ハードマウンテン。今もなお噴煙を上げ続けている活火山である。アンバーとマナは、防塵ゴーグルとマスクを着用してこの火山の麓を訪れていた。
「本当に宝石とか化石があるんですかね?」
「火山は何万年、何億年という年月をかけて大きくなるから、あっても不思議じゃないはずだよ」
2人がハードマウンテンに訪れたきっかけは、今から数日前にさかのぼる。
クロガネストーンショップに訪れる客というのは、石マニアが多い。どのような石なのか鑑定を願う者もいれば、珍しい石が見つかったと言う情報が持ち込まれる事もある。今回は後者だった。
「これは、随分と見事な物だ」
「だろう? ハードマウンテンで発掘したんだ。マナちゃんも見てみなよ」
珍しい石を発掘してはアンバーの元へやってくる一人の山男が、手の平より大きな紅色の鉱石を見せる
「どれどれ……? わぁ~、大きくて色も立派ですね!」
「はっはっは! アンバーと暮らしてる内に、石を見る目が身についてきたようだね」
「あはは……。でもハードマウンテンって、危険地帯ですよね?」
ハードマウンテンは活火山であるだけでなく、炎タイプや岩タイプなどのポケモン達がうようよ居る。そのため、とても危険な場所として知られていた。
「ポケモン達が寄り付かなくなる『むしよけスプレー』を使ったのさ」
「あぁ、なるほど」
「アンバーの実力なら、ハードマウンテンに行っても問題無いと思うがなぁ」
アンバーは、ホウエン地方のジムリーダーであるツツジとのバトルで敗北したものの、相手のポケモンを2体も倒している。その実力はクロガネシティの住人全員が知っている事であり、特にカイリキー、ガバイト、ハガネールの3匹の古参組は高レベルだ。新参のミカルゲとメガヤンマも、それぞれ得意技を持っており、アンバーはそれを引き出す才能もある。
「確かにハードマウンテンの鉱物には興味あるな……。マナさんはどうする?」
「行ってみます。実際に行ったこと無いので」
「決まりだな。情報ありがとう」
こうして2人は、「あなぬけのヒモ」や「おいしい水」等をカバンに詰め、発掘道具を手にハードマウンテンへ向かったのである。
そして現在。近くの手頃な石に座って休憩していたのだが、アンバーは周りを見て奇妙に思っていた。
「何でゴローンが、こんな麓まで居るんだ……?」
ゴローンはその岩のような見た目通り、ゴツゴツした岩のある場所に生息する。ハードマウンテンの周りは溶岩が冷え固まった場所であるため、別に外に居てもおかしくは無い。しかし、今アンバーたちが休憩している場所は麓のエリアであり、そこの近くには、火山を訪れた人が休憩するための山小屋が建ち並んでいる。いくら人の前に飛び出す野生のポケモン達でも、よほどの事がない限り人の集まる麓まで降りてこない筈である。
「アンバーさん、あれ!」
「バクーダの群れだと!?」
火山をケンタロスのように下っていくのは、バクーダの群れだった。彼らの目は何かに怯えていて、そこから逃げようとする気持ちが感じ取れる。火山の上で何かが起きているのは明白だった。
「……行ってみよう」
「はい」
それぞれ、カイリキーとドータクンのモンスターボールを構えながら、火山の上を目指すことにした。
道中マグマッグやイシツブテなどが逃げてくるのをやり過ごし、慎重に2人は火山を上っていった。すると、遠くから岩の砕ける音が聞こえてきた。アンバーはその音を何度も聞いているため知っている。筋肉のあるポケモンが拳で岩を砕く音だ。
その音が徐々に近付き、その雄叫びが聞こえてきた。
「サァァァイドォォォン!!」
「サイドン!?」
「か、かなり怒ってる……!?」
ドリルポケモンのサイドンが、その拳で辺り一帯を破壊していた。その目は怒りで真っ赤に染まり、正気とは思えなかった。
「何があったかは分からないが……このまま暴れ続けたら、他のポケモン達が怖がって寄り付かなくなってしまう!」
「まずは落ち着かせましょう!」
「そのつもりだ! 行け、カイリキー!」
「カァァァイ!」
「ドータクン、お願い!」
「ドォォォ!」
「グルァァ……! サァァァイドォォォン!」
ポケモンの声がしたことに気付き、アンバー達の方へ顔を向けるサイドン。見慣れないポケモンが現れたことで警戒心を強めたのか、より大きな雄叫びを上げた。
さてさて、なぜサイドンは暴れていたのか。次回をお待ちください。