陣営のおいとま   作:J-2

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それぞれ好きなドリンクってあるよね


ユニオンと派閥争い

ユニオン寮

 

ユニオンのKAN-SEN達が生活する施設である。

普段平穏である食堂で珍しく議論が紛糾していた。

 

「やはりコーラと言えば赤い方だろう!」

「バカは程々にしなさい!青い方に決まっているに決まってます!」

 

どうやら戦艦同士で好きなドリンクについてもめているようだ。

最初こそはたった2人だけの議論だったんだが、次第に派閥が拡大し今や食堂を一杯にするほどに拡大した。

 

「どうしてこうなったんだ…」

 

2つの勢力の間で座っている指揮官は天を仰ぎそう呟いた。

 

 

 

 

 

事の発端は1時間ほど前に遡る…

 

 

 

 

 

 

「「ドリンクサーバーの新設?」」

 

食堂にて戦艦ノースカロライナと戦艦ジョージアは、ユニオン寮の視察に来ていた指揮官から聞いた話を復唱した。

 

「そうだ。今回、民間企業からの提案で、試験的にこの寮にドリンクサーバーを置いてみようということになってな。こちら側の補給課からの承認は出ている。」

 

食堂の机にパンフレットを広げた指揮官が蛍光ペンを片手に話を続ける。

 

「君達より先にエンタープライズにも聞いたんだがな…。食に無頓着すぎて意見がまとまらなかった。」

 

これにはさすがの2人も苦笑いを浮かべる。

 

「それで、君達に意見を貰いたいと思ってね。」

「でも、何で私達なんです?私に至っては特に好きも嫌いとないというのに」

 

ノースカロライナは疑問を浮かべる。

続けてジョージアも

 

「確かにこの人選には少し疑問はあるな。ノースカロライナも思っているだろうが、別に私達じゃなくても良くないか?」

 

ノースカロライナも頷く。

 

 

「2人を選んだのにキチンとした理由はある。実は今回つくドリンクサーバーはソフトドリンクサーバーなんだ。今考えているサーバーはコーラの種類が違うんだ。」

 

ジョージアは何かを察した。

 

「つまり、私にはコーラが好きとしての意見が欲しいということか?」

「その通り」

「では、私はどうなんですか?」

 

ノースカロライナは首をかしげ指揮官に問う

 

「ノースカロライナは好きでも嫌いでもない。だからこその回答を取り入れたかったわけだ。」

「そうなんですね」

 

ノースカロライナはなるほど、と納得した様子だった。

2人が納得した様子を確認し、指揮官はカタログを広げマークしてる部分を指す。

 

「私の方である程度目星はつけているんだが、この2つのサーバーのどちらの方がいいか聞きたい。」

 

するとジョージアとノースカロライナは迷わずそれぞれ別のサーバーを選んだ。

一瞬空気が凍りついた。

指揮官はあまり気にせずに続けた。

 

「おや?分かれたな。それぞれ理由を聞こう。まず、コーラ好きのジョージアから聞こうか」

「ああ。こっちを選んだのはコーラの元祖のメーカーだからだ。一般的知名度も高く、コーラ好きの私としてはこちらの方が好きだ。もう一方よりも大衆受けはするだろう。」

 

ジョージアは自信に満ちた表情で話した。

ノースカロライナは穏やかな表情をしながらも殺気を放っている。さすがの指揮官もこれは流すことが出来ず、少し焦った様子でノースカロライナに訪ねる。

 

「ジョージアの意見は分かった。では、ノースカロライナはどうして選んだんだ?」

「ええ、私がこちらを選んだのはこちらの方が無難だからです。ジョージアの方はあくまでコーラ好きとしての意見。コーラ好きじゃない人がそちらのコーラを好むとは言い切れません。知名度も謙遜なく、大衆受けに関しても負けません。むしろ、こちらの方が大衆受けするとも言えます。」

 

少し喧嘩腰で話を続ける。

 

「2つ並んでたとしたら私はこの青い方をとります。特に好き嫌いがないですけど、赤より青い方が手に取りやすいんです。だから、青の方が万人に受けますね」

 

微笑みながらジョージアに対し敵対感を出してる。

ノースカロライナの発言を聞きジョージアは分かりやすく敵対感むき出しで

 

「いいや、知名度も大衆受けも赤い方だね。チェーン店に行ってみてもコーラは赤い方が多い。」

 

