悠人宅
悠人「どうすっかなぁ~………。」
悠人は帰宅後も明日明後日のことで頭を抱えていた。
レイナ「何よ?
悩み事?」
悠人が呟いた一人言を聞いてレイナがPCのデスクの方を向いたまま悠人に声をかける。
悠人「…明日大学の奴に遊びに誘われてるんだよ。」
レイナ「そうなの?
なら行ってくればいいじゃない。
何をそんなに深刻そうにしてるのよ。」
悠人「帰りの時間が問題なんだよ。」
レイナ「帰り?
遅くなりそうなの?」
悠人「ああ、
もし行くとなったらお前と離れてる時間が長くなりそうなんだよ。
あいつらに朝から夜まで拘束されてたら俺が発作を起こした時お前が近くにいないと困るだろ?
だから行くかどうか迷ってるんだよ。」
レイナ「発作のことが気になるなら朝に血を飲めばいいんじゃないの?
それなら次の朝までは発作は起きないでしょ?」
悠人「けど場合によっては俺の発作が早まることもあるだろ?
佐藤とのことがあって俺ってそんなに激しい運動とか出来ないことが分かったじゃんか。
あいつらといるとどうも血圧が上がりそうなことをしそうで………。」
レイナ「なら行かなければいいじゃない。」
悠人「………まぁそうなるよな。
………面倒くさいがそうメール入れとくか。」
悠人は携帯で美咲に断りのメールを送ろうとする。
レイナ「…ちなみに大学の友達とはどこで遊ぶ予定なの?」
悠人「ん?
ああ、
大学の近くだと思うぞ。
美咲がそう言ってたし。」
レイナ「美咲………?
………この前慧子が言ってた人のことよね?
貴方の恋人だとかなんとか………。」
悠人「出鱈目だ。
あんなん信じなくていいんだよ。」
レイナ「………もしその御誘い行けるなら行きたいの?」
悠人「え?」
何故そんなことを訊いてくるのか分からなかった悠人はレイナに無意識に聞き返す。玲奈は………、
レイナ「発作が起こった時に私が近くにいればいいんでしょう?
それなら明日は私が近くにいてあげるわよ?」
悠人「お前が近くに………?
………どうしたんだよそんなこと言い出して………。
またお前外に出たいのか?」
レイナ「やっぱりこの家の中にいてもフェザード社のことを調べられる情報に限界があるのよね。
それに前は最初失敗したから次はああならないように練習したいの。
貴方達が大学の近くで遊ぶならどこかで時間を見付けて一度合流して血を供給してあげるわ。
そのくらいなら時間取れるでしょ?」
悠人「まあトイレに行ってくるとか言えばそのくらいは………。」
レイナが側にいるのなら長時間外出していても問題は無い。悠人がヴェノムに感染してからは長時間レイナから離れることは難しかったがレイナも悠人と共に外出するのであればわざわざ家に戻らずともよくなる。
レイナ「それじゃあ明日は行くってその美咲って子に連絡したら?
私もいい気分転換になるだろうしせっかくあの島から抜け出して来たんだから昼間の外をもっとじっくり観察してみたいの。
それくらいなら貴方に迷惑はかけないでしょ?」
悠人「そのくらいならいいがお前外でやること何かあるのか?
一人でその………寂しかったりしないか?」
レイナ「…人が厚意で親切にしてあげようとしてるのに子供扱いするのはどうなのかしら。」
顔は此方を向いてはいないが若干不機嫌になったのが言葉の端から伝わってきた。悠人としては心配して言ったつもりだったのだがレイナはそうは受け取らなかったようだ。
悠人「すまんすまん。
でも本当にいいのか?
俺の発作のためだけに近くで待機するってなると退屈すると思うぞ?」
レイナ「それについては公園でも見付けてこの家にあった本でも読んでることにするわ。
探したら中々興味深い本とかあったし。
例えばこの『もしもフェザード社が誕生してなかったら世界はどうなっていたか』なんて良さげじゃない?」
悠人「本か………。
まぁお前がそれで良いって言うなら。
………でもそれでも退屈になったら金渡しとくからこれで飯買ったり他の本でも買うなりしてくれ。
一万もあれば十分だよな?」
レイナ「お金………ね………。
そういえば私まだ一人で買い物したこと無かったわ。
この紙をお店で出すだけでいいの?」
悠人「あぁー………そこからなのか。
なら一回レジで物買う練習でもしてみるか。
近くにコンビニがあるからそこで手本見せてやるよ。」
レイナ「こんな時間に開いてるお店があるの?
夜は殆どが閉まるんじゃ………。」
悠人「コンビニは大概どこも二十四時間営業してるよ。
もっと遅い時間になっても開いてるから安心しろ。
そんじゃ外に出る格好に着替えてきてくれ。」
レイナ「分かったわ。
少し待ってて。」
それから悠人とレイナは着替えを済ませて外のコンビニに出掛けていった。悠人としては二十歳にもなって品物の買い方すら知らないレイナに呆れはしたが彼女の十年の監禁を思えば至極当然のことだと受け止めた。そう思うと段々レイナのことが自分が保護している子供のように見えてきた悠人だった………。