マナがアンバーの店で働くようになって、数週間が経った。その間に、ちょっとした一悶着があった。
アンバーが女と同棲している。そう言う噂が出回るのに時間は掛からなかった。クロガネ炭鉱の鉱夫たちは噂の真偽を確かめるために店を訪れ、近所のおばちゃん達からは「変なことしたら……分かってるよね?」と言われる始末である。なお、アンバーとマナは別室である。
「ったく、みんな好き勝手言いやがって」
「あははは……」
口を尖らせて呆れるアンバーに、マナは思わず苦笑い。なお、彼女の手持ちポケモンの内、ブニャットはホールで接客、ドータクンはハガネールと共に近所の子供たちの遊び相手をしていた。夜行性のゴルバットはカーテンを閉めたマナの部屋で寝ている。
「それにしても、宝石とかって買う人少ないと思いましたけど、結構トレーナーとか買いに来るんですね?」
ついさっき、ピカチュウを連れたトレーナーが『かみなりの石』を買っていった。ライチュウに進化させるために必要な石なので、そのためだろう。
「少なくとも、フレンドリィショップで買い取られる値段よりかは高くしてるよ。それでも、他所で売られている進化の石ってのはここより高いみたいだね」
「お手軽に進化の石や化石が買えるから、ですか」
「そう言うこと。まぁ、化石に関しては完全に俺の趣味もあるけど」
そう言うと、アンバーは木箱から何かの石を取り出した。
「それ、何です?」
「俺もよく分からないんだけど、ズイタウンから来た遺跡マニアが言うには、『かなめいし』って言うみたい。片手ほどでしかないけど、壊れた物はいくつか発掘したことがあるんだ」
だがアンバーの持つそれは、傷ひとつ無くとても綺麗な状態だった。
「あまりにも綺麗に掘れたもんだから、なんか売るのが勿体無くてねぇ」
「記念にとっておくのもアリなんじゃないですか?」
「そうしようかな」
レジの後ろの棚に『かなめいし』を丁寧に置く。
シンオウ地下通路は、時に遺物が発見されることもある。赤、青、緑、黄の謎のかけらや、何かしらの石板なんかも見つかることがあるのだ。特に石板や『かなめいし』のような大きな物はめったにストーンショップに並ばず、遺跡マニアからすればまさに、目玉商品なのである。
「さて、休憩おわり! お掃除タイムに入ろうか」
「はい!」
ブニャットは意気込むマナに応援の眼差しを送った。ドータクンは『ねんりき』で子供を浮かして喜ばせ、起きたゴルバットはどうやってマナに会おうか悩んでいた。
ホーホーの鳴き声が響く夜中。アンバーもマナも、店のポケモン達も眠りについている。
しかし、店のホール……レジの後ろにある棚から、物音がした。ガタゴトと何かが揺れるような音である。
揺れていたのは、アンバーが発掘した『かなめいし』だった。昼間は普通の石だったのに、今は怪しく光っている。
「ユラァ…………」
果たして最後の声は何だったのか……? 次回をお待ちください。