女「“
振り抜いた手を正面に翳したまま女がそう呟く。今使った力の名なのだろう。確かに鉄砲のような威力のある水の弾ではあったが………、
悠人「(………技名ってやつか………?
現実にそんなものを使う奴がいるなんてな………。
ゲームの中の世界だけの話だと思ってたぜ。
こんな場所であんな殺傷力のある力を持つ奴が………。)」
改めて女の姿をじっと観察する。相変わらず衣服は身に纏ってはいないが水色の髪の毛と尖った耳以外は至って普通の女性にしか見えない。
それがあの熊のような巨体の怪物を一撃で葬り去った。一体この女の細腕のどこにそれだけの力があるというのか………。
ジィ………、
悠人「!」
不意に女と目があった。じろじろと視線を送っていたせいで女が悠人の視線に気付き此方を向き直る。
スタ………スタ………、
女はゆっくりと悠人の方へと歩み寄ってくる。悠人はその女の行動に驚いた。
悠人「…なっ、
何だよ……!?
おい止まれ!!
お前何する気だ!?」
先程の女が使った鉄砲水と呼ぶ技………結果的に悠人ではなく怪物にそれが当たり怪物は倒れたが怪物は女から見て悠人と同じ方角にいた。つまり女は
悠人「(冷静に考えろ!
この女はここの化け物達とそっくりな化け物が入ったカプセルの中から出てきた!
こんな都合よく俺を助けるようなヒーローみたいな奴が現れる筈がない!
きっとさっきの水の弾は俺を狙ってそれが偶々さっきの化け物に狙いが反れただけだ!
こいつは今から俺を………!)」
女が接近してくるのに対し悠人は後退りで女から距離を取る。そしてゆっくりと方向転換していき出口の方へと進む。
女「………」
スタ………スタ………。
女はまだ悠人の狙いが分からないのかゆっくりと逃げる悠人を同速の歩きで追い掛けてくる。
………そして、
女「………ねぇ………貴方………、
悠人「………は?
何言って「ギィアアアアアアァァァッッ!!」!?」
悠人の背後で大きな奇声が発せられる。振り返るとそこには先程女が倒した怪物が破壊したカプセルの中に入れられていた別の怪物が立っており悠人に襲いかかってきた。
ガッ!!
悠人「なっ…!?
テメェ!?
この………離しやがれ!!」
異形の怪物「ガルルル!!」
ギュゥゥゥゥ……!!
悠人「があぁ……!?」
怪物に万力とも思える力で腕を握られる。悠人はこのまま怪物に腕を握り潰されるのではないかと一瞬思った。
ふと視界の外から他にも怪物達の発する咆哮が聞こえてくる。どうやら他のカプセルの怪物達も目を覚ましたようだ。
悠人「(そりゃそうだよな!?
あの女が生きてるってことは他の奴等も同じ様に生きてるよな!?
俺はここでこいつらに殺されちまうのか………。
悠人は自分の死を覚悟した。一匹でさえも太刀打ちできないというのにそれが複数体悠人のいる部屋に現れそれでいて現在自分の手が締め付けられ折られようとしている。これでは逃げることさえ出来ない。
女「死にたくなかったら伏せなさい。」
悠人「!」
バッ!
女の声が聞こえ悠人は女の指示に従い体を低くした。すると怪物の向こう側で女が天高く足を上げている姿が目に入った。
女「“
ザッ!!!ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザッッッ!!!
異形の怪物「「「「「「「「「「ギィッアッ………!?」」」」」」」」」」
女の
悠人「………すっ、
すげぇ………。」
悠人は無意識にそんな言葉を口から漏らしていた。
……………………………………………………………………
悠人「………会話は通じるんだよな………?
お前は一体何者だ?
