では、どうぞ。
指輪も手に入った事で確実に物事が進むと確信した俺達は念の為警戒をしながら悲しげな雰囲気を醸し出している新郎新婦の飾ってある部屋へと戻ってきた。前回ここに来た時は素通りをして何も調べてなかった為新郎新婦の絵と“悲しき花嫁の”と言う前提条件のある黒い両手がある事しか分かっている事は無い。
しかしこの部屋の広さ的にはこれ以上何かあるとは思えないし、何かあった所でどうせ大したことでは無いのだろう。それよりもこの黒い手に指輪をはめたら何が起こるのかという事の一択だろう。ここも特に悪い事は起きないとは思うのだが、それでも警戒をしない訳にはいかないだろう。
「ねぇギャリー。けっこん指輪ってどっちの手につけるんだっけ？わたし薬指につける事は覚えてるんだけどどっちにつけるのか忘れちゃった。」
「あらイヴ。そんなの……そうだわ！イヴ当てずっぽうでいいから当ててみてちょうだい！当たったらいいものをあげるわ！」
「ほんと！？じゃあわたしがんばる！むむむ〜……うん決めた！右！きっとこっちが正解！」
「うーん残念、正解は左よ！ちなみに右手の薬指に指輪をつけるのは恋を叶えるなんて意味もあるのよ？だからイヴも好きな人が出来たら右手の薬指に指輪をつけるといいわ。」
「そうなの？外れたのは残念だけどいい事聞いた気がする！ありがとっギャリー！」
「んもぅ！これくらいどうって事ないわよ！……ていうかヒロトシ、さっきから一言も喋ってないけど大丈夫？体調が悪いなら指輪をはめる前に少し休憩を挟みましょ？」
「あ、いや……なんか少し警戒をしていたのが馬鹿らしくなってきたなって。」
2人の繰り出す光景に毒気と緊張感を盛大に持っていかれながらも、最後の警戒心はくれてやるものかと豆乳を搾ったあとのおからのようにボロボロな緊張感にムチを打ち、イヴちゃんがいつ指輪を填めても大丈夫なように備えておく。
しかし1度崩れてしまったものを元に戻すことは難しく、いくらハリボテを立てたところでハリボテは所詮ハリボテ。どうせ何が起きたところですぐに対処することは難しいだろうと思い直し、俺も気を弛めて少しでも体を休める事にシフトチェンジする。
取り敢えず何の気なしにぼーっと2人をみていたらどうやらようやく指輪をはめる気になったらしく、黒い手の左手の薬指をふにふにと触っているイヴちゃんが居る。何をしたかったのかよく分からないが止める理由もない為放置して指輪をはめるのを待つ。
するとイヴちゃんはポケットから遂に指輪を取り出しておずおずと指輪を薬指に入れていく。すると新郎新婦の表情が悲しげなものからにこやかな明るいものへと変貌しこちらを見つめてくる。そして次の瞬間、新婦が持っていた花束をこちらの方へと投げてくるではないか。
「ブーケトスか……。イヴちゃん、その花束を持ってくれる？」
「え？別にいいけど……なんで？」
「うーん……何となくかな。でもきっと新婦も俺ら男よりイヴちゃんに持ってて欲しいと思うよ？」
「そうね。それにブーケトスって言ったら取った人が次結婚出来るなんて迷信もあるものね。アタシはまだ結婚なんてする気ないしヒロトシにはどうせ相手なんて居ないでしょうし。」
「……ちょっとギャリーさん？それは言い過ぎじゃないですかねぇ？俺だってちょっと本気出せば1人くらいはきっとお相手が見つかる……と思ってるんだぞ。多分。」
「お兄さん……少しは自分に自信もっても大丈夫だと思うよ？それにお兄さんいい人だからきっといい人が見つかるよ。」
「イヴちゃん……そのフォローは逆に傷つくんだ……。嬉しいけどもう大丈夫だよ。」
なんだか俺だけ傷ついてしまった感が否めないがまぁそんな事は些事なので放っておいて、これであの青いヤツにあげる為の供物が準備できたという事になる。という事は嘘をついてなければあいつの奥に行く事ができるという事で。ようやくこの灰色の部屋から次に進めるという事に少し心が弾みながら俺達はこの部屋を後にする。
ここ最近お友達に勧められてらせんの宿と返校の2つの実況動画を見てました。両方ともストーリーがしっかりとしてて見ていて面白かったです。
らせんの宿に関してはストーリーに加えて顔グラが良い味出してましたね。
返校の映画吹替版も出てくれればいいのに……。