陣営のおいとま   作:J-2

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新年ですね。
一身上の都合であけおめとは言えませんが、

今年もよろしくお願いします!


無理矢理まとめたけど許してください!
何かしますから!


ロイヤルとゴルフ 後編

第1ホール 第2打目。

 

ここからの順番はグリーンから最も遠い人から打つことになる。

イラストリアスは3番のフェアウェイウッドを取り出す。

その間にボール位置が近いクイーン・エリザベスと指揮官は各々使うであろうクラブ複数持って自身のボールの位置へと移動する。

 

イラストリアスはベルファストからプレッシャーを感じた。

指揮官への寵愛を欲する者同士だが第1打で成功と失敗という対極の立場になった。

自身の指揮官に対する愛が足りないのでは、とも一瞬思った。しかし、そんなことはない。指揮官と歩んだ時間は空母の中で最古参である。指揮官の良いところも悪いところも基地の誰よりも知っている。先程のミスは気持ちが先行しすぎた結果であると結論付けた、自身の優位性を拠り所にし、油断をしなければ何の問題はない。

するとどうだろうか。ベルファストに対してプレッシャーは感じた、それが不思議と不安に直結はしなかった。むしろ、闘争心と自分への自信になった。原因は理解できていない。

だが、今はベストなショットが出来る。そんな自信が生まれていた。

 

イラストリアスはグリーンへ向けて3番を振り抜く。

スパン!

打球はぐんぐん延びていく。

横風が吹いていたが、良い方向に作用して球はピンから3ヤードほど離れたグリーンへと乗った。

イラストリアスが抱いた直感は間違っていないとの証明になった 。

「ナイスショットですわ、イラストリアス様」

 

ゴルフカートから見ていたベルファストに声をかけられる。

 

「ありがとうベル。たまには直感も信じてみるものね」

 

イラストリアスは満足そうな微笑みを浮かべている。

 

ベルファストはそのイラストリアスの表情を見て安心を抱いた。

恋敵だが、相手のコンディションが悪い状態で勝ったところで心に完全なる諦めをつけさせることはできない。いつ、隙を見つけて逆襲をしてくるか気が気でなくなる。それは指揮官に全力の愛を注ぐことが出来ないことを意味する。

だからこそ、恋敵とは全力で闘い、勝利したいのだ。

もし、仮に、万が一、自分が敗北することがあったとしよう。それが全力で挑んだ勝負であれば諦めがつく。

それがベルファストの恋に対する戦争論である。後味の良い濃密さなのだ。

だから、このゴルフの勝負もイラストリアスやクイーン・エリザベス、指揮官にも全力で勝負し勝利をおさめたい。

 

ベルファストは基地の中でも上位に位置する武人気質だ。

完璧な勝利にこだわるが、決してそれが逆手には取られない豪傑なのだ。だからこそ、基地への配属が最古参勢であるイラストリアス相手にも劣らないという自信がある。

 

 

所変わってクイーン・エリザベス

華麗なまでのイラストリアスのショットに感心する。

ミスを引きずらないで2打目でフォローを成功させた。同じロイヤルのKAN-SENとして誇らしく思うが、決して負けられない。

この勝負はロイヤルの秩序、基地の秩序を維持するためにも絶対的にクイーン・エリザベスもしくは指揮官の勝利が必須なのだ。

ましてやクイーン・エリザベスは誇り高い王家の出身である。

勝負事において決して遅れを取るわけにはいかない。

気高く誇り高くあらねばならない。そう生きてきた。

だから、完璧な勝利を遂げる。それが王家として臣民に見せるべき姿である。達成しうる実力も備えてる。ベルファスト、イラストリアスに拮抗することはあれど決して劣ることはない。

その根拠のある自信と誇りを胸に今するべきことは、確実に4打以内におさめることだ。

実現可能性が限りなく高く、負けることはない。最下位にはならない。

勝利に固執することは余計な力を生み出す。そして、無駄に体力を消耗する。これがクイーン・エリザベスの持論である。

実際、イラストリアス、ベルファストのコンディションは今までにないほどに素晴らしいものだ。言い換えるならば、未知の領域、どの程度の燃費かも把握できていない。

不確定要素が多すぎる。最大の弱点はそこにある。ならば、下手に現段階で勝負に出て要らないミスを招くわけにはいかない。

 

だからこそ、確実に己の実力の範囲内での最善策を取る。

確実な勝利への布石を敷くために。

クイーン・エリザベスはフェアウェイウッドよりも得意であるユーティリティを持ってきていた。

確実にグリーンへと近付けるため、そしてあわよくばグリーンに球を乗せるために。

 

スパン!

