織田信奈の野望 〜in風林火山〜   作:マクロなコスモス

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何とか生きてます……。仕事をし始めて中々書ける時間がありませんでしたので、今回の話はかなり短いです。


越後潜入編
プロローグ 毘沙門天の呼び声


(どこだ。ここは……)

 

 気づけば俺は城の中にいた。広大な平野が続く景色が目に映り、ここが甲斐や信濃とは違う場所だということはすぐにわかった。そして、もう一つ。

 

 ここが下総(俺の故郷)であるということだ。城から見下ろした景色は田畑が広がっており、現代との景色の違いはあれど、今と変わらない地形が俺のいた住宅街を連想させた。

 

『白井様、白井様!』

 

 俺を呼ぶ伝令の声が聞こえ、後ろを振り向く。そこにいたのは息を切らしながら近づく伝令だった。

 

『そう慌てるな。息を整えてから、話せ』

 

 しかし、明らかに発した声は違う者の声だった。渋く貫禄のある声。今の自分では出ない声だった。

 

『上杉が、上杉がこの臼井城に向かっております!総勢一万五千!』

 

 臼井城?あの人、今、臼井城と言ったな。間違いない。今、喋っているのは白井浄三。幻の軍師……!

 

『そうか。とうとう来たか……。胤貞様は何処に?』

 

『はっ、胤貞様自ら城下にいる百姓に城に籠るよう呼びかけました。城にいる兵を併せて二千になるとのこと。しかし、この兵力では……』

 

『そう狼狽えるな。五百程いなかった兵が二千にも膨れ上がったのだぞ。そのようなこと、集まった百姓達に言えるのか?』

 

『……申し訳ございませぬ』

 

『良い。其方の気持ちもわかる。故にこの戦の肝となるのもその気持ち(・・・)ぞ』

 

『はっ……』

 

『毘沙門天の化身と呼ばれているが、謙信とて人の子だ。絶対的ではない。そして、それに従う兵達もな。集まった兵、百姓に伝えよ「この戦、必ず勝てる!」とな』

 

『御意……』

 

 伝令は頭を下げた後、兵達の士気を高めるため、急いで走り去った。

 

オン ベイシラマンダヤ ソワカ

 

オン ベイシラマンダヤ ソワカ

 

お経を唱える声が彼方から聞こえて来る。

 

軍神がこの地に来る日は近い。

 

 

 

 

「はっ……」

 

 目覚めた真斗は周囲を見回す、視界にあるのは晴信から与えられた屋敷の部屋の壁だった。

 

「またか……」

 

 あの時、真田幸隆から長尾景虎のことを聞いてからずっとだ。あの毘沙門天の真言が頭の中から離れずにいた。

 わからない。なぜ、同じ夢を繰り返すのか。この夢の意味を真斗は知りたかった。

 

(どうすればいい。このままでも、夢とは片付けられるが、同じ夢がこうも続くと……)

 

 真斗は未来から来ている。彼は未来での常識により、架空の生物や「神」の仕業という出来事の多くは迷信だということがわかっている。ただ、戸隠山の「石」による力を得ている猿飛佐助や加藤段蔵のように未来でも説明がつかない力があるのも自分自身の目ではっきりと見ている。

 

「行ってみるか。越後に……」

 

 真斗は決心する。信濃の先にある越後に答えがあることを信じて。

 

 




天と地と姫とを全て読みました。原作では晴信の信濃侵攻と景虎の越後統一がほぼ同時期になっているのですが、本作では原作より少し史実に傾けさせているので、長尾家の越後統一は原作より少し遅めにしています。

合戦の布陣図について

  • 上田原の戦いの方が見やすい
  • 塩尻峠の方が見やすい
  • どちらも見えにくい
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