では、どうぞ。
先程の幻想的な絵画から惜しむらくも離れた俺達は先へとその足を進めていく。途中に再びと言うべきか、およそ全身が入るような大きい鏡が壁にかかっていたがパッと見た感じ特に変わった事はなかった為特に何も気にしないままにそのままスルーをする。
少し進んだ所に扉が2つ、向き合っているというには少しズレた場所にある。そのうちの階段の方に戻る扉は特に何も無いのだが逆側の扉には何やら描かいてあり、何かを打ち込むパネルも付随している。絵画の方に注視をしてみるとなんだか見た事のあるような感じのする絵なのだが、この絵がどこに飾ってあってどういう名前なのかわすっかり覚えていない。
少しの間思い出せるかもと絵画の前でウンウンと悩んでいたのだがどうにも思い出すことは出来なかったので、とりあえず今は諦めてもうひとつの扉の方へと向かう。
もう1つの扉を開くとそこは4畳ほどの広さしかないとても小さな部屋となっていて、扉を入ったすぐ目の前には無個性が立っていてそのすぐ奥には扉がある。
「何よこの像……一丁前に通路なんか塞いじゃって。」
「ギャリー出番だよ!……さっきの迷路で疲れてる?お兄さんでも移動させられると思うけど任せちゃう?」
「お?疲れたんなら変わるけど?ギャリーくぅんどうするぅ?」
「いちいちイラつく言い方するわねっ!これくらいアタシ1人で大丈夫よ!ふんっ!」
ギャリーはそういうと1人で無個性を端へと押していく。しかしこう言う人型のものを移動させるのであれば押し引きで動かすよりも多少重くても持ち上げて動かした方が安定すると思うのだが……まぁ俺も煽ってしまった手前本人には言わないでおこう。また煽ってるなんて思われたくないし。
「ふぅ……よしっ、これでオーケー!これでアタシもまだまだ大丈夫だって分かってくれたかしら!?元気なんて有り余ってるんだから!」
「それはもう充分わかったからそんなに熱くならないでくれ。こっちまで疲れてくる。」
「むっきー!なんなのよその余裕な態度!だったら次はアンタが動かしなさいよね!」
「ハイハイ。わかったから落ち着けって。ドゥドゥ。」
「アタシは馬じゃないわよ!さっきから失礼しちゃう!」
「……お兄さんとギャリー楽しそうだね!わたしも言い合いしたい!」
イヴちゃんがそんな事を言い出すとは思わなかった俺達は今まで言い争いをしていたのも忘れてお互いを見やる。なんとも可愛らしいご尊顔を更に輝かせながら俺達と口喧嘩をしたいと言っているように聞こえて頭が混乱してしまう。
「あー……俺達に何か言いたい事があるって事?それならイヴちゃん、どうぞ。」
「うん!まずお兄さん!この美術館に入ってからずっと一緒に来てくれてありがとう!ギャリーも重たい物を動かしてくれたりわたし達を気遣ってくれてありがとう!」
「「ゔっ……!」」
イヴちゃんのその言葉に俺とギャリーはほぼ同時に心臓の辺りに手を当ててその場に膝を着く。これはなんというかこう、中々にくる物がある。それはギャリーも同じだった様でチラリと横目で顔を見てみるととてもじゃないがイヴちゃんに見せられない顔をしていて少し引いた。もしかしたら俺も同じような顔をしていると考えると少し冷静になれた。
「……あの、2人とも大丈夫?急にうずくまったからわたしびっくりしちゃったよ〜。」
「は、はは。俺は大丈夫だよ。ギャリーは大丈夫か?」
「何とかね……。あと少し褒められてたらアタシ堕ちてたわ……。」
「でもまだ言いたいことはあるんだけど……。言ってもいい?」
「勿論いいよ。ギャリーは気にせずに言っちゃって。」
俺がそう言うとギャリーはこちらを軽く睨んでくるがイヴちゃんの思っている事をぶちまける事のできる時間は作るべきだし、それが俺達の事なのであれば話を聞く義務が俺達にはあると思う。そう思って話を促すとイヴちゃんはこほんと咳払いをして眉間に皺を寄せながらこちらを見つめてくる。
「さっきのはありがとうって言いたかった事だけど次は怒ってる事!まずお兄さん!お兄さんは無茶をしすぎ!おかげでお兄さんが1人で行動する度にわたしはすごく心配なんだから!」
「あー……なんと言うかごめん。」
「次にギャリー!ギャリーはわたしを子供に見すぎ!いくらギャリーとすごく年が離れてるからといってわたしだってもうそんなに子供じゃないもん!」
「ごめんなさいね……。イヴに失礼だったわね。」
「最後に!2人とも喧嘩しすぎ!なんか少し目を離すと言い合ってる気がするもん!」
「いやあれはお互いにじゃれあいでやってると言いますか……いやなんでもありませんハイ。」
最後に関しては俺的にはそんなに言い争った記憶はないし険悪な雰囲気になった記憶もないが、反論しようとしたらイヴちゃんがこちらをじっと見つめてきたのでなんでだか言い返すことが出来なかった。
そんな怒ったイヴちゃんは言いたい事が言えてスッキリしたのか眉間のシワもすっかりと消えてその顔に微笑みが戻ってくる。
「じゃあごめんなさいと仲直りの握手しよ!ごめんなさい!」
「なんというか……ごめん。」
「あたしこそゴメンねぇ……。」
「はい!これで終わり!じゃあ探索しよ!」
イヴちゃんはそう言ってこの部屋の中を見渡し始める。なんというかとても“強い子”だなぁと再認識した所でギャリーがフフっと微笑む。それが気になった俺はイヴちゃんから目を離しギャリーの方へ向くと彼はすごく晴れやかな笑みを浮かべていた。
「どうした?すごくスッキリした顔じゃん。」
「いやね?あの子の事、アタシ達はまだちゃんと理解できてなかったのねって思っちゃってね。」
「確かに。俺なんてギャリーより長く一緒にいたのにこのザマだもんなぁ。」
「ホント、子供の成長って早いのね。アタシビックリしたわ。」
「俺達も成長しないと、だろ?」
「……それもそうね。お互いに頑張りましょ?」
「2人とも!こんなところに引っ張れそうな紐があるよ!」
イヴちゃんの強さを身に染みて実感した俺達はイヴちゃんの呼び掛けで探索に戻る。その際に1つ気になった事が頭の中に浮かんできた。
(ギャリーってそんな成長を感じる程長く一緒にいたか?……まぁ気にしなくてもいいか。)
この素朴な疑問は勿論口に出すことは無かった。
今日はコロちゃんのワクチンを打ちに行くために早めの更新です。正直注射はあまり好きじゃないですが頑張ってきます!