世界を渡り歩いた少年は心からサッカーを楽しむ? 作:レイ1020
スコアは1 対 1。士郎のゴールでまた振り出しに戻されたわけだけど、こう出なくちゃ面白く無い!僕ももっとプレーを楽しみたいし、士郎と対決もしてみたい。だから、僕はキックオフからボールを貰うと、すぐさまドリブルで士郎の方へ向かって行った。
「士郎!勝負しよう!」
「へっ!上等だ!」
拮抗するかな?って思ったけど、僕は軽いフェイントを使い、士郎の視線を誘導すると、隙ができた右の方へボールをはたいた。士郎は反応が出来なかったのか、僕にあっさりと抜かれてしまっていた。・・・・・・あれ?
「っ!てめ・・・・・・待ちやがれ!」
「ほいっと!」
「はっ!?ぐっ・・・・・・」
僕が抜いた後、すぐさま士郎が追いかけて来たけど、それも予想の範疇。僕は足裏でボールを後ろへ引き、鋭い切り返しをし、向かって来た士郎の重心をずらした。重心をずらされ態勢を崩した士郎はそのまま地面に座り込んでしまっていた。バスケで言うアンクルブレイクっていうやつかな?
「よし!行け!地平くん!」
僕は士郎を躱した後、前線に走った地平くんへロングパスを出した。僕が士郎とマッチアップをしていたことによって、地平くんや他のみんなが前線に上がる時間が作れたため、前線は数的有利な状態になっていた。それに向こうのみんなは士郎に頼りっきりな状態だったこともあってディフェンスラインもポジショニングもバラバラだった。だからこそ、裏にボールを出せば容易にチャンスを作れる。僕はずっとそれを狙っていたんだ。
「ナイスパス海くん!」
裏に抜け出した地平くんが僕が出したパスをトラップするとそのままペナルティエリアの中に侵入していき、キーパーと一対一になった。そして地平くんは冷静にキーパーの動きを見てキーパーが取れない隅のコースへシュートした。
スパッ!
ゴールネットが揺らされた音が得点を表していた。2 対 1 また僕たちのリードだ。
「くそがっ!!おい海!次はぜってーにお前を抜いて得点してやる!覚悟しとけよ!」
「うん!もっともっと楽しもう士郎!試合はまだまだこれからだよ!」
試合が再開され、向こうはまた士郎だけが攻め上がっていた。ワンパターンじゃ無いかな?これだと相手からすれば読み易いし、対処もしやすい。例えば・・・・・・。
「FWの二人は士郎を挟み込む様にして密着して!それでドリブルのコースを限定するんだ!」
「「おう!」」
「ちっ・・・・・・邪魔なんだよてめーら!」
そう。こんなふうに一人だけ攻めてくるってことはパスの選択肢がないってこと。それなら一人に対して数人でブロックに行って、取れなくても相手にプレッシャーをかけるだけでも大きかった。だから・・・・・・。
「隙だらけだよ士郎!」
「ちっ・・・・・・またかよ!」
プレスに苛立ちと焦りが出たのか一瞬ボールが士郎の足元から離れたのを僕は見逃さなかった。すぐさま僕が士郎の前に立ちはだかり、ボールをカットした。そしてすぐさまドリブルを開始する。
「さて、流石にディフェンスが多いし、味方もまだ上がって来てないし・・・・・・やっぱりここは!」
僕は相手の陣地に浅く入ったところでまた足を振り上げた。もうこの時点で何しようとしてるかはわかるよね?
「シュートでしょ!」
さっきと同じくらいの力で蹴ったシュートは、数多くいるDF達の合間をくぐり抜けていき、GKも反応ができないままゴールへと吸い込まれて行った。
3 対 1 2点リードとなった僕たちのチームは信じられないと言った表情で喜んでいて、その中には僕も入っていた。やっぱりこうやってサッカーで嬉しい気持ちになるのは快感でしかないから加わりたいんだよ!
