今回も負けず劣らずコメディが限りなく少ない。
私はコメディが書きたいのに…
書き続けるとどうしてもコメディが削れる
どうして…(現場猫感)
煙草…
それは、百害あって一理あるかどうかすらも怪しい嗜好品である。
基本かっこつけたいから、大人の真似して吸いはじめた人がほとんどな気がする。
かくいうこの基地の指揮官もその一人である。
また、この基地に所属する男性兵士の半分は喫煙者だ。
KAN-SENにも嗜好品として嗜む者もいる。
そんな、喫煙者達の幕間のひととき…
基地内喫煙所
ここは喫煙家のオアシスであり、談話の場であり、情報共有スペース。
そして、喫煙家の最終防衛ライン
それ以外は基地内全面禁煙。
喫煙家にとって世知辛い世の中なのである。
「俺、煙草やめようかな…」
海軍憲兵隊所属の青年が紫煙を吐きながら呟く
「どうした、曹長。暗い顔をしてらしくないじゃないか」
指揮官は尋ねる、愛煙家だった青年が突如として禁煙をしようとしているのだ。
今はまだ独り身の青年を突如として自分の好きなことを絶とうとしてるのだ。
余程のことがあるのだろうと考えてしまう。
「最近、駆逐艦の子達と遊んでるとお兄さんなんか臭いって言われるんですよ…」
「あぁ…そういう…」
「言われたときはかなり心にきましたね…」
「子供は正直にものを言うからな」
青年はすっかりどんよりしていた。
今まで愛娘のように可愛がった子から無垢で鋭い言葉を食らったのだ。
誰だって辛い。指揮官も割り切ってなかった時はガチで辛かった。本当に自分の娘、息子なんかに言われたら割り切ってても辛い。孫ならもっと辛い。
「その気持ち分かるぞ。私も赴任してしばらくした時に言われた。滅茶苦茶心の奥に刺さるよな。アレ」
「指揮官殿も同じ経験をされてるんですね…」
「私だけじゃない。ここの喫煙家はほぼ全員言われてる。君のところの隊長もだ」
「ええ!?あの隊長すら言われたんですか!?」
「私も驚いたよ。キチンと消臭剤をかけて臭いを消し、喫煙家はもちろん嫌煙家にすら喫煙家であると感じさせない、あの憲兵隊長殿ですら言われてる」
「子供ってかなり鼻が利くんですね」
「全く恐ろしいものだよ子供というのは」
「ええ、そうですね」
彼等が話してる子供は決して一般的な人間の子供とは大きくことなる部分があるが、子供は子供という認識なのだろう。
指揮官と青年が話していると、喫煙所の扉が開かれる。
海軍陸戦隊の制服に身を包み、腕章には憲兵とかかれた40代前半の男が入ってきた。
青年は姿勢をただし、すぐさまその男へ敬礼をする。
「お疲れ様です!憲兵隊長殿!」
「ここでは堅苦しくするな。崩せ」
「は!」
憲兵隊長と呼ばれた男は青年を一瞥すると胸ポケットから煙草をだし、喫煙室に置かれていたマッチで火をつける
そして、肺にその煙を吸い込み、紫煙を吐き出す。
「憲兵隊長殿、今日は珍しいのを吸ってますな」
「おお、指揮官殿は気付くか」
「何回ここで話したと思ってるんですか」
「そりゃそうか」
ははは、と指揮官と憲兵隊長は笑いあう。
青年は意外そうな顔で2人を眺める。普段見せる上司たる憲兵隊長と様子があまりにも違うからだ。
指揮官はそれを横目で確認しつつも話を続ける。
「そう言えば何を吸っておられるのですか?」
「ああ、ユニオンの連中からユニオンスピリットなる煙草を貰ったんでね」
「憲兵隊長も賄賂を堂々と頂くようになりましたか」
「バカ言え、たまたまいつも吸ってる煙草を箱ごとユニオン寮のKAN-SENに渡したら、お礼にってくれたんだよ。等価交換だ」
「なるほど、そう言うことにしておきますよ」
「こんの若造が、生意気言うようになりやがって」
悪態をつきつつも2人は仲良く会話を続ける
「それにしてもユニオンスピリットですか…確か燃焼が遅いらしいですね」
「確かにいつも吸ってるやつよりは大分遅いな」
「コイツもユニオンスピリットをよく吸ってるんですよ」
突然、憲兵隊の青年の方に指揮官は話を振った
「ほう、お前もそう言えば吸うんだったな」
「は、はい!」
「しかし、銘柄は知らなかった。君がいつここに来てるかも知らなかったしな」
「隊長殿、もしかして嫌われてます?」
「うるせぇ!」
指揮官は相変わらず茶々を入れる。それに対して憲兵隊長はリアクションをとっている。いつもの光景だった。青年は上官を決して避けているわけではないと弁明する
