では、どうぞ。
まず本棚を調べるにあたって俺が左側から、イヴちゃんとギャリーが右側から調べる事になった。向こうが和気藹々と何かないか調べている中、俺も何かめぼしいものはないかと確認していると1番左側の本棚に何やらピンク色の背表紙がほかの地味な色に囲まれていることも相まってなんだかすごく目立っていた。
「……なんだコレ。『恋文庫』?……あぁ〜これはダメだわ。」
「ヒロトシ?そんな派手な本を持ったまま固まってどうしたのよ。」
「ん?いや……ね?」
「何よその煮え切らない反応。んー……ここから見える感じ表紙に絵とかは描いてないのね。タイトルはなんて名前?」
「『恋文庫』って名前だけども……これはイヴちゃんには見せられないわ。これ見せたら社会的に死ねるわ。」
「えー!恋って文字が入ってるんだし恋愛ものじゃないの〜!」
「……わかった。じゃあギャリーも読んでみて許可が降りたらイヴちゃんにも見せてあげる。」
そう言って俺はギャリーの元へ行ってその“官能小説”を問題の文章がすぐに見れるよう開いたまま、しかしイヴちゃんに見られないように渡す。
本を受け取ったギャリーは真剣な表情で読み進めていくが、時間が経つにつれて顔が赤くなり体が震え出す。こいつ大丈夫か?なんて思っていたら勢いよく本を閉じて俺に押付け始める。
「こんなのイヴに見せられる訳ないでしょ!?アンタなんてもの読んでるのよ!」
「いやだってこんな本だなんて全く知らなかったし。でもこれ他の本と比べても異質だったから何かいい情報とか載ってないかなーって開いてみたらこんな文章だもんで俺もびっくりしてたんだからさ。」
「ね〜!どんな本なの〜!わたしにも教えて〜!」
「イヴちゃんにはまだ早いかなぁ。あと9年くらい経たないとね。」
「そうよ!イヴはこんな本なんて呼んじゃいけません!」
「2人のけちー!いじわるー!」
そんなこんなでわちゃわちゃした後は再び何か気になる本がないか探す作業に戻る。しかし左側の本棚にはこれ以上の異質なものはなく、なにか気になるようなタイトルのものもなかった。
右側の本棚も例外ではなかったらしく、ギャリーが渋い顔をしながら真ん中の絵画の前に集合する。
「こっちは特になかったわ。そっちはあの後何かあった?」
「こっちも特になし。って事は……。」
「あとはこの絵だけだね……。」
そう言って俺達はほぼ同時に壁にかけてある大きい絵画を見上げるように見る。その絵画のタイトルは『決別』と書いてあり、赤い地に黒く太い線が真ん中あたりから裂かれているように入っているだけの絵だ。
「なんか嫌な絵ね……。」
「わたしちょっと怖いかも……。」
「もし怖さに耐えられないようなら俺かギャリーの服でも握っててもいいよ。」
「ううん……大丈夫。」
イヴちゃんがそう言い終わるが早いか、部屋がいきなり暗くなり辺りが何も見えなくなる。
「わっ!なに、停電!?ちょ、暗くて何も見えないじゃない……!イ、イヴ!いる!?」
「うん、いるよ……。」
「そう、なら良いわ……。ちゃんとそこにいてよ?なんならさっきヒロトシが言ってたようにアタシの上着を掴んでもいいわよ。」
「わかった……。」
「しかし困ったな……。あ、そうだ携帯あんじゃん。2人ともちょっと明かり確保するから待ってて。」
「アンタそんなものまで持ってるのね……。一体何しに美術館に来たのよ。」
何か色々と勘違いされているような気がしなくもないが説明するのも面倒なので曖昧に返事を返して、俺はこれならあの時電源落とさなければよかったなぁなんて後悔を少しだけしながら切っていたスマホの電源を再び入れ直す。
スマホを立ち上げる途中でいきなり画面が明るくなる時に部屋の様子が見えたが、特に変わった様子は見られなかった。その後無事立ち上げ終わったのを確認した俺はちょちょいと操作をしてカメラ下のライトを付ける。
「……え?な、なによコレ……!」
「……びっくりしすぎて声出なかったわ。なんじゃこりゃ。」
「お兄さん……ギャリー……。わたし、怖い……。」
「ハァ……ホントキッツイわ……精神的に。」
「さっさとこの部屋を出るか。ここにいてもいい事は無さそうだ。」
俺達はその後一言も会話を交わす事なくこのクレヨンのような材質で助けを求める言葉を壁いっぱいに書かれた部屋を後にする。
部屋から出ると何やらこの廊下も雰囲気が先程よりもなんだか気持ち悪いものへと変わっている。俺はなんとなしに振り返って後ろの壁を見てみるとそこには美術館の注意事項がでかでかと書かれていて、その文章はよく見ると床にまで続いていた。
「なんじゃこりゃ。」
「ここにもなにか書かれてるわね。なんかもう文字が出てきた程度なら驚かなくなってきたわ……。」
「あ、わかる。俺もこれくらいならなんともなくなったわ。やっぱ人間って慣れる生き物なんだなってこういう事で実感するな。」
「えー。もう驚かないの?なんかつまんないなぁ。」
「いやねイヴちゃん。俺達だって好き好んで驚いてる訳じゃないからね?それを楽しみにされても困るなぁ。」
「まぁそんな事はさておいて1回来た道を戻ってみましょ?なにか変わってるかもしれないわよ。」
イヴちゃんはあまり納得はしていなさそうだったけどここで立ち止まっている事に何か思う事もあったのか、反論もなく俺達の後ろからひょこひょこと着いてくる。その姿になんとも言えない気持ちを覚えつつとりあえずノートの方へと戻る為に俺達は進み始めた。
台風が九州に上陸したという事でそちらの方に住んでいる知り合いに久々に連絡をしました。こういう機会でしか連絡できない自分の不甲斐なさに情けなくなりますね。
これからはお友達を大切にしようと思いました。