アンバーは少しだが混乱していた。サイドンが暴れていた黒幕であろう老人は、マナを見て「マーズ」と呼んだ。そして彼女も、老人のことを「プルート」と呼んだ。つまり、あの奇妙な集団のことをマナは知っていると言うことだった。
「マナさん、あの人たちの事を知ってるのかい?」
「…………えぇ、そうよ」
「っ! マナさん、その喋り方は……」
いつもは敬語だったのが、強気な性格と思わせるような口調になった。しかし、口調とは裏腹に俯いている。
「彼はプルート。ギンガ団幹部の1人で、研究開発を担当していた男よ」
「ギンガ団!?」
アンバーも、ギンガ団の事は知っていた。発電所などを占拠したとか、リッシ湖を爆破したと言うニュースを聞いたことがあった。
なぜ彼女がギンガ団幹部の事を知っているのか。まさかと思いながらも、彼は問いかけた。
「マナさん……。君はまさか」
「何じゃマーズ、この若造を騙しておったのか? まぁ言えんじゃろうなぁ、自分自身がギンガ団幹部の1人だったとはなぁ!」
「…………!」
アンバーの質問に対して答えたのは、プルートであった。まるで見下しているかのような口調にマナは苛立ったが、恩人を騙していたのは事実であり、幹部であった過去も事実だ。言い返すことも出来ず、拳を強く握るしか無かった。
「若造。その女はな、かつてのボスであるアカギに、それはそれは強い忠誠を誓っておったんじゃよ。じゃがアカギが行方不明となると、探しに行くと言ってギンガ団を抜けおったんじゃ」
「君が探していたのは……そのアカギって人なんだね」
「……そうよ。それだけじゃない、アカギ様の命令で私は、谷間の発電所を占拠したこともある。そのニュースは聞いたことあるでしょ?」
「……あぁ」
軽蔑されている。マナはそう感じた。今までの楽しかった日々が、ガラガラと音を立てて崩れていく。アンバーと送ってきた思い出が壊れると思うと、目の前が段々と滲んできた。
「ジュピターも抜け、サターンは行く宛の無い下っぱ共の面倒を見ると言って宇宙センターを立ち上げた。だがそんなことで変われる訳じゃない。世の中を動かすのは金じゃよ」
「……低俗な野郎だ」
「今こそ、新生ギンガ団の第一歩として、この火山に眠ると言われる伝説のポケモン『ヒードラン』を目覚めさせる! その力を見せつけ、あらゆる場所から金を搾り取ってやるわい。じゃが……その目撃者と裏切り者には、罰を与えんとな!」
ギンガ団の下っぱ達がモンスターボールを投げると、マグカルゴやゴローン、ハガネールなどがアンバー達の前に立ちはだかった。
「行け! 裏切り者のマーズには特に徹底的にやれ!」
マナは、これは自分自身への罰なのだと悟った。聞いてくれないと分かっていても、アンバーに声をかける。
「アンバー。これ私への罰よ。あなたまで巻き込まれる必要は無い。だから―――」
「カイリキー、『きあいだま』だ!」
黄色の光弾がゴローンを吹き飛ばした。まさか反撃されるとは思わず、プルートも、下っぱも、そしてマナも驚きで目を見開いた。
「複数バトル、久しぶりだな。『こうてつ島』でポケモンの群れを相手にした時以来かもな」
首をゴキゴキと鳴らしながら、2つのモンスターボールを投げた。
「ハガネール、ガバイト! お前達も暴れたいよな!」
「「グオオオオオオ!!」」
「ば、馬鹿な! ポケモンに指示を出せるのは2体までが限界の筈……!」
「ごちゃごちゃうるせぇジジイだな! 下っぱに任せきりのお前が、新生ギンガ団とか伝説のポケモンとか出来る訳ねえだろうが!」
マナが見たアンバーの目つきは、ツツジとバトルした時よりも鋭く、そして口調も荒々しかった。彼はマナを見て軽く微笑む。
「俺も、君には隠してた事があるんだ。後で話すけど」
「何、で……。私はギンガ団の幹部だった女よ! 何で私を……!」
「泣いてる店員を放っておくのは店長失格だろう? それに、あのジジイの口調といい目的といい、ムカつくんでね!」
獰猛な笑みを浮かべながら、アンバーは下っぱ達に宣言した。
「まとめて掛かってきやがれ!」
バトルモードに突入したアンバー。まさかの、3体同時バトルです。
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