Ib〜ハッピーエンドへ行き着くためには〜   作:月舘

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おまたせしました。予定より三時間近く遅刻しました。これもこの間の9周年に時間がかかりすぎたせいです。はい。

あと今回全く進みません。そこを念頭に置いてご覧下さい。







では、どうぞ。


ゆめ

「……おや?君がここに来たって事は無事に“彼女の世界”に辿り着いたんだね。それならばひとまずはおめでとうと言っておこうか。」

 

 

気が付くと俺は謎の空間で佇んでいた。辺りはまるで闇が覆い尽くしてしまったかのように黒く壁のようなものも見当たらない。そして目の前には料理や家事の時には使わないような厚い生地のエプロンを身につけた初老の男がこちらを見ながら全て見透かしているかのように優しく微笑んでいた。

 

 

「……お前は誰だ、ここは何処だ、今は何時だあそこは何なんだ俺に何の用だイヴちゃんを何処にやったァァァァァ!!」

 

「まぁまぁ、少し落ち着きなさい。ここで喚いたところで事態は何も変わりはしないよ。と言った所で私の言う事を信用することは出来ないだろう。だから君から質問を受け付けよう。ちなみに名前はまだ明かせない。君が何も思い出してないからね。」

 

 

……思い出す。あの変な美術館に着く前から感じていたあの何かがポッカリ空いた感覚のことだろうか。もしそうだとしたらこいつは俺を此処へ招いた張本人なのだろう。通りで普段なら期待とも思わない美術展に来てしまう訳だ。どういう原理を使ったのかは全くてんで分からないが。

 

 

「じゃあ此処は何処なんだよ!俺はこんなとこ知らねぇぞ!」

 

「此処は……まぁ君の夢の世界と言えばわかりやすいかな?実際には精神の奥にある普遍的無意識に存在する“ボク”という“認識されている身体”を使って君の意識に上がってきたんだけど。……おっと、話を戻すよ。そういう訳だから君が強く思えば此処は空にでも地中にでも、はたまたあの美術館にだってなることは出来る。まぁもっとも、見た目だけだけどね?」

 

 

……てんで意味がわからない。こいつは何を言っているんだ?ここは夢の中?ならこいつは何なんだ?夢は記憶の整理をしている時の断片的なものを切ったり貼ったりしたものだと何かで聞いた覚えがある。しかし、俺の記憶にこんな老人と会った覚えは全くない。この人も切って貼ってで作られた夢の人物なのかと言われても、それらしい様には見えない。第一こんな生地のエプロンは見た覚えはない。

精神がなんちゃらと言っていたけど、そんな小難しいこと俺なんかに理解出来るわけが無い。

 

 

「……此処が本当に夢の世界ならなんで俺は此処にいるんだ。俺は寝た覚えはない。」

 

「君はここに来る直前の出来事を忘れたのかい?それを思い出せば自ずと分かるはずだ。」

 

 

ここに来る直前……。確かあの黄の間を唇を通って抜けて……そうしたらギロチン台の絵が何枚も並んでて……それで……。

 

 

「あ、ギロチンの刃が落ちてきたんだ。それで横に避けて……。」

 

「そう。それで壁に頭をぶつけて気絶したって訳なのさ。あ、因みに落ちてきたことに気づいたところから1歩下がれば避けられたよ。」

 

 

こいつは本当に何を言っているんだ。俺が気絶した経緯については、まぁ言うことは無いがその後になんて言った?「1歩下がれば避けられた」?なんでこいつにそんなことが分かるのか。というかそれ以前にあんな状況下でそんな冷静に判断できるかっ!

 

 

「……はぁ。お前が俺の夢の中の住人なのはわかった。でも何で出てきたんだ?正直こんな事をする意味がわからないぞ。せめてこんな黒一色の世界じゃない方が良かったんじゃ?」

 

「うーん。こっちの方が非現実感が増して信用されやすくなるかと思ったんだけど……。今更だけどこの世界とアトリエだったらどっちの方がいいと思う?」

 

「いやその二択ならまだアトリエの方がいいと思う。……なんでアトリエしか選択肢がないんだ?ぱっと思い浮かぶだけでも山とか海とかあっただろうに。」

 

「私にとってアトリエはとても馴染み深く、思い出深い場所なんだ。だから世界を創るならアトリエしか考えてないのだよ。」

 

 

そう言いながら目の前の老人が指をパチンと鳴らすと辺りはアトリエの中のようなごちゃごちゃとした室内が展開される。

 

 

「真っ暗が気に食わないみたいだから次からこの世界で会おうか。今回は軽い顔見せみたいなものだからそろそろ終わるけど次会う時には記憶が戻ってる事を願うよ。」

 

「あ、そうだ!お前は何を知ってる!俺に一体何が起きてるんだよ!この何か足りない感覚は一体なんなんだ!」

 

「記憶に関しては“彼女の世界”に到達出来た以上必ず戻ってくる。ただ夢から覚めてしまったらここの記憶は無くなるけど、再びこの夢にたどり着いた時に思い出すと思うよ。それじゃあまた今度。」

 

「ちょっ!まだ聞きたいことは山ほど……!!」

 

 

俺は抵抗虚しく意識がどんどんと無くなっていく。聞きたい事がまだあるのにも関わらず、そんな思いなどお構い無しにどんどん周りが暗くなっていく。

 

そして夢から覚めていく────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……。若いっていいねぇ。私も昔はあんな感じだったのかねぇ……。───おっと、彼女が私を呼ぶなんて珍しい……。こんな老体にムチまで打って働かせるつもりなのかねぇ?ねぇ……メアリー?」




金曜日のアップロードはきっと間に合わせますのでご容赦ください。ユルシテ…ユルシテ…。

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