朝。眠い目を擦りながら、アンバーは店のホールへ降りてきた。
「…………ん?」
ふと、棚に置いていた『かなめいし』を見た。昨晩置いたところよりズレているような気がする。
「……気のせいか」
石の模様が見えるように置き直すと、朝食の準備を始めた。
「ユラ……」
「?」
何かを感じて後ろを振り向くが、何もいない。
「うーん……? 勘が鈍ったかな?」
ちょっとした過去を持つアンバーは、気配を察知するのを得意としている。だが何も居ない事に首を傾げつつ、再び朝食の準備を始めた。
「……あれ?」
翌日。石はまたもや置いていた場所からズレていた。昨日ちゃんと元の位置に戻して、それ以降手をつけていない。
「おかしいな?」
「どうしたんです?」
「いや、『かなめいし』がまたズレているんだよ。」
「底が丸い形してるし、ズレるのは仕方ない事なのでは?」
「そう言うものかなぁ……?」
アンバーとマナは首を傾げていた。しかし……。
「ゴル……?」
日の光を避けるように降りてきた、マナのゴルバットはその石を不思議そうに見つめていた。なお、仲間外れは可哀想だからとホールの天井の角で寝かせていた所、その寝姿が可愛いと小さな話題になった。
その日の夜。
「……ゴル」
「ニャウ……」
ゴルバットとブニャットが目を覚ました。下の方から何か気配を感じたからである。
「ニャー、ブニャッ、ウニャー」
「ん、んん……。なぁにぃ、ブニャット……」
いきなり体を揺すって起こされ、ゆっくりと起きるマナ。ブニャットはベッドから降りると、ついて来てと言わんばかりに歩き出した。ゴルバットも続く。
「ちょ、どこ行くの?」
部屋を出ると、アンバーの部屋からもカイリキーとパジャマ姿のアンバーが出てきた。
「あれ? どうしたんだ?」
「ブニャット達が突然起こしてきて……。アンバーさんも?」
「カイリキーがな……。それに、俺も下の階から何か感じるからな」
2人は懐中電灯を点けて、慎重にホールへ降りていく。そこで2人が見たものとは…………。
「おんみょ~~~ん」
「キャアァァァァァ!?」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「ミカッ!?」
飾っていた『かなめいし』から、得たいの知れない何かが飛び出ていた。しかもそれは目を光らせ、鳴き声を発した。2人は思わず叫んでしまい、驚かせた本人(?)も驚く。
その拍子で石が棚から落ちた。
「「あっ」」
「ミッ!?」
ゴドン!と言う鈍い音を立てて、落ちてしまう。石はかなり頑丈なのかヒビは入っていなかったが……。
「ミ、ミカァ~……」
弱々しい声で、その丸い顔のような物を俯かせた。
「な、なんでしょうか、これ……」
「ポケモン、なのか?」
「でもなんだか……」
「ミィ~……」
「泣いてません?」
「声の感じはそうだけど……」
アンバーは恐る恐る近づき、声を掛ける。
「なぁ」
「ミカッ!?」
ポケモンのような生き物はアンバーに驚くと、石の中に体を引っ込めてしまった。そして、少しだけ顔のような物を出してアンバーを見る。
「もしかして、落ちたのが痛かったのか?」
「……ミッ」
生き物は素直に頷く。
「……ごめんな、驚かせちゃって。俺たちも驚いちゃったんだ」
「……………………」
その生き物は少しだけ体を出して、アンバーを見つめた。
「このポケモン?は何なのでしょうか……」
「朝になったら、ナナカマド博士に聞いてみよう」
そう言って振り返ると……。
「ゴルゴル~♪」
「ミッカ! ミカル~♪」
ゴルバットとホールの中で追いかけっこをしていた。
子供のようなミカルゲを意識してみました。明日はナナカマド博士に相談するお話です。
それでは、次回をお待ちください。