では、どうぞ。
「さてギャリー。私達は先月、ヴァレントゥァインドゥェーにてイヴとメアリーからプレゼントを貰った……。そうだね?」
「……ヒロトシ頭でも打ったのかしら?病院に行く?もし怖いのなら着いてってあげるわよ。」
「私の事はどうでもいいから質問に答えたまへ。ギャリー君?」
「まぁ貰ったわね?……イヴの事はこんなくだらない雰囲気の時に考えたくは無いのだけど。」
「そんなことは分かってる!それよりも……私にお返しの品は何がいいか教えてくれたまへ!」
俺はそう言うとギャリーに向かって指を突き付ける。何だかこんな話をする事自体が照れくさく感じてしまい、ちょっとだけギャグテイストを含ませて質問をしてみた。そんな事情を知ってか知らずか、ギャリーは大きくため息を着くとこちらに向かってつかつかと歩いてくる。
……歩いてるだけでもイケメンは様になっていてなんだかムカつく。
「ねぇ?ヒロトシ。アンタ人に頼み事をする時にそんな無礼な態度でお願いをするのかしら?」
「あの……なぜ突き出した人差し指を握るのでせうか……?」
「それはね……?こうする為よっ!」
「あだだだだだ!痛い痛い!ギブっ!ギブぅぅぅっっ!!」
ギャリーが俺の人差し指に鯖折りを決めて十秒ほど経ってからゆっくりと握る力を弱めていく。そうして握っていた手が指から完全に離れたその瞬間に指を思いっきり振って痛みを和らげる。そんな姿を見てさらに呆れた顔をしたギャリーが此方へと視線を投げてくる。念の為また襲われぬように痛みを我慢しつつ指を抱えるように守っていると、このままだと話が進まないと思ったのかギャリーが口を開く。
「全く……普段の態度と全然違うじゃない。一体どうしたのよ?理由が理由なら病院に連れていくわよ。」
「ごめん、なんか気恥ずかしくておかしなテンションになってた。今まで同級生から義理を貰った事はあるけど年の離れた子から貰ったことは無いから何を返せばいいのか迷いに迷った結果さっきのテンションになった。」
「アンタ随分寂しい人生をすごしてきたのね……。それともニホンのお国柄ってやつなのかしら?まぁいいわ。そういう事ならアタシに任せなさい!」
正直そんなに寂しいなんて思った事は無いのだが、ギャリーの住んでいる国では皆が諸星あたる宜しく愛をばら蒔いているのだろうか。イタリア人並みに愛情がありそうで何よりだ。別に煽っている訳では無い。
でも俺はどう足掻いても奥ゆかしさが売りの日本人である為、あまりそういう機会に恵まれてこなかったのだ。というか貰ってない訳では無いぞ!“年の離れた子から”貰ったことがないだけであって友達からは普通に貰ったことあるからな!
「……まぁ寂しいとは思った事無いからそこは別にいいんだけど。イヴとメアリーにどういう路線のプレゼントをあげれば喜ばれるかなって思ってさ。」
「うーん……。あの子達ならなんでも喜んでくれると思うわよ?特にイヴなんてアンタからのプレゼントなんて言ったら飛び跳ねて喜ぶんじゃない?アンタ、イヴにプレゼントした事ないでしょ?」
「うぐっ。ギャリーは痛いところを着くなぁ。あんまりプレゼント送った事ないから何送ればいいかわかんないんだよ。友達へのホワイトデーのお返しは適当にチョコ渡しとけばよかったし。クリスマスは……ね?」
「ね?って何よ、ね?って!どうせそんなのアンタが面倒くさがってパーティに参加しなかっただけでしょうが!アタシには分かるんだからね!全く……どれだけ出不精なのかしら……。先が思いやられるわ。」
そう言ってギャリーは頭を抱える。俺としては特に問題のあるところは無いのだが、私的陽キャの頂上に君臨しているギャリー様からしたらまるで底辺の俺の行動は信じられないらしい。……馬鹿にはしてないよ?うん。
「とにかく!今からショッピングモールに行きましょ!色んなお店を見てどんな物がいいか目星をつけておかないと!もしいい物が見つかったらその場で買っちゃってもいいしね!」
「じゃあ近所のジャ○コ……じゃないんだよな今。イ○ンに行こうか。彼処なら服に本に家電、ゲーセンに宝石店、極めつけに病院も入ってる何でも屋だから何かしらお眼鏡に叶う物があるだろ。」
「そこ色々あり過ぎじゃないかしら……。寧ろないお店の種類の方が気になるわね。」
「メンズエステも有るけど寄ってく?もし寄るなら俺はゲーセンとかアニ○イトで時間潰してるけど。」
