はい。ごめんなさい。では、どうぞ。
1階の展示スペースにはいきなり大きい2枚の絵がお出迎えしている。そのうちの一つはなんと床にペイントされているらしい。どうやって運んだのか……。少し気になるところだ。なんて思いながらその絵【深海の世】の説明文を読む。
『ヒトが立ち入ることは許されない
その世界を堪能するため私は
キャンバスの中にその世界を創った』
この文章を読んだ瞬間、再びプレッシャーを感じた。しかも次は、この【深海の世】から。全身が震えあがるくらいのものを。
俺はこのゲルテナの作品から嫌われているのだろうか。それとも品定めされているのだろうか。なんだかよく分からないまま順路に向かって別の作品へと足を進める。
……どうやら次は大きなバラを象ったもののようだ。この作品は今までのものと違って儚くも力強い雰囲気を感じる。
作品のタイトルは【精神の具現化】。
『一見美しいその姿は
近づきすぎると痛い目に遭い
健全な肉体にしか咲くことができない』
確かに。なんてそう思わせる説明文。しかし、何故かこの文章の裏にはすごく大きななにかが隠れているようなそんな感じがした。
「ま。人間なんてそんなもんだよな。」
なんて、まるで高二病みたいな発言だなと自分を鼻で笑う。
隠されている"ナニか"に触れないように。臭いものには蓋をする。
1階の展示物を一頻り見たところで次は2階へと向かう。その道中、白いブラウスに赤いリボンを着けた外国のいい所のお嬢さんのような容姿の女の子がパタパタと走っている。その姿にほんわかしながらも彼女とすれ違った。その瞬間、ふとなにかに気づいた俺は後ろを振り返る。すると彼女の走っている姿も子供の走る足音さえも無くなっていた。
2階に着いた俺は、右手側に石像のようなものがあるのに気づき順路を少し無視することに変な嫌悪感を覚えながら説明を見るために歩く。
石像に近づくにつれて、そのおかしな風貌に目がいった。どうやらこの石像には頭がないらしい。名前を見ると【無個性】と書かれている。頭がないのは、俺からしたら随分な個性になると思うがゲルテナは違うらしい。まぁ考え方なんて十人十色。普通の感性をしていない人の一部が芸術家になるのだろう。その感性がわかるようで分からないから。ひとつの物事の解釈を常人では出来ないような表し方をするから。だから芸術家なのだろう。
少ししてから順路に戻った俺は、他の作品にゆっくりと目を向ける。
【新聞を取る貴婦人】【吊るされた男】【双塔】【心配】など、色々な絵画が飾ってある。他にも、【口直しの樹】なんてシャレたものもあった。そんな感じで思っていた以上に楽しんでいた俺はこの美術展の中で1番大きいであろう絵画の前に着いた。その作品の名は
【絵空事の世界】
何故かこの絵の周りには人は居なく、この美術展を回ってきた中で1位2位を争うくらいとても静かな場所だった。それも、不気味なくらいに。
少し不自然に思った俺はこの絵をしっかりと見る前に順路を進むことにした。すると少し進んだところで少しずつ人のいる気配が感じられるようになった。そこからもう少し進むと、展示物である【特等席】とそれを見て座りたそうにしている女性が見えてきた。
あの絵について気になった俺は1回受付まで戻ってこの美術展の中で一番大きい絵画を聞いてみた。すると、1番大きい絵画は【悪意なき地獄】だと言う。
その話を聞いた瞬間に体が硬直する。悪寒が走り、背中には嫌な汗が流れ、全身に鳥肌が立つ。足は震え、受付の人がいなかったら膝を着いていたであろう。それ程までに焦燥していた。
口の中が渇いてカラカラになりながらも感謝の言葉をかけ再び2階へ向かう。真っ直ぐと向かうのは【絵空事の世界】。ここは俺しか行けないのか。1度その場を離れたら入る資格がないのか。それを確かめに足早に目標へと歩く。
【絵空事の世界】の前まではどうやら行けるようだ。そしてここには人っ子一人居やしない。そんなことを思いながらぼんやりと絵を眺める。まるで落書きのようなその絵は阿鼻叫喚の地獄のようにも見える。今まで見た絵画と違い、何を表しているのかさっぱり分からない。そんなことを思いながらこの絵の説明を見ようとすると照明が点滅し始めて、仕舞いには当たりが暗くなる。
「え、停電?まじか……。何かあったのかな……。」
しかし、ここには人の声が届かない。少し様子を見に来た道を戻るとそこには
さっきまでそこにいた人たちがみんな消えていた。
白いブラウスに赤いリボン……赤いスカートを履いてそうなこの茶髪系幼女は一体誰なんだ……。
幼女がパタパタ走ってるのは幼いから許されます。この理論はショタにも有効です。子供ってのはね。可愛ければそんな些事なことは許されるんよ。男女差別はしないですよ。