ノースカロライナも負けずに

 

「それはあなたが行ってる店がそういう店に片寄ってるだけじゃないんですか?ファミリーレストランとかは青い方が多い気がしますけど。」

「君の方こそ片寄っているんじゃないか?こちらの方が世界的メーカーだぞ?各陣営に法人だって持ってる。知名度はこちらの方が上だ」

「あくまで企業戦略ってだけでしょう?こちらだって各陣営の企業に委託する場合はあれど、売っています。知名度は勝るとも劣ることはないです」

 

「なんだと?」

「なんですか?」

 

2人の間の空気が張りつめてるどころではなくなった。

すでに戦いの火蓋は切って落とされてる。

 

「落ち着け2人とも!」

 

指揮官は流石に不味いと思い2人を落ち着かせようと試みる。

だが、2人はもう止まらない。

 

「指揮官!邪魔をしないでくれ!この分からず屋をどうにかしないといけない!」

「分からず屋はどちらですか!貴方の方が理解できていないでしょ!」

「ユニオンのコーラと言えば原点にして頂点の赤い方に決まってるだろうが!」

「何が原点にして頂点ですか、寝言は寝ていいなさい!2番目だから味が劣るなどということはないです!味の進歩をさせてから発言しなさい!」

「今の発言は看過できないな!これだから独善的で排他的な青色主義者は!頭の中まで青色一色の上の空と来たか!」

「見境なくコミーに媚を売ったにも関わらず失敗した企業が何をいいますか!赤色主義者は血の色と同じ色をしているだけ野蛮極まりないですね!自由の象徴であり理性的な色である、青色こそ正義です!」

「コミーに魂まで売ってる奴等には言われたくないね!何が理性的な色だよ!劇薬みたいな思考回路をしてるのを自分自身で皮肉っているのかい?」

 

2人の口論は壊れた水道管のごとく勢いが落ちない。

指揮官は何とか納めようとするが、話の間に割り込むことすら難しい。そんな中…

 

「しきかーん?どうしたのー?」

 

いつも明るいKAN-SENから声をかけられた

 

「サンディエゴ…」

「何か揉め事みたいだねー。しかもあの2人となると珍しいけど。」

「サンディエゴ、実はな…」

 

指揮官は現状についてサンディエゴに説明した。

ふんふん、と頷きながらサンディエゴは興味津々で聞いている。

そして、あちゃーという表情を浮かべながら

 

「指揮官、やっちゃったねぇ…。それはかなりナイーブなやつだね。」

「この結果を見ればどんなにバカでも分かるさ…」

 

指揮官は項垂れる。自分が聖域を侵し、内戦まで発展させてしまったことを凄く後悔している。

それを他所にサンディエゴはイタズラな笑みを浮かべて

 

「それで、それで!指揮官はどっちがいいの?」

「え?」

「だーかーらー、赤と青のどっちが指揮官は好きなの?」

 

サンディエゴは小悪魔みたいに尋ねる。

ここでどちらかを答えれば全てが収まる。ただし、一勢力の禍根を残した状態で。いくら戦場に私情を持ち込むことがご法度だとしても、少なからず連携に悪影響を与えるだろう。

指揮官は返答に困った。正直どちらでもいいのだ。ユニオン陣営の労いになるのであれば。

 

「もちろん、私の髪色に近い赤だよねー☆」

 

サンディエゴは指揮官の腕に抱きつき、期待した目で見つめる。

甘えることで自らに勢力に取り込もうとしているのは端からみても理解できるものだ。

言い争いをしていたジョージアとノースカロライナも、言い争いをやめ、指揮官がどちらを選ぶか見ていた。

現状の勢力として赤が人数的に優勢であり、実力行使にも出ている。しかし、ノースカロライナは反論をすぐにしない。しかし、劣性を覆さないわけではない。ノースカロライナが出る必要がないのだ。なぜなら…

 

「いいえ、指揮官くんは青の方が好きよね」

 

指揮官の耳元で官能的な口調で話しかける。

びっくりして指揮官が振り向くとセントルイスが妖艶な笑みを浮かべて立っていた。

 

「ちょっとー邪魔しないでよー」

「あら、邪魔はしたつもりないのだけれど。それで指揮官くんはどっちがいいかしら?」

 

