これでも頑張ったんだから!」
「いや、なんかもうやってる事が凄すぎてアタシにはなんにも言えないのよ……。」
「私もかな……。でも死んだ人と喋ることが出来るなんてなんだかシャーマンみたいだね。」
「ギャリーの携帯で電話しただけだからなぁ……。あ、携帯返すね。」
メアリーはなんでもないようにそう言いながらギャリーに携帯を渡す。それを聞いていたギャリーは開いた口が塞がらない様で思考がフリーズしてしまった為、メアリーはギャリーの上着のポケットに携帯を入れる。
「でもなんで急にメアリーはゲルテナさんに電話をしたの?」
「何でって、そりゃ勿論イヴの身に起きたことがなんなのか聞く為だけど? あの親バカ、電話を出てすぐは私の話を録に聞いてくれなかったけど粘りに粘ってようやく聞き出せたよ。」
「え?……え??」
ギャリーに続きイヴも話についていけなくなっているのか思考停止しているように見受けられる。メアリーとしては普通の事を話している気持ちなのかもしれないが、イヴとギャリーからしたら思考が追いつかない程度にはありえない事が起きているのである。
メアリーはそんな2人などお構い無しにゲルテナとの会話から出た結論を早々に口にする。
「イヴ。結論から言うとその記憶はパラレルワールドの物らしいよ。パパが別の世界から誰かをあの美術館の世界に連れてきたからそのせいである筈もない記憶が出来ちゃったんだってさ。」
「パラレル……ワールド……デジャビュってことなのかな……。と言うかその言い方だとあの人はゲルテナさんの気まぐれに巻き込まれた人?」
「ん〜。そこら辺は言葉を濁されちゃったんだけど、なんか本人が望んであの美術館に入ったらしいよ?とんだ物好きもいたもんだね?あははっ!」
メアリーは満面の笑みでそう言い放つ。しかしイヴにはひとつ懸念があった。それは、そのパラレルワールドの最後の記憶は“その男性一人が不気味な美術館に残って私達3人が外の世界に出る”なんてふざけたものなのだから。
「ねぇメアリー。そのパラレルワールドに干渉とかは出来ないの?あの記憶が本当に起きるのなら私はそれを止めたいの。」
「イヴ、それは無理だよ。今までの結果がどうであれ私たちは“未来に向かって生きるモノ”。そんな存在が過去への干渉をするのはご法度だよ。」
「そっ……か。そうだよね。ごめん。」
「それに!まだその世界は不確定らしいの。要は現在進行形でその物語が紡がれている。だからイヴが見た記憶は数ある脱出方法の一つでしかないし、そんな結末の定まっていない世界に干渉したら何が起こるかわからなくなる。」
普段のメアリーでは考えもつかないような難しい話を聞いていると、漸くギャリーがフリーズ状態から戻ってくる。一応今までの会話は聞こえていたらしくすぐさまこちらの会話に入ってきた。
「それで?イヴはそのパラレルワールドをどうしたいのかしら?アタシとしてはイヴにそんな怖い真似をして欲しくないわね。」
「ギャリーが心配しなくても私がやらせないから安心して。それにイヴ1人だったら干渉することは出来ないから大丈夫だよ。」
「あら、そうなのね。ならそれは良いとして記憶の方は放置でも大丈夫なのかしら?」
「それも大丈夫。パパ曰く“その記憶は可能性がちょっと本気を出しただけ”らしいから。だからイヴだけ記憶があるんだってさ。」
メアリーはそういうと言うべきことは無くなったのかふと一息を入れる。その呼吸とともに3人の間に張っていた緊張感が少しづつ霧散していく。
「それじゃ問題も無くなったことだし早くここを離れましょ!何時までもしょげてたらつまらないもの!こんな記念日くらいパーッと遊ばないと!」
「うん!そうしよそうしよ!……イヴ早く行こ?」
「うん、行こっか。」
そう言って3人は歩き出すが、少し進んだ所でイヴか1人立ちどまる。いち早くそれに気づいたメアリーは何があったのかとイヴの方へ振り返るが、特段何かあったようには見えなかった。
「イヴ大丈夫?まだ調子悪いならほう少しだけ休もうか?」
「……ねぇ2人とも。私ってここにいていいのかな……?」
その質問の意図が読めなかったのか、ギャリーとメアリーは互いに視線を合わせる。そうしたのも束の間ですぐにイヴの方へ向き変えると2人は満面の笑みを咲かせる。
「そんなの決まってる事じゃない。ねぇメアリー?」
「ほんとにね?ギャリー。そんなこと気にしなくていいのに!」
「じゃあ……ここに居ていいの?」
「「もちろん!」」
はい。色々やってくれちゃいましたね。本当はワチャワチャのほほんと過ごすだけの予定だったんです!本当なんです!私はやってなぁい!
まぁそういう事でこんなもんで許してくだしあ……。