では、どうぞ。
視線を感じながらも扉をゆっくりと開けると俺たちの視界一面に何も無いただの壁が映し出される。辺りをキョロキョロと見渡すと一応左右に何かがあるようなシルエットが少し見えるからこの壁の奥にも部屋は続いているのだろう。
左か右か、どちらから行きたいか2人に問いかけてみると帰ってきた返答は案の定どちらでもいいというものだった。正直なんとなくそう返ってくるのは予想していたがだからといって俺がどちらに向かいたいか決めている訳では無いのでなんとも迷う所。
「ヒロトシ、そんなに悩むのなら直感に任せちゃいなさいな。どうせこの部屋も満遍なく回ることになるんだからどっちから行っても変わらないのでしょうし。」
「うーん……そうだな。そうしようか。まぁ元はと言えば2人が俺に投げ出したからこんなに悩んでるんだけどな?」
「お兄さん、そんなしかめっ面をしたって怖いだけだよ。もっとスマイルスマイル!」
そんな2人の言い分を聞きながら俺はため息をひとつ小さくついた。これがクラスのヤツらだったら強く言い返すところだが、相手は成人済のオネェと小学生女児というなんとも訳の分からないメンツという事もあって強く言い返せない状況にあった。
とりあえず何となく右側の方が安全な気がしてそちらに向かってみると突き当たりにはやはりと言っていいのか部屋の奥に行ける道があり、すぐ目の前には色違いの無個性が4体並んでいる。おそらく入口から見えていたなにかのシルエットはこの無個性の腕の辺りだったのだろう。
何度か4体の無個性の前を行ったり来たりしてみても動く様子はなかった為、ひとまずは安心してこれらの前を通って奥へと進む。すると個室の入口と思われる扉が見えてくる。その横にノートとペンが置かれているのを確認し、前の部屋で書かなくても良かったなんて少し思ってしまったが今更そんなことを考えたところで後の祭り。それならばと取り敢えず名前だけ書くことに。……ノートの前に立った瞬間にノートのすぐ横にある窓になにか横切る影が見えたのはきっと気のせいだろう。
「こんな近くに有るんだったらさっき書かなくても良かったじゃない……。それになんでここでもヒロトシは書くのよ。さっきも書いてたじゃない!」
「えっと……俺はノートを見たら必ず名前は書くって決めてるから。ジンクス見たいな?」
「変なジンクスねぇ……。じゃあイヴはなんで書いてるのかしら?まさかヒロトシと同じなんて事ないわよね……?」
「?わたしはお兄さんが書いてるからまねしてるだけだよ?」
「ヒロトシ……。アンタのせいなのね……。」
「俺のせいとは人聞きの悪い。俺はあくまで自分のためにやっていただけで強制してる訳では無いんだから。だから誰のせいとかはないでしょ。」
「ぐぬぬ……。間違った事を言ってないだけにこれ以上強くつよく言えないわね……。」
そんなあんまりな言い方をするギャリーは放っておいて俺達はノートにここを通過した証を残していく。イヴちゃんを待っている間目の前の個室の扉が開くかどうか確認してみるがやはり開く訳もなく。イヴちゃんもすぐに書き終えてしまったのでとりあえずこの部屋の散策を続ける事に。
この部屋は何か起こる予感がする。そんな予感が拭えないままに俺は2人とともにこの部屋を巡る。その予感が当たっているのか否か、そんな事俺達に分かる訳もないまま脱出の為の歩みを止めることなく進んでいく。
母の今年の誕生日は軽度の脳梗塞の直後ということもありできることが少なかったので、来年は盛大に祝ってあげたいです。
皆様もご両親のいる方は大切にしてあげてください。いつ何が起こるかは分かりませんから。