某所 数日前
薄暗い部屋の中で男が一人机に向かい何かの資料を熱心に作製していた。
ピルルルルル…!
男「………。」
ガチャ。
そんな男のいる部屋に電話の音が鳴り響く。気だるげに男は電話を取り応答する。
男「………私だ。
何のようだ?」
『やぁ♪
久し振りだね元気にしていたかい?』
電話口から軽薄そうな声の男の声がする。その声を聞いた男は不快そうに顔をしかめる。
男「………元気だ。
それではな………。」
『ちょっと~?
まだ用件も何も話してないのに電話を切ろうとしてないかな~?
こっちは用があるからお前に電話してあげたんだよ~?』
男「…よく分かったな。
私が電話を切ろうとしていたことを。」
『何年お前と一緒に過ごしてきたと思ってるんだい?
これでもお前の
男「………腹立たしい限りだ。
貴様なぞと血の繋がりがあることなど私にとっては最大の汚点でしかない。」
『そう嫌わないでほしいかな~?
お兄ちゃん悲しくて泣いちゃうぞ~?』
男「………それで用件とやらは何だ?
さっさと話せ。」
中々用件を話さない電話口の相手に苛立ちを隠さずに男は用件を聞き出そうとする。
『もう少しだけ久々の兄弟の親睦を確かめ会いたいところだったけど君も忙しそうだね~?
何せカタスティアからもうすぐ探しに探しまわったた“星砕き”が届くんだからねぇ~。
それと一緒に星砕きを入れるための素体も手に入ったんだ。
僕達の長年の夢が漸く叶うんだよ。
嬉しいよねぇ?』
男「………切るぞ。」
相手の勿体振った態度に我慢ならなくなった男は受話器をそっと置こうとする。しかしその前に………、
『
置きかけた受話器の向こうからそんな報告が聞こえて男は受話器を置く手を止め再び受話器を耳元へと運ぶ。
男「………ウンディーネが………?」
『あぁ、
どうやら裏切者のスパイザーの娘が研究所を飛び出したらしいよ。
どうする?
取り返しに行こうかい?』
男「………」
男は少し考える素振りをするが直ぐに受話器の相手にこう言った。
男「………
星砕きが手に入った以上はもうその他の精霊達には用は無い。
私にとっては星砕きでない精霊など
男は興味が無いといった感じでウンディーネを不要と切り捨てる。
『いいのかい?
星砕きの次に希少な精霊なんだよ?
この宇宙全土を探しても六体しか見付からないアインスの大精霊なのに。』
男「希少だろうがなんだろうが
眷属という時点で水の力しか操れないのでは星砕き以下としか評価できん。」
『………そっかぁ。
なら別に要らないよねぇ?』
男「回収したいのであれば好きにしろ。
私は星砕きを迎える準備に努める。
………欲しいのであればくれてやる。」
『僕も別に要らないかなぁ?
僕には“
………うん分かったよ。
ウンディーネは放置することにしよう。
それじゃあ部下達にはこう伝えるね?
日本地区にいる精霊ウンディーネはレイナ=カリオーンが所持している。
大精霊の力を欲する者がいれば各自でレイナ=カリオーンを見付け出し彼女からウンディーネを強奪しろ、ってね。』
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東京工業大学 木曜日 十日目
会長「昨日のニュースはちゃんと見ていたかね悠人君~!
フェザード社がセライオスで火星人の痕跡を見つけたそうだよ~!」
悠人「ハイハイ、
見ましたよ。
ちょうど家に帰ったらそのニュース流れてましたし今日の朝もずっとそのニュースで持ちきりでしたからね………。」
今日も今日とて悠人は大学に通学し構内で会長に捕まり部室に連行されて無駄話に付き合う羽目にあっている。
会長「僕も見たんだがねぇ!
絶滅してしまってはいたようだが宇宙人はいたんだよ!
それなら他にも未確認生命体であるイエティやネッシー、それからツチノコやチュパカブラなんかもいる筈さ!
間違いない!」
悠人「どうして火星人がいる=他のUMA達がいるってことに結び付くんですかねぇ。
そんなの何か普通にいる生き物を見間違えたりしたかあるいはどこぞの妄想家の妄想でしょ?