そう言葉にしながら、セントルイスはサンディエゴとは逆の指揮官の腕を抱き寄せる。

自然と身体を寄せ合う形になり、豊満なセントルイスの身体の感触が腕から伝わってくる。

 

「もちろん、私の髪色と同じ青色よね」

 

またもや、指揮官の耳元で囁く。

 

それを見たサンディエゴはプクーっと頬を膨らませ、負けまいとより指揮官の腕を抱き寄せる。

 

「違うんだから!指揮官は私の方を選ぶに決まってるわ!」

 

セントルイスは余裕の表情をうかべて

 

「ふふふ、やけになっちゃって。冷静さを欠いたらだめよ。ねぇ、指揮官くん」

 

ペースは完全にセントルイスの流れだ。

一瞬劣勢になった青が一気に巻き返し、今や青の方が流れに乗っている。

赤としてはあまりにも不都合な状態である。

 

 

そんな中

 

「る、ルイス!!あんた何やってるのよ!!」

 

ホノルルが顔を真っ赤にしてやってきた。

 

「指揮官にそんなことするなんて…は、は、は、は、ハレンチよ!!!」

 

ビシッとセントルイスを指差し、目をグルグルさせながら叱る。

しかし、セントルイスはどこ吹く風かの如くクスクス笑いながら

 

「あら、ホノルル。今私ね指揮官くんとだーいじなお話をしてるの」

「だ、だからってわざわざそんな近くなくてもいいじゃない!!」

 

ホノルルは動揺しきってる

セントルイスは満足したのか、微笑みながら

 

「そうね。ピッタリつく必要はないわね。私が好きでやってるのよ、からかってごめんなさい」

 

「そうよね…私間違ってないわよね。ん?…からかった?好きでやってる?」

 

「それよりホノルル、貴方はコーラを選ぶなら赤と青どちらか好きかしら?私は青の方が好きなんだけど」

 

疑問を抱いたホノルルに有無を言わさずにセントルイスは質問する。

 

「え?ルイスは青の方が好きなの?」

 

ホノルルはキョトンとして答える。

セントルイスの微笑みが固まった。

この流れはさっきも近いのを見た記憶がある。

指揮官は頭痛がしてきた。

 

「赤い方がいいじゃない。私はそっちの方が好きよ」

 

ホノルルはセントルイスの変化に気づかず、正直に自分の思いを口にする。

また、形勢が変わった。

セントルイスは指揮官の腕を離し、ホノルルに歩みより

 

「…ホノルル。ちょっとお話ししましょう」

 

少し怖い口調で腕を引っ張ってホノルルを食堂の外へ連れ出す

 

「え!?何で!?好みの問題じゃないの!?待って!指揮官!ルイスを止めて!待って!ルイスやめて!やだ!待って!違うのぉぉぉぉ…」

 

ホノルルはセントルイスに引き摺られて別の部屋に連れてかれた。

ごめん、ホノルル…あのセントルイス怖すぎて何もできなかった…頼りない指揮官でごめんな。後でアイス買ってあげるから。

指揮官は心の中で合掌するしかなかった。

 

「みんなして何してるんだ?」

「ん…眠い…」

 

食堂に来たクリーブランドとラフィーが話しに入ってきた。

 

「コーラなら赤と青どっちが好きって話してるんだよー☆」

 

サンディエゴが2人に簡単に説明する

 

「コーラかぁ、私は赤だな」

「ラフィーも」

 

2人はあっさり答えた

それを聞いたジョージアは鬼の首を取ったかの如くノースカロライナに対して

 

「どうだ、見たことか!やっぱりコーラと言ったら赤い方なんだよ!」

「ぐぬぬ…」

 

流石のノースカロライナも数的な圧倒的劣勢にモノが言えない。

 

「やあ、皆どうした?いつもより随分殺伐としているな」

「ホントホント、皆どうしたのー?」

 

ボルチモアとブレマートンが来た。

好機と見たのかノースカロライナはすかさず二人に問いかける

 

「こんにちは。突然で申し訳ないんですが、お二人はコーラと言えば赤と青どちらがお好きですか?」

 

突然の質問で2人とも動揺したがすぐに

 

「私は青かな」

「アタシも青の方かな」

 

圧倒的な数的劣勢をやや劣勢に持ち直した。

 

「そうですよね!お2人が理解してくれて嬉しいです!」

 

