東京工業大学 木曜日 十七日目
美咲「なぁ悠人。
お前昨日何で講義出てなかったんだ?」
大学に来て美咲に会い開口一番にそんな質問をされる。
美咲「悠人大学来てただろ?
それなのに何で講義サボったんだよ。
何かあったのか?」
悠人「あぁ………偶々昨日は体調悪くてな。
大学に来たんだけどやっぱ帰ることにしたんだ。」
美咲「そうだったのか?
そんなふうには見えなかったけどな………。」
悠人「一昨日に食った食材の残りが痛んでたみたいで腹痛だったんだよ。
だから昨日は大学に来てそれから病院に直行したんだ。
それで病院に行ったら食中りだって言われてな。
昨日は一日家で安静にしとけって言われたからそのまま帰ったんだ。」
美咲「食中り?
お前が?
珍しいこともあるもんだな。
悠人は叔父さんがいた頃は結構食事に気を付けてたじゃないか。
叔父さんの容態が良くないからって健康に気を使ったメニューばかり作ってたのにそのお前が痛んだもんで飯作ったのか?」
悠人「…まぁ叔父さんがいなくなって気が緩んでたのかもな。
配慮しないといけない相手がいないとどうにも飯作る気力が薄れてな。
それで手を抜いちまった。」
実際は腹痛を催したのではなく佐藤に出会って大学の外に連れていかれただけなのだが美咲はそのことは知らない。食事の件も叔父さんが亡くなってからの一ヶ月はそのようになってはいたが今はレイナがいるために手を抜くということはない。現実問題悠人には一つだけ
美咲「そういやよ?
前に食道で佐藤が何人か他の奴等と絡んできたことあったろ?」
悠人「!
………あぁ。」
美咲「なんかよ?
お前が休んでた昨日に
悠人「事件………?」
いきなり悠人が懸念していた事項が美咲の口から発せられる。悠人は興味が無い、無関係な体を装って美咲の話を聞く。
美咲「大学から少し離れた場所に数年前に潰れたデパートがあるんだがよ?
何かそこで乱闘騒ぎでも起こしたみたいでな。
連中の一人がそこで足の骨を折る重傷を負う事件にまで発展したらしいぞ。
一体どんなことしてたらそんなことにまでなるんだか。」
悠人「………」
足の骨折と聞き悠人はその骨折した人物に心当たりがあった。美咲が言う足を折ったというのはあの時現場にいた藤沢のことだろう。なにせ藤沢の足の骨を折ったのは悠人自身なので知らない訳がない。悠人はそこから先の話に耳を傾ける。
美咲「なんでも連中どうしてそうなったのかを病院とかで話したようなんだがそれがどうにも病院側が要領を得ないらしくてな。
暴力沙汰でそうなったなら病院側も自分達の管轄じゃないって警察に連絡したんだよ。
そしたら佐藤達
信じられるか?
警察も佐藤達がそんな馬鹿げたこと言い出すもんだから病院側に頼んで全員の血液検査とかやったんだってよ。
そしたら六人の内の二人から覚醒剤反応が出たとかでその場でそいつら六人とも取り押さえ食らったとよ。
良かったな。
これで暫くは佐藤の顔を見なくてすむぜ悠人。」
悠人「そうか………。
そりゃ佐藤達もドジを踏んだな。」
美咲「お前が丁度腹下してる時で本当に良かったな。
なんかその佐藤達が鬼が出たとか言ってたデパートで複数の血痕が見付かったとかで佐藤達あそこを溜まり場にしてそこらの学生に暴力を奮ってたってのが捜査で分かったんだ。
こりゃ長いこと塀の中から出てこれねぇなあいつら。」
悠人「………」
美咲の話を聞き悠人は心底安堵する。警察沙汰になったと聞いた瞬間冷や汗をかいたが佐藤達が根っからの外道だったことで警察の捜査も佐藤達を被害者ではなく不特定多数の人間に暴力事件を起こしていた加害者として取り扱ったようだ。それも薬物に手を出している者が紛れていたことから佐藤達の供述は全て妄言であると判断されたのであれば悠人の名がそこから出たとしても被害者の一人として扱われるだろう。後日事実確認のために警察が自宅を訪ねてくるかもしれないが佐藤達の日頃の目に余る行為は大学でも有名だ。悠人が佐藤達の言う化け物だとは誰も思うまい。
悠人「………ちなみにその情報誰から聞いたんだ?」
美咲「佐藤達のか?
朝寮に警察が来て佐藤の部屋を調べに来たときにそんな
話が聞こえてきたんだよ。
寮長も佐藤達には手を焼いていたとか警察に大声で話してたもんだから結構あっちこっちで噂になってるぜ?
多分後で会長もこの話のこと言ってくるだろうから覚悟しとけよ?
佐藤達のことはともかく会長鬼とか吸血鬼とかオカルト関係も守備範囲だからな。」
悠人「………そうだな。
そうすることにしておくよ。」
それから美咲の言った通り会長と出くわしてしまい部室で散々佐藤達の事件のことを語られた。会長だけでなく高橋と山本も知っていたことからこのことは大学生全員が知る事件となっていた。