「し、小官は業務に支障を出すことがないよう見回りの休憩時間にこちらに来ております!」
「なるほど、そりゃ会わんわけだ。俺と君は休憩時間が被ってないからな。」
憲兵隊長も納得し、そして感心した。
キチンと責務をこなし、業務外は迷惑のかからない範囲で息を抜く。規律ある軍人の姿を確認できたのだ。
「しかし、それだと今回憲兵隊長殿がいるのは変ですな。もしやサボりですかな?」
「しらばっくれやがって。てめぇが休暇を取らせたんじゃねぇか。働きすぎだー!って上官命令使ってな」
「そういやそうでしたな」
「では、何故制服を着て基地に?」
青年は素朴な疑問を尋ねた
憲兵隊長は紫煙を吐いて疲れたように呟く
「またヤツが面倒を起こしやがった」
「ヤツって、まさか…」
「あぁ、君の天敵だよ」
「ヤツですか…」
憲兵隊長と青年は理解をした。指揮官は理解したいけど理解したくなかったから、確認する。
「すまない、私にはそのヤツが、あるKAN-SENだと思うんだが…」
「ああ、テメェんとこのロイヤルの輩だ」
「…聞きたくないが今回は何を?」
「重桜の駆逐艦が水遊びしてるところを超望遠のカメラで盗撮しているという報告が部下から来た」
「…あのバカっ!」
指揮官は頭を抱えた。ニコチンとタールを吸った頭にもガッツリ響くような悲報である。
「憲兵隊長、小官も同行することは?」
「ああ頼む。ヤツを捕まえれるのは今のところ駆逐艦を除けば俺と君ぐらいしかいない」
「了解しました」
「それと指揮官殿」
憲兵隊長は指揮官に向かって悪い笑みを浮かべる。
「今回も内々で処理してやる。あとは分かってるよな?」
はーっと指揮官はため息をつき
「はいはい。いつものカートンで寄付ですね。しかも、休日出勤までされちゃあ気付け薬も追加で寄付かぁ…」
「おいおい、若造にもキチンと渡せよ」
「わぁーってますよ。曹長、君はいつものカートンでいいか?」
「よろしくお願い致します!最速で捕まえますよ!」
「その心意気やよし!行くぞ曹長!!」
「はい!隊長殿!」
上司と部下である2人は仲良く喫煙室から出ていった。
なお、いつものとは憲兵隊長と曹長が愛煙している煙草をそれぞれカートンでプレゼントということだ。
気付け薬は秘蔵の重桜産のウイスキーである松亀である。
それを寄付という名目で指揮官から渡すことで内々で処理して貰ってるのだ。
指揮官は一人になった喫煙室で新しい煙草に火をつける。
アルクローヤル
指揮官の愛煙している煙草である。
そして紫煙を吐いたあとに一人呟く
「あー…きっついなぁ…」
煙草もタールがキツいものを吸ってはいるが、仕事も激務だ。
内々で外部に漏らさないようにしてるのは、緩さを他の基地の連中や上層部に見せないため。つまり、基地外部の敵に尻尾や隙を掴ませないためである。
何事も緩急が必要。ここの指揮官のモットーである。しかし、これは上層部とは相容れない。
上層部は政治や世論との絡みも発生し、対外的な評価が非常に重要になる。政治や世論は結果を求める。しかも、結果を出すのは当然であり、過程にすらも目を光らせる。
少しでも過程や結果に不満があれば、大体は己のことを棚にあげ、声高に批判と称した罵詈雑言で揚げ足を取る。
上層部は自分達が不自由に動けなくならないように、そして組織の意見を通しやすくするためにも周りの目を気にしなくてはならない。
指揮官も重々それはわかっている。己も上級将校の一員であり、海軍学校で学んだ士官なのだから。
だからこそ、基地の外に悩みの種を蒔きたくない。
身内が緩んでる所を、敵に勘繰られて基地内の誰かが処分になったとしよう。その書類手続きなどの要らぬ面倒が起きる。ましてや進行中の作戦を台無しにされる危険性もあり、最悪の場合前線の一部たるこの基地の壊滅、放棄も考えられる。
だが、世間は長期的損失よりも短期的な失敗に注目するのだ。
それは、平和な世の中でも戦争中でも変わらない。
だからこそ、火の気が立たないように公人は躍起になるのだ。
ここまで長々説明したが、簡単に言うと
あのロリコン空母がやらかして、下手に外にバレたら面倒ごとが起こる。だから、憲兵さん達にお願いして火消しをしてもらう。
おかげで指揮官の頭が痛い。懐にも痛い。
指揮官は喫煙室の中で唸りをあげる換気扇を眺めながら、もう一本煙草に火をつけると、思わぬ客人が入ってきた。
「あら、指揮官じゃない」
「…オイゲンか」
