では、どうぞ。
ズッズッと赤い服の女が近づく音が聞こえた俺達は少しでも遠ざかる為にもう一度心の音の方へと移動する。あまり遠くまで離れたとは言えないが、段々と奥に行って後ろから以外は見えなくなる構造をしているのでまぁ隠れるにはいい所だろう。
それよりもこれからどうやって逆側、つまり動く前の『赤い服の女 』が飾ってあった所へと辿り着くかである。取り敢えず俺が囮になるのは確定事項だが、果たして薔薇を持たないと本当にあいつは反応をしないのか。そこが先ず気掛かりな所だ。もしこれで見向きされないようであればこの類の敵から1人は狙われなくなるって言えるだろう。なら一緒に行動する時には俺が持っていればイヴちゃんが襲われなくなるし、イヴちゃんが安全なところにいるならば俺が偵察に行くことも容易になるだろう。となれば今俺のするべき事は薔薇を持たずにあいつに対峙することか。
「よし。ちょっと隙を見て『うん』の陰に隠れてて。俺ちょっと誘導出来るか試してくる。」
「え!?それは危険すぎるよ!絶対ダメ!」
「大丈夫大丈夫。じゃ、ちょっくら行ってくるね。」
そう言って俺はイヴちゃんの返事も聞かずに今いる所から飛び出して赤い服の女の元へと歩いていく。正直俺の考えが合っていて欲しい所だが、そう上手くいくだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、視界の端に赤い服の裾のようなものが見えた。急いでそちらを向くと何やら赤い服の女が行くあてもなくズルズルと歩いて(?)いる。
念の為近くにイヴちゃんが居ないかだけ確認をしたら、俺はその足を“推定名も無き女性”へと向けて進みだした。
「そこの赤い服のお姉さん。ここってどこか分かりますか?お恥ずかしながら俺迷子になっちゃって……。」
“……”
「うーん……。もしかして喋る事ってできない感じですか?じゃあ……あそこの扉ってどうやったら開きますか?」
“……”
「困ったなぁ。……ていうかなぜジリジリと近づいてくるのでしょうか……?そんな怖い顔をしてたら綺麗なお顔が台無しですよ?」
“シャ-!”
「うぉあ!?急に襲ってくるのは禁止でしょ!イヴちゃーん!今から大回りしながら入口の方へ行くからその内にここら辺見といてー!返事しなくていいよ!」
それだけ矢継ぎ早に言うと俺は付かず離れずの速さで心の音の方へ歩き始める。……薔薇を持ってなくても追いかけてくることが立証されてしまったことに少しだけ面倒くささを覚えつつ後ろから追いかけてくるあいつの方をちらりと見遣る。どうやらしっかりと俺に着いてきているようだ。
心の音の辺りまで来た俺は再び大声でイヴちゃんに現在の状況を取り敢えず伝える事に。これで何か見つけてくれていればいいのだが。
「此方現在『心の音』前にいまーす!其方でなにか見つけたら2回手拍子お願いしまーす!」
それを言った直後にイヴちゃんが向かったであろう方向から手拍子が2回返ってきた。どうやら何かを見つけたようだ。
「見つけたの鍵ー?もしそうなら手拍子2回お願い!」
向こうからは手拍子が2回。どうやら次の部屋に向かえそうである。しかしここで気を抜いたらこいつに捕まってしまう可能性もある。そうなったら何をされるかわかったものでは無いので絶対に捕まらないようにしなければ。
「それじゃあ今入口の方に向かってるから頃合になったら合図出す!だからすぐ走って鍵を空ける準備よろしく!」
そこまで言って再びゆっくりと誘導を始める。後ろの額縁が重いのか移動速度は俺の徒歩程度の速さで助かった。先程はいそいで離れることだけに集中していた為気にしていなかったが、そう言えば立たせる為にそこそこ話していたのに捕まってないことを思い出し納得をする。
少し移動して入口前まで辿り着いた俺は後ろから着いてくる赤い服の女を見て鍵を開けてもらうなら今しかないと思ったので、再び腹に力を入れる。
「イヴちゃん!GO!」
その瞬間に向こう側からパタパタと足音が聞こえてくる。足音が止みカチャカチャと何かを弄る音が聞こえてくると思ったら次の瞬間にはガシャンと鍵の開く音が聞こえてきた。
「すぐ行くから扉開けたまま待ってて!」
そう言って俺は踵を返し、次の部屋へと向かう扉へと猛ダッシュをする。するとどうだろうか。今までのノロノロとした動きは嘘だったかのようなスピードで赤い服の女はこちらを追いかけてきたではないか。驚いてしまった俺は足がもつれそうになったが何とか持ち直してそのまま走り抜ける。
幸いな事に初めからそこそこの距離をとっていた為扉の近くまではあまり距離が近づく事なく走る事が出来た。しかしそこで少し安心してしまったのか再び足がもつれてしまい転びそうになる。
「うぉっとぉ!?あぶね!イヴちゃん!扉閉める準備ィ!」
「う、うん!わかった!」
イヴちゃんがすぐ閉められる位置に着いたことを確認した俺は気持ち的に今まで以上のスピードで走り抜ける。これほど全力で走ったのはいつ以来だろうか?それほどまでに久々だった為か何度か足がもつれてしまったが何とか最後まで走れたようだ。扉が閉まっていることを確認して一息つこうとしたその瞬間に扉の向こうからドンドンと強い力で叩く音が聞こえる。もしかして扉を破ることが出来るのかと身構えたが2度も全力疾走をした俺の体のどこにも力が入らない。そんなこんなでビクビクしていたものの扉が破られることは無かった。
今回はすごく中途半端なところで終わってしまって申し訳ございません。しかしこれ以上書くと文字数が本編の中でもこの話だけ多くなってしまうのでここで終わらせていただきました。ご了承ください。
それと次回は宣言通り次週の火曜11:00更新となりますのでご容赦ください。
絵本の演出どうしよう……。