感激のあまりノースカロライナは2人の手を取りブンブンと興奮気味に握手する

しかし、ジョージアは面白くなさそうな表情を浮かべた。

そんな中、エセックスが近くを通った

ジョージアはそれを見逃さず呼び止めた。

 

「おーい!エセックス!少しいいか?」

「何?ジョージア?…え?何この状況…」

 

呼び止められたエセックスは若干引き気味に答える

そんなことはどうでもいいようにジョージアは続けて問いかける

 

「エセックスはコーラなら赤と青どっちがいい?」

 

ジョージアに食い気味で聞かれ、エセックスはたじろぐ

 

「何よそれ…。まあ、青い方が好きね」

「shit!!!!」

「!?まさか、あんたらそれで揉めてたの!?」

 

エセックスはジョージアの態度を見てすぐに察した。

ノースカロライナは笑顔でエセックスの方を見ている

エセックスはその視線に気付き、ジョージアから離れるかの如くとてとて、とその方向に向かった。

現在、赤対青は退場したホノルル、セントルイス含めても同数の戦いになった。

ついに口論から手法を切替え、民主主義らしく勢力の数で勝負に決着をつけようとジョージアとノースカロライナは色々なKAN-SENに声をかけ勢力を伸ばしていった。

 

 

 

 

 

 

 

そして、冒頭に戻る。

 

指揮官は天を仰ぎ、ボソッと呟いた

 

「助けて…誰でもいい…エンタープライズ…赤城…イラストリアス…」

 

その漏れ出た一言の直後に食堂の窓ガラスが甲高い音と共に割れ、食堂の壁の一部が吹き飛んだ

割れた窓から二人の影が食堂内に侵入し、砂埃をあげる壁の向こうからは1人の人影がこちらに向かってきている。

 

「指揮官様~?お呼びになりましたか~?」

「指揮官様、貴方のイラストリアスが参りましたよ」

「指揮官、私を呼んだか?」

 

食堂に轟音と共に侵入してきた、赤城、イラストリアス、エンタープライズの3人だ。

一瞬、他のユニオンのKAN-SEN達は3人の侵入に動揺したが、すぐにそんなことお構いなしに議論を再開する。

指揮官は、3人の名前を呟いたことを少し後悔しながらも藁にもすがる思いで3人に事情を説明する。

 

「指揮官様はなんとお優しいでしょうか。こんな自己権利を振りかざし、争いの火種を撒く連中にも労いを忘れないなんて」

「指揮官さま。さぞ、お疲れでしょう?どうですか、一段落したらロイヤル寮にいらしてアフタヌーンティーでも」

「すまない指揮官。私が決めていれば良かったんだが、無頓着だったものであまり深く考えてなかった」

「3人とも心配してくれてありがとう。少し発言に気になるところがあるが3人の意見を聞きたい」

 

先んじてイラストリアスが話はじめる

 

「指揮官さまの判断は間違ってはいませんわ。ですが、決断は間違っていると助言いたします」

「ほう?」

「判断として多くの意見を取り入れるのは、非常によい指標になります。ですが、決断するのまで委ねてしまうと大きな禍根を生みかねませんわ。最後に決断をするのが裁定者であればこそ、最低限の禍根を残す形で済みます」

 

イラストリアスの意見の直後に赤城が意見を述べる

 

「指揮官様、少し補足させていただきますわ~。裁定者が最後に決断することで両陣営に『裁定者が決めたことだから』という共通認識が生まれますわ。案が採用された陣営には安心を、不採用にされた陣営には責任の追求先が与えられます。だからこそ、最小限の禍根で済みますわ。まあ、指揮官様に責任を追求したら私が黙ってはいませんわ~」

 

赤城がコロコロと笑いながら述べる。

赤城の意見にすこし指揮官は苦笑いを浮かべる。

その後、エンタープライズが真剣な眼差しで

 

「指揮官。こうなってしまったのには私にも責任の一端がある。ユニオン寮の代表として私がその役を買って出よう」

 

そう述べると、議論を交わす陣営の間に割って入ろうとする。

しかし、指揮官はエンタープライズの腕を掴みひき止める。

 

「エンタープライズ、君がやる必要はない」

「何故だ?」

 

エンタープライズは指揮官の方に向き直り、問いかける

 

「2人の意見を聞いて気付いた。私がこの場の責任者だ。どこか他人事のように思っていたのかもしれない。だが、この議論の引き金を引いたのは私だ。責任の所在は私にある」

「だが…」

 