鉄血の幸運KAN-SEN、プリンツ・オイゲンだった。
オイゲンは懐から銀色のヴェストを取り出し、一本煙草を口元に咥える。
咥えたまま、オイゲンは上目遣いで指揮官の方を見る
「なんだ?」
「あら、指揮官にしては察しが悪いわね」
指揮官はわかっていたが気付かないふりをしていた。
おおよそ、火がないのだろう。しかし、喫煙所にはマッチとライターが常備されてる。
火がないわけではない。つけようと思えばつけられるのだ。
つまり、オイゲンはわざとつけていないのだ。別の要求をしたいがために。
勘が良い諸氏は気付いているだろうが、指揮官の煙草には火がついている。オイゲンは火がついてない煙草を咥えながら指揮官の方を見ている。
指揮官はオイゲンから目線を反らす
「あら、どうして目線を逸らすのかしら?」
「…お前分かって言ってるだろ」
「ふふっ…ほら、早く火を頂戴」
「そこにマッチとかライターがあるだろ」
「違うわ、そんな無機質なものじゃなくて、ね」
「…恥ずかしい」
「あら、可愛いわね。でも、ダーメ❤️」
イタズラな笑みを浮かべながらもオイゲンは指揮官との距離をジリジリと詰めてくる。
指揮官も徐々に後ろに下がっていくが、ついには壁に当たってしまう。
オイゲンは距離を詰め続け、ついには指揮官まであと半歩のところまで来た。指揮官は諦めの表情で煙草を咥えた。
「分かったよ、火をつけてやる」
「そうこなきゃ」
指揮官は煙草を咥えたまま火のついた先端をオイゲンの未着火の煙草の先端にくっ付ける。
シガーキスというヤツだ。
オイゲンは自分の煙草に火が着くよう息を優しく吸い込む。
己の煙草以外にも、指揮官の煙草や指揮官自身を堪能するかのように。
無事に火が着き指揮官はすぐに顔をオイゲンから離す。
その様子をしっかりとオイゲンは確認し、イタズラな笑みを向け続ける。
「何度もやってるにも関わらずウブね」
「仕方ないだろ」
「そこが可愛いわよ」
「可愛いと言われて喜ぶ男じゃないからなんとも言えん」
「ふふっ」
かれこれ、オイゲンとは長く一緒にいるが、からかわれることにはあまり変わっていない。
オイゲンはふーっと艶かしい形で紫煙を吐いた。
「そう言えばさっき憲兵がここから出ていったわね」
「あぁ、アークロイヤル狩りさ」
「…大体察したわ」
オイゲンも見慣れた光景と判断し深く考えないことにした。
「ところで、今回は憲兵さん達の見返りはなんなのかしら?」
「…やっぱバレてるよなぁ」
「あんたとは長い付き合いじゃない。分からないわけないわ。イラストリアスもエンタープライズも赤城も知ってるわ」
「そうだよなぁ」
「で、今回は?」
「煙草1カートンずつと休出してる隊長にはウィスキーだ」
ウィスキーという言葉を聞いた瞬間、オイゲンは一瞬ではあるが目を輝かせた
指揮官はマズイと瞬時に理解した、だが口にしてしまったがためにもう時すでに遅し
「指揮官、私なんだか酔いたい気分になってきたわ。そろそろ終業も近いし今夜お邪魔してもいいかしら」
「…ダメと言ったら?」
「今回の件を鉄血上層部に打診する」
「…はぁ、分かった」
「もちろん安酒はダメよ。秘蔵のお酒がどこにあるかも分かってるんだから。」
「…ッチ」
「悪態をついても怖くないわね。小熊ちゃんが頑張って威嚇してるようにしか見えないわ」
オイゲンはクスクス笑いながら煙草の火を灰皿の上で消して、喫煙所の扉の方へ向かう
「じゃあ、今夜楽しみにしてるわね♥️」
「へいへい」
指揮官に手をヒラヒラさせながらオイゲンは喫煙所を後にした。
指揮官はそれを見送り、一人呟く
「はぁ…美女の相手も楽じゃねぇなぁ。戻って書類片付けるか…」
憩いの場が予想外の徒労を生む場になってしまったことにうんざりしながら指揮官は自らの指令室へと戻っていった。
指令室内でのお酒の集いでも一悶着あったが、それはまた別のお話…
尚、アークロイヤルは憲兵隊長と曹長に発見され5分も経たず捕縛された。
現行犯逮捕された容疑者Aは「私は駆逐艦の子達に危害が及ばないよう監視していただけだ」と供述しているという。
喫煙者の吸ってる煙草情報
指揮官:アルクローヤル(ノーマル)
曹長:ユニオンスピリット(ゴールド)
憲兵隊長:ツェント(10)
オイゲン:ヴェスト(シルバー)
それぞれモチーフの煙草があります。
調べれば出てくるよ。あんまりもじってもないし。
体に悪いから吸わないですむなら吸わない方がいいよ!