「何なんだよあいつ………。」
「何であれだけ打ち込まれて倒れねぇんだ………。」
「絶対おかしいぜ………。
あんなの人間じゃねぇ………。」
藤沢の相手をしていると外野から悠人の耳にそんな言葉が聞こえてきた。
悠人「(人間じゃねぇか………。
このくらいなら別に昔から出来てたけどな。
六人を交互に相手するってのは初めての試みだが叔父さんとはもっと長い時間組手をしてたからまだまだ余裕だぜ。
………にしても今日は調子がいいな………?
これだけ六人に打ち込まれてもそんなに手が痛んでこないしこいつらが弱すぎるからか………?)」
藤沢「オラアアアァッ!!!」
悠人「!」
一瞬考え事をしていたために悠人は藤沢の蹴りに反応が遅れてしまいそれでもガードしたが力加減を間違えてしまい今度は少し強めに藤沢の足を弾いてしまった。
すると………、
ガスッ!!バキィッ!!
藤沢「……!?
ぅ………ぎぃがああああああっ!!!?」
悠人「!?」
「「「「「!!?」」」」」
悠人が藤沢の足を十字受けで払うと藤沢が悲鳴をあげる。彼は悠人の腕が当たった直後悠人が払った方向へ大きく仰け反ってそのまま倒れ込んだ。
藤沢「あっ……!足が………!
俺の足があああッ!!?」
悠人「(何だ………?
そこまで痛がるか?
ちょっと強く打ち付けただけでそこまでは…………!?)」
足を押さえて悶える藤沢を見ると悠人が打ち付けた部分の足のヶ所がまるで間接がもう一つあるかのように曲がっていた。
藤沢の足は骨折していた。
「藤沢!!
おい藤沢ァッ!!?」
「野郎!
藤沢の足を……!!」
「テメェッ!!
よくも!!」
取り巻き達がリングに上がり藤沢に肩を貸して藤沢を連れていく。悠人はそれをじっと眺めていることしか出来なかった。
悠人「(………いやいくらなんでもそこまで強くは打ち付けてねぇよ?
全力で打ったなら軽く痛める程どの外傷を与えることはあってもそんなになることは………。
………何であいつの足があんな簡単に………?)」
ドクンッ………!!
悠人「……!?」
ダンッ!
悠人はその場で膝をつく。突然悠人は激しい胸の痛みに襲われた。
カラァンッ!!
「!
佐藤……!?」
「何する気だ!?」
佐藤「あいつ………!
もう我慢ならねぇ!!
昔からあいつはいつも俺のこと馬鹿にしたような目で見てきやがって………。
今日のこれもあいつは俺達のこと………!!」
佐藤は手に建築作業で使われる鉄パイプを持って悠人の方へと歩き出す。佐藤はその鉄パイプで悠人をなぶるつもりだった。悠人は膝をついたままじっとその場で動けずにいた。
悠人の前間で佐藤は鉄パイプを大きく頭上に掲げて………、
佐藤「前々からテメェのことは気に食わなかったんだ鈴木ぃ!!
陰キャのくせに調子乗りやがってぇっ!!
死ねぇぇぇッ!!!」
ブオオオンッ!!!
取り巻き達は佐藤が何をしようとしていたのか見ていたが佐藤が鉄パイプを構えて悠人の頭に振り落とそうとしているのに気付き慌てて佐藤を止めに入ろうと駆け出す。やはり不良とはいっても殺人を犯す度胸までは無かったようで佐藤を止めようとはするがそれよりも一歩早く悠人に鉄パイプが振り下ろされてしまう。
バシッ!!
佐藤「!!?」
佐藤の鉄パイプが悠人の頭に直撃することはなかった。頭部に当たる直前で悠人が右手で鉄パイプを掴んだからだ。更に悠人は………、
ベコンッ!!カラァンッ!!カラカラ………!
佐藤「!!!?
なっ………!?」
悠人が掴んでいた鉄パイプが耳障りな音を立ててひしゃげその後手の先の部分が床に転がる。あまりの握力に鉄パイプが耐えきれず悠人の手で両断されてしまったのだ。
悠人「………………
佐藤「………っ!?」
「「「「「!!?」」」」」
その場にいた佐藤達は固唾を呑んだ。
今彼等の目の前にいる男から尋常ならざる圧力を感じ取る。
電気も無く日中の日の光だけで薄く照らされるだけの暗いこの部屋の中で、
男が
佐藤達はその瞳の魔力にあてられその場から動けずにいた。
“蛇に睨まれた蛙”。
佐藤達には悠人が蛇に見えた。
自分達は餌で身動ぎ一つしようものなら一瞬で自分達の命はこの猛獣に刈り取られてしまうだろうとそんな心境が佐藤館の中で渦巻いていた。
悠人「ハァ………!ハァ………!
っく………!」
ダンッ!!
「「「「「「………ッッッッ!!?」」」」」」
静まり返る室内に悠人の地面を蹴る音が響いた。直後悠人の姿がその場から消失する。佐藤達六人は音がしてから十数秒硬直していたがいつまで経っても何も起こらないので室内を軽く見渡し悠人がいなくなっていることを確認する。
悠人は既にこの場を去っていた。
藤沢「………生きてるよな………?
俺達………。
ちゃんと生きてるんだよな?」
「………………なっ………何だったんだありゃ………。」
「どっかおかしいとは思ったがありゃ人間じゃねぇよ………。」
「目もあんな真っ赤な色してたし………
悠人がいないのを確認した取り巻き達五人はほっと一息ついた。極限に張りつめた空気に藤沢も折れてしまった足のことも忘れるほどだった。それほどまでに五人は悠人に恐怖していた。
「………こっ、これあいつがへし折った鉄パイプ………。」
「それ………!
あいつが握っただけで折れたように見えたがそんな簡単に折れるほどのもんなのか………?」
取り巻きの一人が床に転がる鉄パイプを拾い試しに力を入れて握ってみるが………、
「………!
………駄目だ………ビクともしねぇ。
凹ませるのも無理なくらい硬いぞこれ。
ほら。」
「………本当だ………。
こいつ多分車とかで押し潰すとかしない限り折れたりなんてしないぞ………?」
「それをあいつはあんなあっさり………。
………一体どんな指の力してたらこんなもんがぶっ壊せるっていうんだよ………。」
藤沢「………なぁ佐藤………。
………あいつ一体何なんだ………?
何であんな奴とお前が………………佐藤………?」
佐藤「………」
ブルブルブル………、
佐藤は見てしまった。
鉄パイプを振り下ろして悠人に掴まれた瞬間の悠人の顔を。
その顔はほんの一瞬だったが日本の昔話などに登場する
頭から角を生やし耳まで裂けた口から鋭い牙が覗き目は猫科の動物のような闇の中で妖しく光る………。
そんな人ならざる魔物が自分を真っ直ぐと見詰めていた。
真っ直ぐと佐藤を見据えてもの惜しそうに涎を垂らしながら今にもその