悠人「ハァ~………。」
山本「どうしたんだい?
御疲れの御様子だね?」
悠人「…美咲の奴が今日は高橋とのことで変に絡んでくるんですよ。
誤解だって言ってるのに。」
山本「あぁなんかアンタが高橋ちゃんといい雰囲気だとかそんなこと言ってたね。
なんでも昨日の休日二人でどこか遊びに行ってたとか。」
悠人「違いますよ。
俺が池袋の方に用事があって昨日行ってたんですけどそこで偶々高橋に会っただけです。」
山本「そういや高橋ちゃんの家ってあの辺だっけ?
…でも池袋か。
あそこって昨日なんかあったところじゃないの?
なんかテレビでそんなこと言ってたし。」
悠人「爆弾騒ぎのことですよね。
一応先に言っておきますけど俺その時間帯は駅から離れてたんで何も知りませんよ。
高橋も駅には行ってないようですし。」
山本「なぁんだ。
つまんないの。」
二限目の講義が終わって昼休みになったが美咲と一緒にいると高橋とのことをまたとやかく言われそうだったので悠人は美咲と別れて一人部室に来ていた。悠人が部室に来たときには既に山本が中で昼食を取っていたので同席する。
山本「…それで鈴木君。
実際のところ君は高橋ちゃんのことどう思ってるの?」
悠人「どうって………何のことですか?」
山本「高橋ちゃんが君から見てどういうふうに映ってるのかなぁってこと。
可愛いとかあるでしょ?
あの子結構同期の連中に人気なんだよ?
よくアタシに紹介してくれ―って頼んでくる奴とかいるくらいなんだから。
………全部断ってるけどね。」
悠人「…そんなこと言われても………。
………俺には無理矢理美咲とくっ付けようとしてくる変な後輩としか………。」
あれで変な趣味が無ければ普通に可愛い後輩の女子という感想を溢していたことだろう。だが悠人自身彼女が入学してきてから周りからの目が“UMA研究会に所属する奇特な人物”から“UMA研究会に所属する男食家のホモ”という認識で普及し出したような気がする。正直言って高橋が悠人のことを周りの人間にホモだと宣伝しているような疑いが悠人の中にはあった。昨日のフェザーズでのこともあってその疑念はより核心に迫ってきている。悠人の中で高橋はある意味要注意人物として個人的なブラックリストの上位にランクインしている。
山本「もし付き合えるなら付き合いたいとか思ったりしないの?」
悠人「俺と高橋がですか?
それはないでしょう………。
高橋が工業に進学した理由って男子の割合が多いから所謂
あいつは男同士のそういったシーンが見たいだけなんですよ。」
山本「まぁ………あの子もここに入ってきた時そんなこと言ってたね。
それって
悠人「え?
高校ですか………?
………いえ………それは知りませんけどどうしてあいつの高校の時のことを俺に訊くんですか?」
悠人が高橋と知り合ったのは大学に入学してからである。悠人が通うこの東京工業大学は全国から人が集まってくるため同じ高校から進学してくる学生はそういない。会長もこの山本も以前に出身校を訊いた時は悠人が名前だけしか分からないような高校から進学してきたらしい。その例に漏れず高橋もどこか悠人も知らないような高校から進学したのだと思っていたが………、
山本「あれ?
高橋ちゃんから何も訊いてないの?
鈴木君に保斗橋君、高橋ちゃんの三人って………、
同じ
…………………………………………………………
悠人は山本と別れて一人で大学の敷地内を歩いていた。
悠人「(………高橋って高校の時から後輩だったんだな………。
てっきりこの大学が初対面かと思ったがもしかしたら北沢高で知らない内に互いにすれ違ってたかもしれんな。)」
悠人は先程山本によって知らされた事実を反芻する。現在九月の夏の終わり頃。悠人が入学してから二回目の夏が過ぎた辺り。高橋と過ごす夏はまだ一回目であったと思っていたのに高橋が悠人の高校の後輩であったのならば知らず知らずの内に三回目を迎えていたことになる。
悠人「(工業系は極端に男女比があるからな………。
もし北沢高の中でどっかですれ違ってたとしても多分俺と高橋には特に接点なんてなかっただろうな。
美咲もいくら女子の人口が少ないからって女子に目が行くような奴じゃないし美咲も高橋のこと知らなかったみたいだから俺が高橋のこと知らなかったのも無理はないよな。)」
先輩「なぁ、
今月ちょっと金無くてさ?
少しだけ貸してくれない?」
後輩「え………またですか………?
先輩そう言って前に貸したお金返してくれてないじゃないですか。
前に店で出した分先に返して下さいよ………。」
先輩「は?
前の分?
何のことだ?
あれはお前が俺に奢ってくれたやつだろ?」
後輩「奢ってないですよ!?
あの時は後で返すからって仕方なく僕が払っただけじゃないですか!?」
先輩「何?
証拠でもあんの?
俺がお前に貸したっていう証拠が。」
後輩「騙したんですね。
そんなこと言うならもう先輩にお金は貸しません。」
先輩「はぁ?
お前先輩が困ってるのにそんな冷たいこと言うんだ?
そんなこと言ってお前どうなるか分かってんの?」
後輩「やっ、
止めてくださいよ!?
僕別に何も悪いことしてないじゃないですか!?」
先輩「良いからお前はさっさと金さえ出せばそれでいいんだよ。
大事な大事な先輩の頼みを断るつもりか?
それなら俺もそれ相応の制裁をお前にぼあっ!!?」ガスッ!
後輩「!」
タッ!!
先輩「あ!?
待てこら!!
糞!!
誰だ!?
今俺に石投げつけて来やがったのはッ!!
出てきやがれ!!」
先輩と呼ばれた男に突然どこかからか石が飛んできて怯んでいる隙に後輩らしき男が逃げていく。先輩は周囲を見渡すが飛んできたと思われる方向には人影もなかった。
先輩「………なんなんだよこのっ!!
人に石ぶつけてきて謝りもせずに逃げやがって!!
おかげでカモに逃げられちまったじゃねぇか!!」
結局男は石をぶつけてきた犯人を見付けられずその場から去っていった。男が去っていくのを
悠人「(………山本先輩も物好きな人だな。
ちょっと美咲に変なこと言われたくらいで高橋と付き合うだとか………。
高橋だって少し肩が触れただけの男をいきなり好きになんてなるわけないのにな。)」