レイナ「ねぇ悠人。」
悠人「ん?
何だよ?」
レイナ「貴方以外と料理が上手よね。」
悠人「はぁ?
今更かよ。
お前がここに来て七日だぞ?
今気付いたのか?」
食事が終わった後レイナが悠人を珍しく褒めてきた。
レイナ「そうじゃなくて貴方ぐらいの歳の男ってそんなに料理をするイメージが無かったから不思議に思ったのよ。」
悠人「そんなん人それぞれだろ。
俺の大学の奴等も料理する奴としない奴の二パターンがいるぞ。」
レイナ「貴方は料理するパターンなのね。」
悠人「うちはこの間まで叔父さんと二人暮らししてたからな。
叔父さんは仕事してたから家事する暇がなくて代わりに俺が家事全般をしてたんだよ。」
レイナ「叔父さん………?
ついこの間まで………?」
悠人「…叔父さんはつい先月に死んだんだよ。
病気でな。
だから俺は今この叔父さんが残してくれた家で大学に通いながら一人暮らししてたんだ。」
レイナ「そうだったの………。
どうして叔父さんと暮らしてたの?
御両親は?」
悠人「両親は………母さんの方は俺が小さい時にはもういなかった。
多分何かの病気だったんだと思う。
親父の方は………よく分からん。」
レイナ「よく分からない?」
悠人「俺にも何が何だかさっぱりなんだよ。
俺が小さい頃急に俺を叔父さんのところに預けてそれっきりだ。
親父とはそれっきりでもう十年も会ってねぇよ。」
レイナ「ふぅん………。」
悠人「………お前の方はどうなんだよ?
お前の両親はどこにいるんだ?」
自分の両親の話になると周りの人達の空気がしんみりしだすことが分かっていた悠人はさりげなく自分の両親の話題からレイナの両親の話を振った。自分の両親の話から話題を反らす意図があったが実際レイナの両親の話にも興味があった。
レイナ「死んだわよ。
二人ともね。」
悠人は一瞬失敗したかと思った。悠人自身の両親の話から話題を変えることには成功したが訊き返してはいけない話だったようだ。
だがレイナは話を続けた。
レイナ「父スパイザーはある組織の幹部だった。
父が所属していた組織はある計画の元に作られた組織で父はその組織に反抗したために殺害されたの。
母も一緒にね。」
悠人「お前の親父が幹部………?
………お前の親父は組織の幹部だったってのに組織に逆らうようなことをしたってのか?
確かお前の親父ってどっかの国の王位継承権がある奴とか言ってなかったか?
そんな人が殺されたのか?」
レイナ「父自身その組織に勝手に幹部に組み込まれていたそうよ。
その組織は“絶対的ウルゴス主義”で父もウルゴスの王族だったことから幹部の地位を割り当てられたと言ってたわ。」
悠人「そういや確かそんな名前の国の王族とか言ってたな。
ウルゴスだっけか?
正直そんな国がどこにあるんだよって話だがお前の親父さんはどうしてその組織に反抗しようと思ったんだ?」
レイナ「組織の結成理念が父が賛同できるようなものではなかったからよ。
それほどまでに奴等の計画は恐ろしいことなの。」
悠人「恐ろしいこと………?」
レイナ「………この宇宙は百三十八億年前に誕生したとされてるわよね。
この地球………太陽系は四十六億年前に今の形になったとも………。
この宇宙の始まりは百三十八億年前に起こったとされる
………実はこのビッグバンの爆発が発生する前に宇宙には
悠人「……ん………?」
悠人はレイナの父の話をしていたつもりだったが何故かレイナは急に宇宙の話をし始める。しかもビッグバンだの言い出し悠人は困惑する。
レイナ「精霊達はその星を“最古の大惑星”と呼んでいるようだけど父が言うにはその星の名はアインスというらしいわ。
父はそのアインスのウルゴスの国の生まれで「ちょっと待て」………何?」
悠人にとってレイナの話は完全に異世界のような話で話半分程度に聞いていたのだがたった今レイナから聞き捨てならない話が飛び出た。
悠人「その最古の大惑星だかアインスだかはお前の話からすると
レイナ「そうだけどそれが何か?」
悠人「………お前の親父一体いくつだったんだよ………?
エルフってそんなに長命なのか?
流石にそんなには生きては「この星の時間で換算すると百三十八億九千五百七十二万六千百四十一歳ね。」えぇ………。」
まさか父親の年を訊いてその返事が返ってくるとは思わなかった。レイナの父親の年齢は百三十八億九千五百七十二万六千百七十二万六千百四十一歳のようだ。
悠人「なんかうさん臭いな………。
そんなに長生き出来る奴なんているのか?
いくらなんでも長命過ぎるだろ。」
レイナ「その不可能を可能にするのがヴェノムと精霊よ。」
悠人「ヴェノムと精霊が………?」
レイナ「そう。
ヴェノムに感染した生物はヴェノムウイルスと適合しなかった場合前にも言った通り他の生物の霊力、または
ヴェノムは他の生物からそれらを吸い取ることで少しの間活動出来る時間を伸ばすことが出来るわ。
もしこの供給が長時間途絶えたらその時は自己消滅を起こす。
だからヴェノムは他の生き物を襲うの
生きている限り人の何倍もの早さで霊力を使いきるからね。
精霊は膨大な霊力の塊で人の数万倍以上はある存在よ。
霊力の塊ではあるけど普通の人には視認することは出来ない存在とされている。
けど実在はしていてもしこれが人の中にでも入り込んだら
悠人「難しい話だな………。
ヴェノムだの精霊だの………………、
………………ん?