エンタープライズが話そうとするところを遮り、指揮官は話を続ける

 

「この議論を聞いているうちに私にも意見ができた。だから、それを私の責任を持って実行する」

 

そして、指揮官は不安そうな表情を浮かべるエンタープライズに向けて

 

「だから、エンタープライズ。良ければ君には私の意見の賛同者になって欲しい。責任者は私だ。だが、君は私一人で責任を負うことに抵抗を抱くだろう。だからこそ、賛同者になって欲しいんだ。そうすれば責任の一端を背負うことになる」

 

その言葉を聞いたエンタープライズからは不安の表情が消えた。

そして、笑みを浮かべて

 

「指揮官はそういう人だったな。わかった、その意見に賛同しよう。私は貴方の賛同者だ」

「融通がきかない頑固者で悪いね」

「なあに、いつものことだ」

「2人もありがとう。今度何かお礼をするよ」

「迷いが晴れたようで良かったですわ」

「お礼楽しみにしてますわね」

「お手柔らかに頼むよ」

 

指揮官はエンタープライズを連れ、議論の渦中へと進んでいく。

議論の中心であるジョージアとノースカロライナの間に入り、指揮官は一拍大きな音を立てる。

 

「君達、静粛に」

 

先程まで白熱していた議論は嘘かのように静まり返った。

瞬時に静まり返ることからも、どこかしらで両陣営共に議論が平行線でどこまでも続くことを理解していたのだろう。

そこに裁定者となるべき指揮官が入ってきた。

何かしらの結論が出されると期待を寄せたのだろう。

指揮官は両陣営に目を配り、話し始める

 

「君達の意見はよく分かった。だが、このままでは議論は平行線だ。だから私から代替案を提示する。もし、それに納得できない者がいるなら、即時意見申し立てをしなさい」

 

後ろについているエンタープライズに目配せをする。

エンタープライズは無言で頷く。

両陣営とも指揮官に注目する。

 

「ドリンクサーバーについてだが、本来1台だったのを2台にする。しかし、軍の資金を使えるのは1台のみでしか予算がない。そこで、私のポケットマネーにてもう1台を試験的に導入する。その後のことは導入後に考える。これで決着としよう」

 

食堂にどよめきが起こる

2台導入することはある種禍根を残さない最善策とも取れるが、資金を指揮官の負担とするのだ

両陣営とも指揮官には恩義を感じているために負担を強いることになろうとは思ってなかった

流石の賛同者として後ろについていたエンタープライズも動揺していた。

動揺を無視して指揮官は続ける

 

「何か意見はあるか?ない場合この案で決定し、経理部に通すぞ」

「待ってください」

 

ノースカロライナが声をあげた

 

「私達の問題を指揮官のみに負担を強いるなど到底看過できません」

「ほう。しかしノースカロライナ、私は責任者だ。君達の議論の終止符を打つ責任を持つことは当然じゃないか?」

 

指揮官は意地悪に問いかける。

意地でも自身をスケープゴートにするつもりだ

ジョージアもノースカロライナに続けて声をあげる

 

「だからといって責任の取り方があまりにも大きくないか?結局指揮官のみの負担となっているように感じる」

「そうしなければ、君達の片側の陣営に負担を強いることになりかねないか?私は責任者として、それを看過することはできない」

「私は指揮官の意見に賛同しよう」

 

エンタープライズはここで指揮官に賛同する。両陣営にさらに動揺が走る。

 

「私は指揮官の賛同者だ、だから指揮官の負担の一端を担う覚悟がある」

 

ユニオンの代表格が声をあげることにより、議論の流れは完全に指揮官の意見を採用する方針に傾きはじめた。

しかし、ノースカロライナもジョージアもあまり歓迎したくない意見の流れだ。

そんな中…

 

「じゃあ、私もその導入資金の負担をします」

 

エセックスが声をあげた

 

「エセックス、どういうことだ?」

 

指揮官は訝しげにエセックスにたずねた

 

「どうもこうも、私もエンタープライズ先輩と同じく賛同者になるってことですよ。負担の一端を担うことになるってことは指揮官の賛同者になるってことでしょう?」

「いいのか?君の陣営を裏切ることになるかもしれないんだぞ?」

 

指揮官はエセックスにも意地悪に問いかける。

自己犠牲をしてでも責任者を作りたいという信念があるからこそだ。禍根はなるべく最小限にしたい。その為に自己を犠牲にすることなど厭わない頑固者であった。

 

