Ib〜ハッピーエンドへ行き着くためには〜   作:月舘

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どうも、私です。今回はそこそこ筆が乗ってくれたお陰でそんなに苦労せず書き終わりました。普段からこんな感じでかければ最高なんですけどね……。

まぁそんな何時もの愚痴は置いといて今回も楽しんでいってください。








では、どうぞ。


敗走

なんなんだあの絵画は。俺も普通の美術館の時に目にはしたが彼処まで人間らしいタッチで描かれてなかった記憶がある。それなのに今目の前にある絵画は、まるで生きた人が額縁の中に佇んでいるかのようなリアルさでは無いか。……あれはマズイ。近づいては行けない気がする。

 

しかし危惧している俺の事などお構い無しにイヴちゃんは『赤い服の女』の元へと近づいていく。

 

 

「イヴちゃんっ!……その絵画に近づかない方がいいと思う。なんと言うか……あまりにリアル過ぎる。今にも動き出しそうだから他の作品から見ようよ。」

 

「……やだ!わたしこれ見る!お兄さんは着いてこないで!」

 

 

先程のあの険悪な空気を何とかしなかったのが仇となったかっ────!しかし今過去のことを悔いていても仕方がない。今俺に出来ることをしなければ。考えろ……今の俺には何が出来る。

 

絵画の前に先回りする?─いや、それはかえってイヴちゃんがムキになって意地でも見ようと行動するだろう。

……ならばしれっと後ろから着いていく?─それをしたら走って絵画の方へ逃げるから意味が無い。

ならば無理にでも抱き抱えて離れさせる?─俺は馬鹿か。そんな事をしたら今崩れかけている信頼関係が戻らないものになる。もっと慎重に行動をしなければ。

 

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

「っ!イヴちゃんっ!」

 

 

イヴちゃんの悲鳴を聞いた俺は、何かを考える前に体が動いていた。……しかしなにか悲鳴の前に聞こえたような気がするのは何故だろうか。なにかガラスのようなものがパリンと割れる音が……。

 

イヴちゃんの元へと着いた俺は、そこで動いているものを見て警戒心を高めると共にやっぱりかという気持ちが頭の中に溢れてくる。だってそこで動いているものは『赤い服の女』なのだから。

 

 

「イヴちゃんっ!立てる!?」

 

「こ、腰が抜けちゃってムリかも……。」

 

「じゃあちょっと手荒の方法で行くよ!我慢してね!」

 

「えっ?……きゃぁっ!」

 

 

俺はイヴちゃんの両脇に手を入れるとそのまま体を起こし、その流れのままお姫様抱っこを持ち替える。短期間でイヴちゃんを2度も抱き抱えることになるとは思ってなかったが、そんなことよりもお互いの身の安全の方が大事だからそこは我慢して欲しい。

 

 

「イヴちゃん……っ。バラは2輪とも持ってる……っ?」

 

「うん持ってるよ!……あの赤いお姉さんそんなに速くないみたい。距離が離れたよ!」

 

「了…解っ!さっきの廊下まで戻るよ……っ!」

 

「わかった!」

 

 

息も絶え絶えに何とか扉の所まで戻ってきた俺達は急いで部屋を後にする。足を止めてイヴちゃんをゆっくりと下ろすと今までの走った疲れが一気に押し寄せてきて、過呼吸気味になってしまった。距離は短かったとはいえさすがに人1人担ぎながら走るのは無理があったか。

 

そんな俺を心配してくれたイヴちゃんはおずおずと俺に話しかけてきた。

 

 

「あの……お兄さん大丈夫?すごく息が切れてるけど少し休む?」

 

「ハァッ……そうして貰えると……ハァッ……助かるかな……。」

 

「わかった……。」

 

 

正直今の俺にイヴちゃんの様子を気にする余裕はあまり無い。高校生とはいえ帰宅部の俺がこんなに走るなんて体育の授業位しかないのに無茶をし過ぎただろうか。バッグの中にあるスポドリを一気に飲み干したい気持ちはあるが、飲み物自体無いこの世界でいつ出られるかも分からないのに貴重な水分を無駄にしてしまうのはいくらなんでも気が引けるのでもう少し落ち着いてから飲むかどうかは考えよう。

 

しかし先程次の部屋に向かう扉の存在が確認できたのは大きいだろう。流石に開いているかどうか分からない今の状況で入ろうとすることは出来なかったが、またこの赤い服の女のいる部屋に戻る際にあいつの位置を確認しつつ開けられるかどうか試してみるとするか。

 

 

「ハァッ……ハァッ……ふぅぅ……。よし、そろそろ行こうか。」

 

「えっ、まだ息整ってないんじゃない?本当に大丈夫?」

 

「大丈夫大丈夫。これくらいいつも通りだから。」

 

 

普段から出来るだけ楽をしてきた俺にとって何ひとつとしていつも通りではないが、これくらいの嘘はまぁ許容範囲内だろう。実際もう既に動ける程度には回復したし、喉の渇きもそんなに騒ぐほどではない。これならもう一度イヴちゃんを担いだ状態で『赤い服の女』と競争が出来そうだ。

 

 

「それじゃ行こうか。」

 

「う、うん……。お兄さん、無理しないでね?」

 

「大丈夫だって。そんなに心配しなくても俺は頑丈だから。……あ、そうだ。この部屋だけ俺の薔薇返してくれない?さっきイヴちゃんを抱えるまで見向きもされなかったから、もしかしたら薔薇に反応するタイプかもしれないし。」

 

「え?……渡したら今まで以上に無茶しそうだからヤダ。」

 

 

なんとも俺に対して信用が無さすぎやしないか?俺そんなに無茶した覚えはないんだけどなぁ……。それに今までの行動のどれかが無茶に入るのなら、これからもっと敵対する絵画や彫刻が増えた際になにも出来なくなってしまう。こんなイカれた世界がいとも簡単にクリア出来る訳が無いと考えるとこれから先はもっと難しくなっていく事だろう。……無茶をしていても無茶している様に見えないよう行動しなければまだ口うるさく言われてしまうのだろうか。それだけは勘弁願いたい。

 

そんな会話も程々に俺達は先程戻ってきた扉の前へと体を向ける。深く呼吸をして肺から心臓、心臓から身体中へと酸素を行き届かせる。……よし、なんら問題はない。これならまたあいつに追いかけられたとしても余裕で逃げられるだろう。

 

 

「開けるよ。走る準備はしておいてね。」

 

「わかった。……あ、あとこれ渡しておくね。ホントは嫌だけど仕方ないことだもん。」

 

「ありがとう。……これで準備万端かな?なら今度こそ出発するよ。」

 

 

俺はそう言って目の前の赤い扉を再び開ける。そして今度こそ奥の部屋を突破出来る事を祈りながら足を1歩踏み出した─────。




実はお仕事の方でお休みが欲しいと強請る後輩が出たもので、今週から3週間連続で休みが1日減ってしまいました。(今週は人が居なかっただけなんですけどね。)なのでもしかしたらこれから遅刻が多くなるかもしれません。

でもどれだけ遅刻してもどれだけ不定期更新になっても必ず完結まで持っていく気概はありますので、もし着いてきてくれる方がいらっしゃいましたら最後までよろしくお願いします。
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