俺がそう言うとギャリーはなにやら考え始めてしまった。やはりオネェ足るもの美容に関心があるのか、きっとそこのメンズエステが気になってしまったのだろう。生憎と俺は美容とかそんなに興味が無いので、お店に入るなんて選択肢は無いのだが俺の目の前にいるオネェは何かを迷っている様子。……迷うのは全然いいんだけど急に首を振るのはやめて欲しい。びっくりするから。
「こ、今回はヒロトシのお返しを見に行くんだもの。アタシの事は二の次三の次よ。だからヒロトシもしっかりと見て頂戴。この期に及んで適当に選びましたは許さないわよ?」
「そんなこと分かってる。それに2人にはこれまで世話になったんだからどんな形であれ恩返し出来る事自体俺にとってまたと無い機会なんだよ。……もし巫山戯るとしても本気で巫山戯るさ。」
「そ・れ・が・ダ・メ・な・の!いい!?ちゃんと真面目に相手の喜ぶ顔を思い浮かべながら選ぶのよ!わかった!?」
「はいはい、分かってるって。ギャリー、俺を信用してくれよ。こんなにやる気を出してるんだから絶対にいいものを選べるって。な?大丈夫大丈夫。」
「今日のアンタ程信用出来ないものはないわよー!」
わよーわよーわよー……
───────
「よっメアリー。お久しぶり。元気そうでなによりだ。」
「よっトシ!お久しぶり!そっちも元気にしてた?」
「そりゃ勿論。……あれ?ギャリーとイヴはまだ来てないのか?てっきり3人とも揃ってるかと思ってたんだけど。」
辺りを見渡してもイヴとギャリーが見当たらない事に気づいた俺はメアリーにそこん所の事情を聞いてみる。するとメアリーは呆れたような喜ばしいようななんとも言えない表情でこちらに向き直って言葉を続ける。
「イヴの件で決着つけに行ってるよ。……あれが決着って言いたくはないけどね。」
「その反応って事はもしかして保留を選んだ感じ?まぁ一般的には妥当な判断だな。それが100%正しいとは言わないけどさ。」
「え〜そう?私はもっと自分の気持ちに正直になってもいいと思うんだけどなぁ。って言うかあのなんとも言えない甘酸っぱい雰囲気を醸し出すのやめて欲しいんだけど!一緒にいる私の方がムズムズする!」
「まぁまぁそう言わずにさ。……どうやら事が済んだみたいだから問い質してみようか。」
そういう俺の視線の先にはなんだかやりきった顔をしたイヴと、何とも言えない表情をしたギャリーが此方に向かって歩いて来ている姿が確認できた。……イヴの表情から察するにきっと彼女の都合の良い方に物事が進んで言ったのだろう。
2人が到着した瞬間にメアリーがイヴと話を始めたので2人の邪魔にならないようにギャリーと話を始める。
「なぁギャリー、イヴになんて返した?イヴはあんな表情してるけどまさかお付き合いする感じ?」
「……取り敢えず保留にしたわ。これから先中学高校と進んでいく中で、それでもアタシの事が好きでいてくれるのであればって。」
「おー……なんというかドラマとか小説とかでありそうな展開だな。それで?イヴはなんて返してきたんだ?」
「……『わたしは何時までも貴方を好きでい続ける。だから高校卒業するまで待っててね』って。アタシから高校って単語を出した手前その結論に行き着くのもわからなくはないんだけど……。」
「それはまぁ己の発言を恨むしかないな。それにギャリー自身の心の整理もそれくらいの期間があれば出来るだろ?だったらお互いの心の準備期間だと割り切るしかないな。ガンバ。」
まぁイヴがそこまでギャリーを待ってくれるのか否かも問題のひとつとしては存在するが。アニメの影響だが、なんか吹っ切れた女って此方のことを度返しにしてグイグイ攻めてくるイメージがある。あれがもし現実の人でも有り得ることならば、俺は恋愛はしない方針でいいだろう。そこら辺の判断の基準にさせてもらう為にもイヴとギャリーには色々頑張ってもらおう。
少ししてから此処で随分と立ち話をしていることに気づいた俺は、3人に対して口を開く。
「さて、そろそろ移動するぞー。ここでずっと立ち話ってのもアレだし何処かゆっくり出来る所に行こうか。」
「さんせー!私ご飯食べたい!お腹減った!」
「ハイハイ。でも今は中途半端な時間だからカフェでちょっとつまむくらいにしてくれ。後でしゃぶしゃぶのお店予約してるからそこで腹いっぱい食べられなくなるぞ。」
「え!シャブシャブ!?……うぅ〜。分かった、我慢する……。」
メアリーは目先の幸せと後の幸せを天秤にかけた結果、後の幸せを取ったようだ。なんとも彼女らしくて可愛らしい選択だななんて思いながらほか2人の様子を伺う。
……あの2人はなぜ甘酸っぱい雰囲気を醸し出しているんだ。この短時間で何があった。いちいち何があったのか聞くのも憚られるくらいには何度もラブコメ的空気を出してきた2人だが、ここまで短い時間で2人の空間を作るのもなかなかに珍しいことだ。