今精霊が人の中に入り込んだらっつったか?」
レイナ「そうどけど?」
悠人「じゃあ何でお前は生きてるんだよ。
お前の話が事実ならお前の中にウンディーネって精霊が入ってるんだろ?
おかしいじゃないか。」
レイナの話が本当なら精霊をその身に宿しているレイナが今こうして生きていることに矛盾が生じてくる。悠人はレイナの話の続きを待っているとレイナは………、
レイナ「だからヴェノムと精霊の二つの力を使うのよ。
ヴェノムはウルゴスの科学者によって作られたの。
特定の寿命を持たない精霊は病気にもならない不老不死で寿命ある生物達にとっては精霊こそ目指すべき目標だった。
ウルゴスの王………つまりは私のお祖父様になるのだけどその人が不老不死になる方法を探すよう父や伯父達に命令したの。
それで試作品として作られたのが人工精霊ヴェノムよ。
ヴェノムは猛烈に霊力を失っていくけど感染した人の霊力を入れるための器はその際何百倍にも膨れ上がる。
霊力が底を尽きない限りは死なないヴェノムにとって精霊はまさに理想の供給源。
私がウンディーネを体に入れてても死なないのは同時に
私には精霊と人工精霊の二つの力がある。」
淡々とレイナは自分がどういう存在なのかを悠人に説明する。
悠人「おっ、お前もヴェノムに感染してたのか………!?」
レイナ「えぇそうよ。
あの生物保管庫にいた時点で気付かなかったの?」
悠人「だっ、だってお前普通に俺に接してきたし………他の奴等とは違ったし………。」
レイナ「まぁそうね。
私の場合はウンディーネのおかげでヴェノムには感染しているけど他の人に移る心配が無いわ。
ウンディーネの力がヴェノムの力を上回ってるから精霊としての血の方が勝ってるの。
私が怪我をしても直ぐ治ったでしょ?
あれはヴェノムの力で治してたの。」
悠人「そういやお前あの狼男にやられた時に直ぐ復活してたもんな………。
だからか………。」
てっきり悠人はレイナが狼男との力の差がありすぎて殴り飛ばされはしたが負傷自体してなかったものだと思っていた。しかし実際は負傷していてそれをヴェノムの力で治したとのこと。
レイナ「………そういう訳で組織の連中は今私に施されている精霊と人工精霊の力を用いて百三十八億年もの年月を生き長らえてきたの。
レイナは無表情でどこか遠くを見詰めていた。
悠人「(時々だがこいつ………凄く寂しそうな顔するよな………。
親父がその組織に殺されたからか………。
こいつにとってはその組織ってのが親父の仇になるんだもんな………。
………こいつまさか一人でその組織に立ち向かう気なんじゃ………。)」
レイナの父親が組織に反抗して殺されたのであればレイナはきっと組織の者達を恨んでいることだろう。自身でさえ捕まって実験台にされたのである。敵対心を抱かない筈がない。
悠人「………ちなみにお前も実際のところ親父みたいに凄く歳がいってるのか………?」
レイナが真面目な話をしている中で申し訳ないとは思った悠人だったがどうしてもそのことが気になりこれからもっと真剣な話を聞く上でも先にこの疑問を解消しておきたかった。
レイナ「
悠人「………へ?」
レイナ「だから私の年齢の話でしょ?
二十歳よ。」
悠人「親父があんな百三十八億何千万歳なのにか?」
レイナ「勘違いしてるみたいだけど私が生まれたのはこの地球よ。
私はこの星の生まれなの。
アインスのウルゴスで生まれたのは父だけで私と母はこの地球生まれの地球育ちよ。」
悠人「…何だよ………。
すっげぇ婆さんなのかと思ったら俺と同い年かよ。
期待させやがって。」
レイナ「何?
私がそんなに高齢者に見えるの?」
悠人「けどお前の親父達ってさっき言ってた方法で歳をとらなかったんだろ?
そんでお前もウンディーネとヴェノムの力があるってんならそう思っても仕方ねぇじゃねぇか。」
レイナ「失礼ね。
私だって捕まったのはつい十年前でまだそんなに歳をとったつもりはないわ。」
悠人「お前が物凄く年上だったんなら少しは敬ってやってもいいかなって思ったんだが同い年かぁ………。
別に話し方を改める必要なんてないよな?」
レイナ「別にそれは構わないけど少しは私に敬意を払いなさいよね?
貴方は私のおかげで命があるんだから。」
悠人「へいへいそうさせて貰いますよ御主人様。」
レイナ「もう………。」
意外にも悠人とレイナの年は近いどころか同じだった。彼女は十年前に両親を殺されそこから十年間あの保泉市で監禁されていたようだ。レイナ自身あの保泉市にあった研究施設をいつかは脱出するつもりだったらしいがそれは予定ではウンディーネの力が完全に定着しきってからにするつもりだったらしい。
十年前………。
それは二人にとってある種の分岐点でもあった。
全く接点が無さそうなこの二人が実は十年前に既に保泉市で