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キッチンで、マナが鼻唄を歌いながら料理をしていた。作っているのは、ブリーの実を使った甘いポフィン。すっかり作り方を覚えた料理の1つである。
「もうそろそろかしらね……」
愛する家族は、今日はシンオウ地下通路に潜って化石発掘している。もうそろそろ帰ってくる時間だ。
「ただいまー!」
(来た来た)
遠くから聞こえる元気一杯な声に、思わずクスリと笑みが漏れた。外にいるポケモン達に声をかけてるのだろう。そしてキッチンに顔を見せる“2人”。
「『お母さん』、ただいまー!」
「お帰りなさい『アンナ』、『あなた』」
「あぁ、ただいま。マナ」
琥珀色の瞳が輝く青年、アンバー。彼は父親になっていた。顔を少し土で汚しながらも、ニッコリと笑みを浮かべる。
そして、元気一杯にキッチンへ入り込んできたのは、愛する人との間に産まれた、大切な“娘”。名前は『アンナ』。
アンナは、カバンからごそごそと何かを取り出そうとするが、それをマナが止める。
「はいストップ。帰ってきたら何をするんだっけ?」
「ただいまの挨拶~!」
「残念! 正解は~?」
「お父さんとお風呂だ~!」
「きゃ~!」
アンバーが娘を抱き上げた。突然視界が高くなったことに驚くアンナ。楽しそうに風呂場へと向かう父娘に苦笑しながらも、マナはポフィンの焼き上がりを待った。
お風呂から上がり着替えたアンナを待っていたのは、大好きなお母さん特製のポフィンだった。
「ポフィンー!」
「今日はブリーの実を入れました~!」
「パチパチ~!」
席に着き、マグカップにモーモーミルクが注がれる。食べるとブリーの甘みが広がり、自然と笑みがこぼれる。
「美味しいー!」
「今日はお父さんのお手伝いを頑張ったから、もう一個良いわよ」
「わーい!」
笑顔で食べ進めるアンナを見ながら、夫婦は話し始める。
「どうだったかしら?」
「偶然かもしれないけど、アンナが凄いのを見つけてな。アンナ、お母さんに見せたいのがあるんだよね?」
「うん!」
ポーチから取り出したのは、化石だった。
「これって……」
「アンナが見つけたのー!」
「そうなんだよ。アンナが見つけてな。俺も手伝ったけど、アンナ自身で掘ったんだ」
「あらまぁ。何の化石かしら?」
「これは恐らく、カブトだな」
「……あの娘、大切そうにしてるけど、どうするの?」
目をキラキラさせて『こうらのカセキ』を眺めているアンナ。それを見たアンバーは聞いてみる。
「……アンナ」
「なーに?」
「その化石、ポケモンになるんだ。そのポケモンと一緒に暮らしたい?」
「っ! アンナ、ポケモン持てるの!?」
「あぁ。アンナにとって、初めてのポケモンになるな」
「わーい! ポケモン、ポケモン!」
無邪気に喜ぶアンナに、2人は笑みを浮かべた。
「あの娘も、ポケモンを持つようになるのね」
「出会いは繰り返す。当然、別れもな。けれど別れは悲しいことばかりじゃない。そうだろう?」
「……えぇ」
アンバーと出会い、そして結ばれ、娘を持ったマナ。幸せに感じているのは彼女だけではない。
マナと出会い、そして結ばれ、娘を持ったアンバー。こうして笑いながら過ごすことに、幸せを感じていた。
これは、クロガネシティにある石屋さんの、そんなホッコリとした風景。
~Fin~
今回で、この小説は完結となります。読んでいただき、ありがとうございました。