では、どうぞ。
「ハァッ……!あいつッ……!速すぎるだろッ……!」
「お兄さん大丈夫……?」
「ごめんッ!ちょっと休憩ッ!」
膝に手を当てて立っているのも辛くなった俺はそう言い終わると同時に勢いよくその場に座り込んだ。いくら体力のあまりある高校生男児と言えども普段の出不精が祟ったのか、それとも荷物を背負ったままだったのが行けなかったのか。間髪入れず2度も全力ダッシュをしたからすごく疲れた。流石にここまで走ると喉もカラカラになってしまったので、美術館に入館する前に買っておいたスポドリをカバンから出して一気に飲みたい気持ちを抑えつつ、とりあえず一口口に含ませる。
「お兄さん、わたしものどがかわいちゃった。何か飲み物ない?」
俺があまり多いとは言えない水分を少しずつ飲んでいると、イヴちゃんを少し緊張が解けたのか飲み物を要求してきた。
しかしあげるのはいいとしても残りが紅茶、お茶、それと家から持ってきた麦茶位しかない。……選んでもらった方が早いか。
「今俺が飲んでるもの以外だと紅茶、緑茶、麦茶の3つがあるけどどれがいい?」
「……?むぎ茶ってなぁに?わたし飲んだことないかも!」
この質問が飛んできたということはどうやらイヴちゃんの住んでいる地域には麦茶は無いらしい。日本以外で飲まれているという話もあまり聞かないので、恐らくは日本発祥の飲み物なのだろう。ぜひ飲ませてあげたい。……しかしコップの分りになるものが見当たらない。俺が普段使っているワンタッチで開けられる水筒を持ってきた為、この水筒のまま飲ませるのはあまり宜しくない気がする。かと言ってこの好奇心をそんな理由のみで無碍にするのも気が引ける。どうしたものか。
「……イヴちゃんは因みにコップの代わりになるようなものは持ってないかな?」
「急になんでそんな質問するの?持ってないよ。」
「だよねー……。普段俺が直接口を付けてる水筒だからさ。他人の水筒に口をつけるのはあんまり気持ちのいいものじゃないかなって思って。」
「わたし気にしないよ?それよりもむぎ茶ってやつを飲ませてよ!はやく飲みたい!」
「イヴちゃんが気にしなくても俺が気にするの!」とは言えず、俺はおずおずと愛用の水筒をイヴちゃんに差し出した。確か1.5Lは入る水筒を持つイヴちゃんはなんだか背伸びをしている子供のようで微笑ましかったが、その水筒の持ち主が俺だという事を意識する度に罪悪感というか背徳感というかが俺の中で増幅していく。なんだかいけない事をしているような……
「お兄さん、そんなにじーっと見られたらちょっと飲みづらいよ……。」
「あ、ごめん。なんかイヴちゃんがそのサイズの水筒を持ってるのってなんか微笑ましいなって思ってさ。ゆっくり飲んでね。」
俺がそう言うとイヴちゃんはムッとした顔を崩さないままに水筒へと口をつける。一口二口と麦茶を飲み進める事にイヴちゃんの顔は難しい顔へと変貌していく。……どうかしたのだろうか。もしかしてイヴちゃんの口に合わなかったのだろうか。烏龍茶よりは癖がなくて飲みやすいと思っていたのだが。
「これ……なんかよくわかんない味してるね。苦いようで苦くない、香りはそんなにすごく強いわけじゃないけど風味はふくよかで……。美味しいけどなんかモヤッとする味〜!」
「そうかなぁ。俺は昔から飲んでるからか気にならないけどね。あとこのお茶ってミネラルを多く含んでるらしいから水分補給にはもってこいなんだよね。」
「へぇ〜そうなんだ。このお茶ってすごいんだね。……んっ。お兄さんありがとう!美味しかったよ!」
イヴちゃんの口にあってくれたようで何よりだなんて思いながら俺はイヴちゃんから水筒を受け取ってカバンの中に戻す。俺の体も先程までの疲れが取れて少しだるさが残るのみとなって、まぁ動けるだろうくらいには回復した。ここまで来ればもう部屋を探索するくらいならば大丈夫だろう。
「よし。じゃあ喉も潤したしそろそろこの部屋を探索しようか。本棚が多いし分担する?それとも一緒に見る?」
「う〜ん……。一緒に見よ!わたしが読めない文字もお兄さんなら読めるかもしれないし!」
「わかった。じゃああっちから見ていこうか。」
そう言って俺達は手前の本棚の列を順に見ていくことにした。
という事で次回はこの小部屋?うごく絵本の部屋を探索していきます。何とかさっさと終わらせるように頑張ります。ハイ。
因みにイヴちゃんの麦茶の感想はちゃんと飲みながら考えたのですが、私には飲み慣れたものなので全然いい感想が浮かばなかったことをここに謝罪します。