「ナイスシュート海くん!」
「海くんすごーい!やっぱり相当うまかったんじゃん!あの吹雪くん相手にこんなにいい試合するなんて」
「そう?いい試合ができてるのはみんなの力もあったからだよ。こっちからも言わせて?みんなナイスプレー!この後も楽しもう!」
「「「「「おおーー!!」」」」」
何か、僕たちのチームの団結力がより深まった気がする。これならこの後も問題なさそうだね。さて・・・・・・士郎?キミはこのままで終わりじゃないでしょ?もっとキミの力を見せてよ!
–––––––––––––––––––––––––––––––––––––
あれから試合は進み、スコアはこんな状態となっていた。
Aチーム 1-9 Bチーム
完全に僕たちのペースだった。その後は立て続けに得点を重ね、僕が2点、地平くんが4点、湿原くんが2点、五稜くんが1点取っていた。ちなみにその全てが僕のアシストということになっている。士郎はと言うと、完全にリズムを崩されていてキレの良いドリブルもテクニックも鳴りを潜めていた。僕に向かって来たりもするけど、簡単に僕からボールをとられ、そのままカウンターをくらう羽目となってしまっていた。うーん・・・・・・。
「士郎・・・・・・もう終わりなの?もっとやろうよ」
「うっせ・・・・・・」
「キミはもう少し戦術を学んだほうがいいよ?いくらキミだけがすごくてもサッカーは一人でするものじゃない。一人で突撃してこられたってキミ一人では何もすることはできない。今のスコアがいい例だよ。キミ一人だけで戦ったAチームと、僕たちみんなで戦ったBチーム。実力差は対して差はない。でもキミ達はプレーで負けたんだよ。だから次からはこんなことがない様に・・・・・・」
「うっせーって言ってんだろーが!!」
士郎は僕に向かってそう叫ぶとまだゴールからだいぶ距離がある位置からシュート体勢に入った。話を最後まで聞いて欲しかったんだけどな・・・・・・。
「俺はぜってーに負けねえ!ぜってーに!!吹き荒れろ・・・・・・【エターナルブリザード】!!!」
そのシュート・・・・・・【エターナルブリザード】はゴール目掛け一直線に向かって行った。みんな予想外だったのか誰も動けずにいた。だけど僕は・・・・・・。
「返すよ!」
「!!!」
士郎は驚きで顔が青ざめていた。何にって言うと・・・・・・僕が【エターナルブリザード】の軌道ラインに入って、そのまま
ピィ・・・・・・ピィ・・・・・・ピィーーーー!!
試合終了のホイッスルが鳴り響いた。結果は 1 対 10 で僕たちBチームの勝利で終わった。喜びで歓喜の声で溢れかえってるBチームとは対照的に、士郎を含めたAチームはどよ〜んとした雰囲気が立ち込めていた。
「海くん・・・・・・」
「ん?士郎?」
そんな中、士郎が僕のところに来た。既に士郎はさっきまでの雰囲気ではなく通常の状態へと戻っていた。
「まさかこんな結果になるなんて思ってなかったよ。僕の力がまるで通用しないなんて・・・・・・」
「うん。さっきも言ったと思うけどサッカーっていうのはチームスポーツなんだ。だから今みたいに士郎一人だけでサッカーをしようとするならきっと今後どこのチームにも勝てなくなるよ?今回僕はそれを教えたかったんだ」
「・・・・・・まさにその通りだね。今日の結果を糧にしてチーム方針を見直さないとね・・・・・・」
「そうしなよ!そうすればきっと僕たちはもっと強くなれるよ!あ、みんなが呼んでるからいくね!それじゃあまた後で!」
僕は士郎と話をつけ、チームのみんなのところへ向かった。久しぶりの試合・・・・・・十分に楽しめたし、今日は大満足だ!
「空田海・・・・・・彼はまさに・・・・・・天才・・・・・・いや、”化物”だね・・・・・・」