地球に七十億人もいるってのに未だに目撃情報が不確かなのはおかしいです。
そんな生物なんて存在しないんですよ。」
会長「何を言うんだ悠人君~!
未確認生物達は必ずこの地球のどこかにいるんだよ~!
彼等がいると信じられないのは僕や君がまだ彼等に出逢ってないからさ!
君も一目彼等の姿を見たら彼等が存在ているということを信じる筈だよ?
さぁ!
今すぐ彼等に会いに行こうじゃないか!
彼等もきっと僕達のことを待ってるさ!」
悠人「断固御断りします!
そういって前にそこら辺の山に登って遭難しかけたじゃないですか!
会長の考えることは無謀なことが多すぎるんですよ!
俺午後も講義があるんで行くなら会長一人で行ってきて下さい!」
会長「いいのかね~?
私一人で行っても~?
せっかくのUMA達と会えるかもしれない機会をふいにすると言うのかね~?」
悠人「いいからとっとと一人で行ってこい!」
UMA研究会の部室に来る度に悠人は会長と不毛な話のやり取りを行うことになる。悠人自身無意味に疲れはするのだが講義のない暇な時間を潰すためにもこうして空いてる時間は部室に顔を出す。
美咲「まぁまぁ落ち着けって悠人。
会長が興奮するのも無理ないって。
日頃フェザード社が次々と新しいことに取り組んでいくじゃねぇか?
今回の火星人がいたっていう発見は今までいないとされてきた火星人の根拠を覆すものだったろ?
一つでもそういった事例が見つかると他にも出てきそうな気がしてくるじゃねぇか。」
悠人「………まぁ言いたいことは分かるが………。」
会長「流石美咲君だね~!
悠人君も見習いたまえ~!
男に生まれたからには共にロマンを追い掛けようじゃないか!
僕達もフェザード社と一緒になってまだ見ぬ未確認生物達を追い掛けて歴史に名を刻むんだよ~!」
悠人「一人で勝手に刻んどけばいいじゃないですか………。
俺を巻き込まないで下さいよ。」
これでよく大学の一般入学試験を首席で合格出来たなと悠人は感心する。この先輩を見ていると必ずしも学業がしっかりしているからといって常識的な人格者であるとは限らないのだと染々思う。
美咲「でもよ?
この地球上でもまだ学名すら付けられてない生き物は沢山いるんだぜ?
人が環境的に入り込めないジャングルの奥地とか海底とかにもまだまだ未確認な生物達が多く生息してるんだ。
火星人………がいたぐらいだからそんなのよりは会長が言うようなUMAとか探せば普通に見付かるとは思うぜ?
俺的にはホラー映画とかアクション映画が好きだから怪人の類いとかはいてもおかしくないと思う。
エルフとか吸血鬼とか妖精にフランケンシュタイン、アンデッド………。
昔の日本には忍者だっていたんだ。
その他にも多くいるって絶対。」
悠人「お前は映画の見すぎだ美咲。
吸血鬼も妖精もフランケンシュタインもアンデッドも忍者もいるわけねぇだろ。
会長のノリに一々合わせなくていいんだよ。
下らねぇ。」
さりげなくエルフに関してはごく最近ハーフエルフとかいう種族を目にしたので否定から外す悠人。ハーフエルフがいるのであれば見たことはないがエルフはいるのだろう。
美咲「………おっと。
そろそろ次の講義の時間だな。
悠人行こうぜ。」
悠人「おう。」
会長「待ちたまえ!
まだ話は終わってないぞ!」
悠人「すいません会長。
話は一旦講義が終わってからにしましょう。」
美咲「講義が終わったらまた部室に来るんで続きはその時に話しましょう。」
会長「むぁ………。
……仕方ないな。
では放課後必ず部室に集合するように!」
悠人・美咲「「うーす。」」
悠人と美咲は三限目の講義のある教室に向かう。いつまでも会長の話に付き合っているとまた講義に間に合わなくなってしまうからだ。
結局その日は悠人は三限目と四限目の講義を受けた後そのまま帰宅した。会長の待つ部室には顔を出さずに直帰しレイナのいる家まで帰ることにした。後日会長から簡単なお叱りを受けることになった………。