 

「ナイスショット!」

 

近くの指揮官が声をあげた。

 

クイーン・エリザベスの打球は狙いどおりに、狙い以上の所に落ちた。グリーンの端だ。あわよくばという場所に落ちた。

あとはパターでいかにカップに近付けるかどうかである。

一回で入れる必要はない。確実な勝利を手にする布石は確実に敷けている。クイーン・エリザベスの表情は気高く誇らしい笑みを浮かべていた。

 

指揮官は焦っていた。他の皆は調子が良い。自分はどうだろうか?決して悪いわけではないが周りから比べるとそうでもない感じだ。果たしてこの様で勝利を引き寄せるためのショットは打てるのだろうか?

いつになく心が乱れていた。あの景品、周りのコンディション、勝たなければならないプレッシャー。決して仲間を失うことはないにしろただならぬ緊張感を持ってしまう。

3番アイアンを持つ手が震える。全く集中できていない。このまま打てばボールは思わぬ方向に飛び、ペナルティになる可能性が高い。しかし、緊張が解けない。それが更なる焦りを生み、体がより強張る。

 

いつもらしくない、一旦深呼吸をしよう。

 

指揮官は深呼吸をした。身体の中に新鮮な空気が入ってくる。

コースを包む芝生と土、周りを囲う木々それぞれが調和し雄大な印象を抱く香りが身体を駆け巡る感覚がする。

少し頭がスッキリしてきた中で、ふと思った。

 

勝敗関係無しにゴルフを楽しんだ方が良くないか?

 

思い返すと、軍上層部の中で開かれたコンペでも変に畏まらない方が成績は良かったし、周りからのウケも良かった。

むしろ、気張った方が参加者達に迷惑をかけたし、気を遣わせていた。

最悪のパターンだ。自分も楽しくない、相手も楽しくない。

最善策の自分も相手も楽しい方で成功してきたじゃないか。

じゃあ今回はどうだ?自分は楽しくない。相手は?楽しくないかもしれない。真剣勝負だ。

相手を変えるのは難しい。ならばどうする?最悪のパターンではない悪いパターンに変えればいい。

それは、自分は楽しい、相手は楽しくない(もしくは分からない)パターンだ。

それであれば、良い成績になるかもしれない。不確定要素の多い経験則になるがこの場合仕方ない。

こちらの手数は限られており、相手は未知の実力を発揮してる。だからこそ、少しでも自分にとって良い流れを作れば良いだけだ。

だったら、楽しむしかない。そうしなければつまらない。

この際、寵愛だろうが貞操だろうが子種だろうがくれるもんはあげる覚悟でやってやろうじゃねぇか。

 

指揮官は吹っ切れた。だからこそ、緊張も解けて手の震えもなくなった。

指揮官は自分が得意とする3番アイアンを振り抜いた。

 

「ナイスショットよ!」

 

クイーン・エリザベスが声をかけた。

打球はぐんぐんとピン目掛けて飛んでいく。追い風も作用してより一層遠くへ行った。

球はグリーンに着弾しコロコロ転がっていく。

 

奇跡が起きた。

 

ボールがカップの中に入ったのだ。

遠いために見えてはいない。参加者全員は指揮官の球はグリーンのピン側にあると思っている。

 

ゴルフカートが来るまで指揮官はキャップの鍔を掴み遠くを見据えていると、後ろからクイーン・エリザベスが声をかけてきた。

 

「かなり良い打球だったわね」

「お褒め頂き光栄です陛下。私の中で1,2を争う位良いものでした」

「確かにあれは誇って良いぐらいのモノね」

「陛下の打球も素晴らしいものでしたよ」

「私にとってはいつも通りだけどね」

「安定していることは本当に優れていることですよ」

「ありがとう」

 