「そんなことを裏切りとする陣営に所属した覚えはありません。その程度で裏切りとするぐらいなら私から願い下げです。」

 

淡々とエセックスは話し続ける。

指揮官は黙り込んだ。

それを勝機と見たのかジョージア、ノースカロライナ共に声をあげる

 

「では、私も負担をしましょうか」

「私も負担をしよう」

 

2人の声を皮切りに、両陣営から指揮官の賛同者が増えてきた

最終的には賛同者しかいなくなっていた

 

「お前ら、どういうことだ…」

 

指揮官は動揺していた

指揮官の目論見では責任者に責任を押し付けて、ハイおしまい。両陣営ともハッピーエンドだったはずなのだ。

しかし、今やどうだ。

責任者の所在はいないも同然。総意となってしまった。

エンタープライズは笑いはじめた

 

「ははは!指揮官、今回は私達の敗けのようだ。いや、歴史的大勝利かな?」

「はあ…分かった…2台目の導入に関してはユニオン全体と私の負担としよう。」

 

指揮官のその声を聞いた途端さっきまでの緊張が嘘のように無くなり歓声が起きた。

 

イラストリアスと赤城はその光景を眺めていた

赤城はイラストリアスに向けて

 

「あなた、こうなることを分かってましたわね」

 

イラストリアスはニコニコしながら赤城に対して

 

「それは貴女もでしょう?」

 

赤城は嫉妬を決して隠さない状態で話す

 

「全く、憎らしいロイヤルですこと。付き合いが長いことがそんなに誇らしいですか?」

「フフフ…貴女も私と負けないくらい指揮官さまとは長い付き合いでしょ?お互い様ですわ」

「全く皮肉すらこんな風に返されては、争いがいがないですわ」

「貴女と私もかれこれ長いですからね。お互い気苦労が絶えないですわね」

「本当、その原因の一端に言われたらたまったもんじゃないですわ」

 

赤城はイラストリアスの発言に呆れ果てて指を弾く。

するとどこからともなく重桜の空母である加賀が姿を表した。

 

「赤城姉様、お呼びですか?」

「加賀、ユニオン寮の食堂のガラス修繕の手配をしておきなさい。なるべく内密にね。外部にでもバレたら面倒だわ」

「わかりました。」

 

そういうと加賀は瞬く間に姿を消した

 

「あら、赤城さん。わざわざ受け持ってくださるのかしら?」

 

イラストリアスは微笑みながら尋ねる

 

「今回だけよ。ユニオンの連中にも、貴女方ロイヤルにも貸しを作っておきたいしね。」

「あら、怖いですわ」

「こころにも思ってないこと口にしないで頂戴」

「バレてますか」

「当然じゃない」

「あらま、昔とは違うってことですわね。では、私も同じようにユニオンに貸しを作っておかなければね。」

 

パンパンっとイラストリアスが手をたたくと、背後にメイドが現れる。ロイヤル陣営のメイド隊の筆頭メイド、ベルファストだ

 

「イラストリアス様、ご用件を」

「ベル、ユニオン寮食堂の破壊された壁の修繕をお願い。どの程度かかるかしら?」

「修繕自体は1日あれば終わりますが、養生でもう数日頂きたいです。」

「分かったわ、早急にね」

「了解いたしました」

 

その言葉を最後にベルファストはその場から消えた

 

「貴女も強かね」

「お褒めに預かり光栄ですわ」

「ふん。もういいわ、私帰るから」

「お疲れさまです」

 

赤城は赤い焔となりその場から姿を消した。

イラストリアスもその姿を見送り、指揮官とユニオンのKAN-SEN達の方向を眺めて

 

「さて、私も戻るとしましょうか」

 

そう言ってユニオン寮を後にした。

 

 

 

 

後日、ユニオン寮の食堂には修繕された窓や壁と共に赤いロゴのコーラがデザインされたドリンクサーバーと青いロゴのコーラがデザインされたドリンクサーバーが並んでいた。

各々紙コップで自由にドリンクを注ぎ、仲良く談笑している。




軽いキャラ紹介

指揮官:道化、自己犠牲の塊

赤城:頭のいいヤベー奴

エンタープライズ:無頓着なヤベー奴

イラストリアス:自称指揮官の嫁のヤベー奴
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