クロガネシティの石屋さん   作:G大佐

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この話から読み始めた方のために説明しますと、本作品でのマーズは、アカギが消えた後すぐにギンガ団を抜けています。


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 本名を名乗ったものの、自分をコードネームで言う癖が残っていたのか、危うく自分の正体を明かすところだった。

 マナ。コードネームは『マーズ』。かつて、『ギンガ団』と言う組織の幹部をやっていた。忠誠を誓っていた人物の目指す『心の要らない新世界』を作る事に協力していたが、あともう少しと言うところでトラブルが発生。組織の主は行方知れずとなってしまった。

 主のいない組織にいる意味は無い。どこかに主は居る筈だ。そう希望を持って旅を始めたのは何時だったか。訪れる先の全てに手掛かりは無く、全く先の見えない旅となっていた。

 やがてそれは、『自分は何のために旅をしているのだろう』という自問自答の状態に陥る。主を見つけるためと始めた旅だったが、見つけたとしてどうするのか。主が消える直前に見たあの『恐ろしいポケモン』がいたら、果たして自分は戦えるのか。考えれば考えるほど、自分の本当の目的が分からなくなってしまった。

 

 マナは、自分の正体を隠しつつも、人を探すために旅をしているとアンバーに告げた。

 

「旅をしている、とは言ったものの……目的が本当にそれなのか分からなくなっちゃって」

「……なるほど」

 

 何の旅をしているのかと尋ねたアンバーが、コーヒーを淹れてくれた。椅子だけじゃなく飲み物まで用意してくれたのは素直に嬉しかった。

 

「もしかしたら、私の探し人は、もう自分の世界を見つけたんじゃないかって。そう、思ってしまうんです」

「…………」

 

 アンバーは、彼女に何と言えば良いか分からない。長い旅をしてまで探すということは、よっぽど大切な人なのだろう。そこで「そんなこと無いよ」と励まそうにも、自分はマナの探す人の事を何も知らないのだ。何か理想を求めて彼女の前から姿を消したのならば、彼女の言う通りなのかもしれない。

 

「……すみません、長々と喋っちゃって」

「いえ、俺の方こそすみません。そんな深い事情があったなんて……」

「でも、話したら何かスッキリしました」

 

 話し終えた彼女は笑みを浮かべているが、それは愚痴を聞かせてしまったと言う苦笑いであった。完全には、心のモヤが晴れていないのだろう。

 

「あ、もうこんな時間……。そろそろ行かないと」

「行かないとって、こんな暗い時間にですか!?」

 

 ヤミカラスの鳴き声が聞こえ、遠くからコロボーシ達のコーラスが微かに聞こえてくる。夜は何かと危険だ。洞窟にいるズバット達が出てくるし、マナのブニャットが苦しむ原因となったドクケイルなども飛び始める。運が悪いとゴーストポケモンまで出てくるのだ。その中を出歩くと言うのは、流石に心配だった。

 

「ですが、迷惑を掛けるわけには行かないですし……」

「夜が危険なのはご存知でしょう。それに、その、毒消しとか買えないほどに金銭的な余裕も無いようですが」

「うっ……」

 

 バッサリと言うアンバーだが、確かにその通りだ。旅費は底を尽きかけており、ポケモンフーズを買うお金だけは何とか確保していた。正直、旅を始める前よりも自分が食べる回数は減っている気がする。

 

「そんな丸腰にも近い状態で旅を続けたら、本当に取り返しのつかないことになりますよ」

「それは、そうかもしれませんけど……」

 

 マナは悩む。確かに、ここ最近は野生のポケモンたちに警戒しながら野宿をすることが多く、そろそろ危ないんじゃないかと言う気はしていた。

 一方で、ポケモンセンターに送ってもらった上に、自分の愚痴まで聞いてもらった以上、アンバーに負担を掛けさせる訳にはいかないと言う思いもあった。

 

(これは……もう少し強く引き留めないと、この人は危ないかもしれない)

 

 そして、アンバーはとうとう、“ある事”を提案する。

 

「それなら、俺の店で住み込みで働きませんか?」

「…………えぇっ!?」

 




マーズっぽくない口調かもしれませんが、アンバーとは他人と言うことで「ですます」口調です。
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