2人が談笑していると後ろからカートに乗ったベルファストとイラストリアスが来た。

 

「指揮官さま素晴らしい打球でしたわ」

「流石ご主人様ですわ、私も負けてられません」

「2人ともありがとう。さて、次はベルファストが打つ番だろう。私が運転するよ」

「そうでしたわね。ですが、ご主人様にお手を煩わせるわけには…」

「気にするな。ファストプレーがゴルフマナーの1つだろ?たまには他人に甘えな」

「…そうですわね。ご主人様、お言葉に甘えさせて頂きますわ」

「お任せくださいお嬢様」

 

全員の余裕が出たのか軽口も出るようになってきた。

 

ベルファストの打球の近くまでカートを動かした。ベルファストは7番アイアンを取り出し、球の近くまで行く。

 

ベルファストは一回深呼吸をしてすぐに球を打った。

球はきれいにグリーンへと飛んで行き、ピン側に落ちて止まったようだ。

全員がグリーンに球が乗ったのでグリーン目指しカートを動かす。

 

「今日は皆調子が良いわね」

「そうですわね。私は1回目少しミスをしてしまいましたけど」

「あんなのミスの内に入らないさ」

「そうですわ、イラストリアス様。結果全員グリーンに2打で乗ってるではありませんか」

「それもそうですわね」

 

軽く談笑してるとグリーンに近付いてきた。

カートを一旦止めて、ピンから最も遠いクイーン・エリザベスが真っ先に降りた。続いて、イラストリアスとベルファストが降りる

 

「さて、パターに移りましょうか。下僕、カートを駐車エリアまで動かしておいてね」

「かしこまりましたよ」

「その間、ご主人様の球を探しておきますね」

「ありがとう、ベルファスト」

 

全員がパターを取ったのを確認して、指揮官はカートを停車位置まで動かした。

ベルファストは自分の球を見つけ、マーカーを置くと指揮官の球を探しはじめた。

しかし落ちたと思われる場所をいくら探しても見つからない。

 

「…?おかしいですわね」

 

ベルファストはイラストリアスやクイーン・エリザベスのライン上に入らないよう配慮しながら探す範囲を広げる。

しかし、見つからない。ベルファストが探してるとカートからグリーンへと指揮官がやってきた。

 

「ベルファスト、見つかったか?」

「申し訳ございません、ご主人様。それがまだ見つからないのです」

 

指揮官はあまりにも見つからないのに疑問を浮かべる

 

「落ちたのここら辺だよな」

「その通りでございます。ですが、見つからなくて…」

「ここだと変なところには行かないはずなんだが…」

 

2人は首を傾げる。落ちたらしき場所には一切ない。

 

「…!まさか」

 

何かに気付いたのかベルファストはピンの方向へ向かう。

指揮官の打球はカップに入っていた。

ベルファストは指揮官を呼ぶ。

 

「ご主人様!ございました!」

「おい、嘘だろ…」

 

指揮官はベルファストに向けて駆け寄ってくる。

 

「イーグルでございます」

 

ベルファストは微笑みを浮かべ、小さく拍手をする

遠くからパットのラインを確認していたイラストリアス、クイーン・エリザベスも近付いてきた。

 

「どうかされましたか?」

「2人ともあちこち探し回ったと思ったら急に立ち止まって。なんかあったわよね」

「陛下とイラストリアス様。ご主人様はイーグルですわ」

「「!?」」

「あぁ、私も信じられてないがベルファストが球をホールの中で見つけてくれた」

 

イラストリアスやクイーン・エリザベスどころか決めた指揮官本人ですら動揺している。

バーディやパー、ボギーに比べイーグルはなかなか決まることがない。むしろ、決まれば奇跡とも言える。技術があっても出来ないことの方が多いのだ。

 

「じゃあ現時点で1位は下僕ということね」

「そうなりますわね」

「現時点で-2の差ですか…細々と詰めるしかありませんわね」

 

パットが残っている3人はそれぞれの場所へ移動をしてパターをはじめ、第1ホールの結果は以下の通りだ

 

指揮官 -2

ベルファスト -1

イラストリアス ±0

クイーン・エリザベス ±0

 

 

 

