ポト………ポト………。
レイナが指先をナイフで切り悠人の口の中へと血を注ぐ。すると悠人の体から熱が少しずつ引いていく。どうにかレイナの精霊の血で悠人の中のヴェノムウイルスの進行を食い止めることが出来たようだ。
悠人「んくっ………はぁ………!
………はぁ…………………。
………………すぅ………。」
悠人は体の異状が収まったことで落ち着いたのか呼吸が安定しそのまま眠ってしまった。
レイナ「………どういうことかしら………?
昨日私の血を分け与えたばかりなのにどうしてこんなに早く発作が………?」
悠人の発作は定期的に起こる。レイナと血の契約を交わしてから悠人の発作は
それが今回の発作はピッチが早すぎた。昨日悠人に血を飲ませてからまだ二十四時間も経過していない。それにも関わらず悠人は僅か十五時間程度で再発症を起こした。レイナの血が完全に精霊と一体化していない不完全な血であったとしても最低二十四時間は持つ筈なのだ。
レイナ「(………こんなに早くに大学から帰ってきたのはウイルスが暴走したからだったのね………。
一体どうして………?
一体何があったのかしら………?
………それを訊くのは一先ずは悠人が目を覚ましてからにしようかしら。)」
レイナは悠人の肩を持って悠人を彼の寝室へと運ぼうとする。
レイナ「………!
結構………重いわね。
悠人こんな細身でどこにこんなに体重が………。」
ゴトッ!!
悠人を抱えようとすると悠人の体から何かが落ちてきた。
レイナ「………?
何かしらこれ………?」
悠人から落ちたものを手に取ってみるとその物体はそれなりの質量と重量感があった。
レイナ「………重いと感じたのはこれね。
悠人普段からこんなもの体に付けて生活していたのかしら?
………そこも含めて悠人が起きたら聞き出さないといけないわね。」
レイナはその後悠人を寝室まで運び寝かせた。悠人は結局その後数時間眠り続け起きる頃には大学の講義は全て終了していた後だった。
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悠人「………ん………んんん………?」
レイナ「おはよう。
気が付いたようね悠人。」
悠人「………レイナ………?
ここは………家?」
悠人が目を覚ますといつの間にか悠人は寝室のベッドに寝かされていた。電気も付けずに暗い部屋でレイナが声をかけてきたので目を覚ました瞬間にはここがどこだか一瞬分からなかった。
悠人「………今何時だ?」
レイナ「十九時よ。
いつも貴方が大学から帰ってきて御飯を作り終えて今頃はもう食べ終えてる時間。」
悠人「十九時ならまだ家に帰りついたあたりじゃないか?
それか飯を作ってる最中だろいつもは………。」
レイナ「そうだったかしら?
あんまり覚えてないわ。」
悠人「てきとうだなお前………。」
大学のその日の最後の講義が終わるのは十七時だ。そこから食材を買って家に帰りつくのに二時間はかかる。余程悠人が大学に行っている間の時間が退屈なのだろう。そう思って悠人は今朝レイナが退屈しないようにPCの使い方を教えようとしたのだがそこで悠人は
悠人「………………俺………あれから帰れたんだな………。
あそこから俺は自分で………。」
レイナ「私の血も飲ませたしその様子だと体の心配をする必要は無さそうね。
………それで何があったの?
詳しく話してちょうだい。
先ずは貴方の体の異変が起こった原因を追及することにしましょう。」
悠人「………そうだな。
実は今日………。」
悠人は今日の出来事とそうなるに至った佐藤のことと彼との関係性をレイナに話した。レイナは終始悠人の話に耳を傾けて真剣に話を聞いていた。
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悠人「………ってな感じで佐藤には日頃からよく絡まれてたんだよ。」
レイナ「それでその佐藤という男に人気の無い廃墟に連れていかれてそこでその佐藤の仲間五人とやりあったわけ………?
貴方よく今まで普通に生活してこれたわね。
そういうことがしょっちゅうあったんでしょ?」
悠人「いやいつもだったら佐藤一人だけだよ。
佐藤一人だけなら別にそんな大した相手じゃないし怪我とか大事とかにもならないし。
今回は特別仲間がいただけで」
レイナ「その佐藤って男はヤンキーみたいな男だったんでしょ?
悠人………貴方そんな男の相手なんて出来るの?」
悠人「ここに住んでた俺の叔父さんが武道家でね。
叔父さんに習ってた武術でいつもは撃退出来てたんだよ。」
レイナ「そうだったの?
人は見掛けによらないわね。
………そんなに何度も撃退されておきながら佐藤はよく貴方に喧嘩を吹っ掛けようと思ったわね。
後で一人になった時に貴方から復讐されることとか考えなかったのかしら?」
悠人「ん?
あぁ違う違う。
やられてたのは俺の方だよ。
毎回ボコボコになってんのは俺の方。」
レイナ「………よく意味が分からないのだけれど佐藤を撃退していたのは貴方なのよね?
それでボコボコになってたのは貴方ってどういうことかしら?」
武道を習っていたという悠人が佐藤を撃退していたというがそれでやられていたのは自分だと言う。レイナは悠人の言葉の意味が理解できなかった。
悠人「ちょっとした工夫があるんだけどそれは説明するのが難しいからこの場では無しな。
要するに俺がうたれ強くて佐藤が俺を殴り疲れて追い返してるってことだよ。」
レイナ「ふぅん………?
そう………。」
レイナは納得はいってはいないが無理に聞き出そうとはしてこなかった。悠人の様子から悠人が自分にその工夫の部分を話す気がないことを察したのだろう。
レイナ「………それで悠人はその佐藤を含めた六人とボクシングの試合?………をしたのよね?
今回貴方の発作が早まった原因はきっとそれね。」
悠人「ボクシングがか………?」
レイナ「えぇ、
貴方うたれ強さに自信があるんでしょう?
ってことは貴方ずっとその六人を相手に戦ってたってことよね?
………ヴェノムウイルスに感染するとね。
腕の力や足の力が向上するの。
他にも新陳代謝が異常に活性化して怪我をしたりなんかしても直ぐに修復してしまうわ。
貴方の発作が早まったのは貴方が六人に殴られたり蹴られたりしたことでヴェノムウイルスが刺激されたせいよ。
そのせいでいつもの発作が大分早くに訪れてしまった。
あまり過度な運動はしない方がいいわ。
その分貴方の中の血流が活性化して発作のペースが早まるだろうから。」
悠人「………そういうことだったのか………。」
普段は普通に大学に通っているだけなので今までは発作が昼間に起きるようなことはなかった。しかし今回は佐藤達のせいで全身を酷使するような激しい運動をすることになってしまった。
レイナ「いい?
悠人。
これからは私が近くにいないところで過激な運動は控えなさい。
じゃないと今度は本当にヴェノムに侵食されきって貴方死ぬわよ。」
悠人「………あぁ、
そうすることにするよ。
佐藤達に絡まれてももう相手しないことにする。」
これ以後悠人は大学では今まで以上に慎重に過ごさなければならなくなってしまった………。