取り巻き一「よぉーし!
じゃあ先ず俺から行くぜ!」
佐藤の取り巻きの一人がリングへと上がる。手にグローブは付けてはいるが上半身服を脱がないところを見るとやはり真面目に試合をする気はないのだろう。
佐藤「何してんだよ。
お前も上がれよ。」
悠人「お前は何番目なんだよ?」
佐藤「俺か?
俺は最後だよ。」
悠人「最後?」
佐藤「お前とはこれまで何度もやりあってるからな。
最初から俺とじゃお前も面白味がねぇだろ?
ここはまだお前のことを知らねぇ奴等に先手を譲るぜ。」
悠人「………そうか。」
それだけ訊くと悠人はリングに上がった。リング袖にあるグローブも忘れずに装着する。
佐藤「………さて、
佐藤も藤沢も準備はいいな?
それじゃあ………、
試合開始だ!!」
カァンッ!!
試合開始のゴングが鳴らされた。先手を取ったのは………、
藤沢「オラァッ!!」
シュッ!………ガスッ!!
悠人「…!」
試合開始と同時に藤沢と呼ばれた取り巻きが悠人に飛び掛かり勢いよく
「おおっ!
ガードしやがったぜ!」
「今のを防ぐとはなぁ!!」
「ほらほら!
どんどん攻めろよ!」
リングの外にいる取り巻き達も今の藤沢の蹴りについて指摘したりはしなかった。試合が始まる前に佐藤から形式はボクシングだと聞かされていたが………、
悠人「…やるのはボクシングじゃなかったのか?
普通に蹴り入れてきたが反則じゃないのか?」
佐藤「あ?
あぁそういやルール説明お前にだけして藤沢にはしてなかったか。
てもまぁ初犯だから許してやれよ。
………おい藤沢。
これはボクシングでキックは無しだ。
使うのはパンチだけにしろとよ。」
藤沢「ん?
そうなのか?
俺はてっきりボクシングはボクシングでもキックボクシングかと思ったぜ。
ヘヘ悪かったな。
今度はもう蹴りは使わねぇよ。」
口では謝ってはいるが全く悪びれた様子のない藤沢。恐らくルールを分かっていた上でわざと蹴りを使ってきたのだろう。
悠人「(…まぁこいつらがまともにボクシングをするだなんて思ってねぇよ。
これはボクシングに見せ掛けたただの集団リンチだ。
こいつらはただリングの上で誰かにストレスをぶつけたいだけなんだ。
こんな下らん試合まともに相手する気にすらならん。
………こんなこと
……………………………………………………………………
悠人がリングに上がってから一時間が経過した。
藤沢「この………!
いい加減倒れろよ!」
シュッ!ガッ!
悠人「………」
「なっ、なぁ………佐藤………。
何であいつ
「もう
いくらなんでも頑丈過ぎるだろあいつの体………。」
「佐藤が言ってた通りあいつ
こんだけ殴っても蹴っても息一つ上がらねぇってどんなスタミナしてやがるんだ………。」
「確かにそれなりに体力のありそうなカモを連れてこいとは言ったがよぉ………。
こりゃ想像以上だわ。」
「つか段々こっちの手足が痛くなってきたぜ。
何て硬さだよあいつの体………。」
佐藤「クソッ!!」
佐藤と取り巻き達は異常な悠人のタフさに気味の悪さを感じ始めている。彼等の当初の予定では数ラウンドで悠人が限界を迎えてそこから悠人をいたぶりながら楽しむ、という手筈だったのだろう。
それが予想外に悠人が体力と持久力の高さを見せ付け佐藤達は悠人に畏れを抱き始めていた。六人がそれぞれ最初のラウンドこそふざけて飛び蹴りや大きく振りかぶったストレートなどのダイナミックなモーションの攻撃をしてきたが次の二週目のラウンドからは悠人の様子に違和感を感じて全力で向かってきた。………が、それでも悠人が倒れることはなくラウンドを重ねていくごとに消耗していっているのは佐藤達の方だった。
佐藤「………何でだよ………!
こっちは六人がかりだぞ!?
それがどうして俺達ばかりがこんな……!?」
悠人「(六人がかりなら俺を仕止められると思ったか?
………舐めんじゃねぇよ。
こちとら素人じゃねぇんだよ。
たかが数年不良やってる学生なんかにやられたりなんかするかっつーの。
お前等と違って俺は
テメェ等のテレフォンパンチなんざガードするフリして肘打ちと膝蹴りでカウンター食らわしてたんだよ。)」
悠人の家系は
では襲い来る相手にどう立ち向かえばいいのかと試行錯誤して編み出されたのが悠人が使う“
基本的に体練術は受けの武術で自ら攻撃行動を起こさない。相手が攻撃してきた時にのみ使用可能で瞬時に相手の攻撃してくる部位の急所を見切り攻撃を受けると同時にそこに人体でも硬いとされる肘や膝を的確に打ち込む。肉体が接触する際にダメージを負うのは必ずしも攻撃を受ける側ではない。ダメージを負わされるのは人体の接触した部分が柔らかい方だ。
悠人「(考えが甘いんだよ佐藤。
だからお前はこれまでも
俺がお前のことを警察に訴えなかったのはお前の親父がフェザード社の人間だからだけじゃない。
お前が俺に対して何の害にもならなかったからだ。
お前の力じゃ他の奴みたいに俺を屈伏させることは無理だぜ。)」