その後、第1ホールの白熱した形は霧散し、いつも通りのゴルフに戻っていった。

そして前半が終わったときの結果は以下の通りだ

 

ベルファスト -2

指揮官 -1

クイーン・エリザベス ±0

イラストリアス +1

 

前半を終えて、休憩に入る。

ゴルフは基本的に前半9ホールを終えた後、休憩ということでご飯や飲酒を挟む。

そして、後半に挑むのだ。その後グダグダになることが多く…

 

「…カート乗ったら吐くかも。ゴメン、歩いていく…」

「下僕、飲みすぎよ…」

「指揮官さま…打ち終わったら私も歩きますので…肩を貸してくださいませんか…」

「イラストリアス様…」

「ベル…ヴィクトリアスとフォーミには内緒にしておいてね…」

 

2名やらかしている。

休憩に2人だけで黒ビール6杯とワイン2瓶を飲めばそうもなるだろう。端的に言ってこの2人長く一緒にいるだけあって行動もかなりそっくりである。

 

アホな部分は特に。

 

クイーン・エリザベスは指揮官とイラストリアスに問う

 

「あなた達負けたらどうなるか分かってるでしょ?特に下僕」

「…はい」

「…はい」

「そのままだと負けるわよ」

「…はい」

「…はい」

「下僕に至っては、骨の髄まで精気吸われるわよ。ベルに」

「陛下、流石にそこまではしません」

「いや、ベル、あなた前科あるからね。否定できる要素どこにもないのよ」

「前科ではありませんわ陛下。未遂です」

「未遂でもやらかしてるじゃないの、大して変わらんわ」

「…やっぱり、わらくしが勝たないといけらいですわね」

「そんなお酒でボロボロになってる貴女のどこに勝つ要素があるのよ…」

「やはり、私が完全なる勝利を…」

「…出来るものならやってみなさいな」

 

クイーン・エリザベスがただただ呆れて後半がスタートした。

 

案の定クイーン・エリザベスとベルファストは安定してショットを放ち、指揮官とイラストリアスはズタズタのボロボロであった。

 

結果

 

クイーン・エリザベス -2

ベルファスト -1

イラストリアス +18

指揮官 +18

 

当然と言えば当然の結果だった。

クイーン・エリザベスは勝利したのに釈然としない表情をしながら周りを見ている。

 

「あぁ…キャ◯ウェイのゴルフセットとご主人様の寵愛が…」

 

まあ、ベルファストは全力で戦ってた。休憩でお酒を飲んでもいいのに飲まずにゴルフに集中してた。

問題は残りの2人だ

 

「酒さえ飲まなければ…イーグルっていう最高のスタートだったのに…」

「お酒を飲まなければ、逆転のチャンスはありましたのに…」

 

多少酔いが覚めた2人が嘆いている。

クイーン・エリザベスは思った。2人揃ってアホとしか言いようがない。本当のアホである。仕事をやってる姿が想像できないくらい今はアホである。

勝利は勝利だとしてもアホ2人を見てるとにわかに喜べない。

というか、喜んだこっちが恥ずかしい。

なので淡々と告げる

 

「とりあえず、下僕日程調整しておきなさいよ。デートなんだから」

「かしこまりました…男に二言はございません」

「ベルとイラストリアスは次のお茶会までにモノを用意しておきなさいね」

「分かりましたわ」

「かしこまりましたわ陛下」

 

3人が返事したのを確認してクイーン・エリザベスは終幕の言葉を続ける。

 

「さて、今回のゴルフは終了。シャワー浴びて帰るわよ」

 

その言葉に従うかのごとく全員が建物の中へと入っていく。

今回のゴルフコンペはクイーン・エリザベスの勝利で終了である。

 

 

 

 

 

 

「さ、指揮官さま入りましょうか」

「何してんのよアホ。貴女はこっちでしょ」

「イラストリアス様……」




別になくても良い情報。

クイーン・エリザベス
ロイヤルのKAN-SEN代表の1人。もう1人はフッド。
指揮官に当たりは強いが信頼はしている。恋心より親愛に近い

ベルファスト
基地のロイヤルメイド隊 隊長にして筆頭ウォーモンガー 性欲も一線級


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