何でそんな力がある?」
女が怪物達を一掃した後に悠人は付近を調べて女が着られそうな衣類を探した。そしたら近くの部屋で白衣を発見し今は女にその白衣を着させている。これで悠人は目のやり場に困らずに済むようになった。
女「第一の問いには“イエス”よ。
普通に貴方の言語は分かるわ。
第二の問いにはここで話すような時間が無いから省かせてもらうわ。」
悠人「まぁ………いいだろう。
じゃあ第三の問いはどうだ?
お前のその異常な
女「これは
私は
ウンディーネは水を操る精霊。
だから私は水を操って武器とすることが出来る。」
悠人「………始祖………精霊………?
ウンディーネ………?」
言葉は通じているようだが悠人には女の話す内容の意味が全然理解出来なかった。
女「………って説明しても貴方には私の話は難しかったみたいね。
ならこれ以上貴方に話す意味は無いわ。」
スタスタ………、
女は悠人に背を向けて歩き出す。
悠人「………え、
ちょっ、
おい待てよ!
どこに行くんだよ!?」
悠人は歩き去る女の背中にそう声をかける。女はそれに対し、
女「そんなの決まってるでしょ?
悠人「ここから出る………?
お前が………?
………お前はここの奴じゃないのか………?」
女「そうよ。
私はただここで捕まってただけなの。
捕まってここで実験動物にされてただけでここに長居する理由は無いわ。
………それじゃあ
悠人「!」
女は悠人についてくるよう促してくる。
女「さっきの様子だと貴方にはここを一人で抜け出せる力は無いのよね?
だったら特別に私が貴方を外まで連れ出してあげるわ。
私がいた方が貴方も何かと都合がいいでしょ?
悠人「モルモット………?」
女「私が殺した化け物達のことよ。
あいつら
私があいつらを薙ぎ倒していくから貴方は上までの道案内を宜しく。」
悠人「…そういうことかよ。」
女は悠人を外に出るまでの案内人にしたかったようだ。
女「私もこうして外に出るのは
ここから出たとしてもそれからどこに行けばいいのか分からないの。
だから貴方が私を外へ連れて出してくれない?」
悠人「(十年振り………?)………それは分かったがお前どこか行く当てがあるのか?」
女「そんなのは後で考えることにするわ。
今は早くここから出たいの。
さっさと地上に連れて行ってくれないかしら?」
悠人「………仕方ねぇな。
それじゃあついてこい。」
女「言われなくてもそうするわ。」
悠人と女は並んで歩き出す。二人で怪物達が徘徊する建物内を突破し外へと脱出するために。
悠人「そういやお前の名前まだ聞いてなかったな。
お前名前は何て言うんだ?」
女「それを言うなら私も貴方の名前を知らないわ。
貴方こそなんて名前なの?」
悠人「俺は………鈴木悠人って言うんだ。
東京の大学に通ってる。」
女「東京の?
………東京の大学生がこんなところに何しに来たの?」
悠人「それは………………。」
女「?」
悠人「………………。
………
本当はこんな島なんて来たくなかったんだ。」
悠人は女に嘘をついた。もし自分がこの島の出身で保泉市のことを調べに来たのだと言っても彼女には何の関係もないと思ったからだ。
悠人「(………どうせこの女も保泉市とは関係ないところから連れ去られてきたんだろう。
この女に保泉市のことを訊いたとしても何の情報も得られなさそうだ。
だったら俺の話は軽く流させればいい。)
………俺の名前は言ったぞ。
次はお前の番だ。」
悠人は自分の話を切り上げて女の話題に移そうとする。女もそんな悠人の様子をいぶかしむが素直に自分の名前を言おうとする。
女「私はふ………………、」
悠人「………ふ?」
女「………………」
女のその後の言葉が続かない。何故か女は自分の名前を言う寸前で固まり考えるような素振りをする。
悠人「………まさか記憶喪失とか言い出すんじゃないだろうな………?」
女「………………」
悠人「………まさかなのか………?
お前自分の名前が思い出せないんじゃ「私は………、」」
女「私の名前は“レイナ”。
“レイナ=カリオーン”。
………そしてこの地球上でただ一人の