子「ねぇねぇお母さん。
今日の晩御飯何作るのぉ?」
母「あらあらこの子ったら今お昼ご飯食べてきたばっかりでしょ?
今から晩御飯の催促だなんて気が早いわね。」
子「だってお店の御飯よりもやっぱりお母さんの御料理の方が美味しいんだもん。」
母「あらそう?
嬉しいこと言ってくれるわねこの子は。」
平日の昼間人通りの多い街の中で何気無い親子の楽し気な会話が聞こえてくる。
そこへ………、
タタッ!!ビュオオオオオオオオッ!!
母「キャ……!?」
子「!」
突然二人の元に強風が吹き抜ける。母親はいきなりの風に驚き目に異物が入らないよう顔を背けながら目を瞑る。そして風が止んだの確認しゆっくりと目を開ける。
母「………凄い風だったわね………。
大丈夫だった?」
子「………」
母「………?
どうしたの?」
母親は子供に何ともなかったか訊くが子供は今しがた通り過ぎていった風の方向を見詰めて黙り混んでいた。
子「………お母さん………。」
母「何?
何かあったの?」
子「………今………、
怖い顔をしたお兄ちゃんが物凄い速さで走っていったね。」
悠人「ハァ………!ハァ………!」
悠人は街の中を猛スピードで走り抜けていた。悠人が目指しているのは当然レイナのいる自宅だ。
悠人「(早く………!
早く
悠人はヴェノムを発症していた。保泉市の時と同様の苦しみが悠人の体を襲っている。酷い熱と嘔吐感、激痛、倦怠感、
悠人「(………苦しい………死にそうだ………。
頭がおかしくなる………。
そこらにいる人達皆から
………これがヴェノムの症状なのか………。
こんなの我慢しながら家まで持つのか俺の自制心………。)」
気を抜けば悠人は次の瞬間には目に移った人々に襲い掛かるだろう。それほどまでに悠人は血肉に餓えていた。筋力が上昇しているのは悠人の体の中で変革が起こっているからだ。ヴェノムウイルスが悠人の体を全く別の生物の細胞へと組み替えようとしている。悠人の精神はそう長くは持ちそうになかった。
悠人「………レイナ………………ッ………レイナァ………早グ………お前ノ…………!!」
……………………………………………………………………
悠人宅
『ニャア………。』
『ペロペロ。』
『ィァアッ!』
レイナ「フフフ………可愛い………。」
レイナはネットを使って
ガチャ!!
PCの画面に釘付けになっていると玄関の方から扉の開く音が聞こえてくる。
レイナ「あら?
悠人もう帰ってきたのかしら?
まだ午後になったばかりで帰ってくる時間じゃない筈だけど…………。」
時計を見るとまだ昼の十三時を過ぎた辺りだった。いつもだったら悠人が帰ってくるのは十八時から十九時ぐらいなのでレイナは何故こんな時間に悠人が帰ってこられたのか疑問を感じた。
レイナ「(!
まっ、まずいわ!
今悠人が部屋に入ってきたら私が今まで猫の
悠人は私がフェザード社の情報を調べるならとこのPCの使い方を教えてくれたのにそれがずっと半日も猫のテレビに集中してただなんて思われたら………!
………早くこのPCを消さないと!
リモコンは………あった!
これで………!?どうしてあっちのテレビが付くの!?
私が消したいのはこっちの方なのに………!
ええぃ!
どうにか!どうにかこのPCの電源を切るには…………!
そうか!
直接
レイナはおもむろにPCが繋がっている配線を辿りコンセント部分のプラグを引き抜いた。するとPCの画面がプツリと消える。
レイナ「フゥ………。
これで一安心ね………。
………でも悠人中々上がって来ないわね?
何してるのかしら?」
レイナのいる居間から玄関までの距離はそこまで離れていない。玄関が開く音がしてから靴を脱いで居間に来るまで十秒とかからないだろう。それなのにレイナがPCを消そうとしてテレビのリモコンをいじりPCの電源を落とすまでの間で十秒以上経過しているというのに悠人が居間へとやって来る気配がない。耳を澄ませても足音一つすら聞こえず不審に思ったレイナは玄関まで様子を見に行くことにした。
レイナ「悠人?
何してるの?
早く上がってらっしゃ………悠人!?」
悠人「ぅぅ…………っ………。」
レイナが玄関に向かうとそこには苦しそうに胸を押さえながら倒れる悠人の姿があった………。