……さてはここに来る前に話した内容をイヴに念押しされたとかか?それでギャリーが照れてしまった的な?前に幼馴染から借りたラブコメ漫画に同じような展開があったけどそれを現実で見ることが出来るとは思ってなかった。ここまで完全に俺の妄想だけど、そういう事なら野暮なことは聞かないでおくか。
───────
「はぁ〜!楽しかったぁ!……トシ!今日はありがとう!ゲームセンターもシャブシャブもすっごく楽しかった!」
「アタシも凄く楽しかったわ!今日の事を相談されてたけど何処に行くかとかは聞かされてなかったから心配だったけど杞憂だったわね。」
「おう。2人とも楽しんでいただけたようで何よりだ。……イヴはどうだった?さっきから何も喋ってないけどつまらなかったか?」
「ううん。すごく楽しかったよ。でも、いくらバレンタインのお返しとはいえここまでしてもらっていいのかなって……。」
……これはカルチャーショックの類だろうか。それとも良くも悪くも遠慮がちなイヴが出てきているのだろうか。何方にせよその心配はないと伝えなければ。それにまだホワイトデーは終わってない。
「……バレンタインデーのお返しは3倍で。この国は男の甲斐性を示す為かそんなジンクスがあるんだ。だからこれくらいはできるって甲斐性をバレンタインデーにくれた2人には見せておかないとって思ってさ。」
「おー、トシが男らしい。これは明日は槍でも降るかな?」
「おいメアリー。それ以上言うと髪の毛ぐしゃぐしゃになるまで頭を撫で回すぞ。」
俺がそう言うとメアリーは頭を庇いながらイヴの後ろに隠れてしまった。そんな行動をとるのであれば初めから怒られるような事を言わなければいいのにと思ってしまうが、そこを言ってしまうのが彼女の良い所であり悪い所だろう。
まぁそれは置いといて俺にはまだもうひと仕事残っている。正直2人が喜んでくれるのか不安であるが、そこはギャリーのセンスを信じよう。監修をしてくれたのだから全く責任を取らない事は無いだろう。
「さて……今日最後のイベントだ。イヴ、メアリー。ちょっとこっちに来てくれ。」
「……撫で回さないよね?した瞬間にトシの腕を噛むから!」
「あはは……さすがのお兄さんも今それはしないと思うよ?」
「するなら予告しないでいきなりするから安心しろ。」
「まずあの乱暴なのをやめて欲しいんだけど!ねぇトシ聞いてる!?」
ギャーギャー騒いでいるメアリーをスルーして俺はプレゼントの渡す準備を進める。プレゼントを買う際、メアリーに渡す物はふざけようか考えた時もあったがあの日俺はちゃんとふざけずに貰った事を思い出して諦めた。そんな事を思い出しながら俺はプレゼントを2人に渡す。
「こっちがイヴでこっちがメアリーだ。ほれ、受け取りな。」
「え、いいの?お兄さんありがとう!……何が入ってるか見てもいい?」
「勿論いいぞ。メアリーも確認してみな。」
「言われなくても!……わぁ!可愛いヘアゴム!バラのコサージュが付いてるのね!」
「うん!すごく可愛い!……あれ?赤と青と黄色はあるけど白はないの?」
やはりバレてしまった。まぁこの3色を揃えておいて白がなかったらすぐ気付くか。しかし俺的にはこの3色が大正解であり、他の色を足すつもりもない。この選択はそんな俺のエゴな訳で2人には申し訳ないがそれを受け入れてもらうしかない。
「あーお店に白色のものが見当たらなかったんだよ。別の店に行って探すのも考えたけど白ならまぁなくてもいっかなって思って、だからその3色しか無いんだ。」
「……ヒロトシ。アタシはこの事はまだ怒ってるんだからね?その事を忘れないでよ。」
「解ってるよ。だから貸し一だって言ってるだろ?」
「……?2人ともなんの話しをしてるの?私たちにわかるように話してよ。」
「なんでもないよメアリー。……さて今日したかった事は全部終わったしそろそろ帰るか。今日は3人とも泊まってくから母さんがめっちゃ喜んでたぞ。家に着いたらイヴとメアリーはもみくちゃにされるかもな?」
俺はそう言って家路に着く。その後ろを3人は三者三様の反応をしながら着いてくる。その光景に何故だか懐かしさを覚えながら家への道程をゆっくりと楽しんで歩いていく。またいつかこんな風に3人で遊べる事を天に祈りながら───。
なんでifになるといつも以上に書いてしまうんですかね?普段だったら次の話として区切る所で区切らず1話で収めるからですかね?その分時間が掛かるんで困ったもんですが今回は間に合ったんで許してください。