陣営のおいとま   作:J-2

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お正月記念として書きました(二週間遅れ)

1話目、2話目と作風がゴロゴロ変わるのは私に一貫性がないからです。
許してくりゃれ

皆シグルリは見たかな?
面白いよ。

びそくぜんしんはもちろん見てますとも


指揮官と正月

正月

新年をお祝いする行事である。

どの国も共通して新しい年のお祝いはする。

東煌は旧正月を盛大に祝う傾向にあるが、正月もキチンと祝う(指揮官調べ)

 

これはある基地の正月の様子である。

 

 

 

0900 基地内大宴会場

 

「えー、この基地所属のKAN-SEN達。そして、正月に不運にも当直になってしまった諸氏を労うための会にお集まり頂きありがとう」

 

大宴会場の床の間の前にて指揮官がズラリと並んだ皆の前でマイクを片手に淡々と話す

周りからは指笛やら歓声やらが響く。

忘れてはいけないがここの基地は前線である。フロントラインである。ドールズも少女も銘打ってないが、前線でフロントラインなのである。

無論この事も上層部には内緒である。無論、参加者の中に裏切り者が出れば、それ以外の者により私刑が発生するであろう。

それぐらい団結している。

 

「気持ちいいぐらいの反応ありがとう。新年から仕事なんてやってられないから今日は楽しく食べて飲んでいきましょう」

 

すると、指揮官は黄色いヘルメットを被り

 

「整備班!各机の上の指差し確認!」

「酒、お節、確認、ヨシ!」

 

各机が並ぶ列にいた当直の整備班員が指差し確認を行い、ヨシ!と言ったと同時に現◯猫と同じポーズを取る。

指揮官も同様にポーズを取る。周りからはクスクスと笑いが聞こえてきた。指揮官は満足して言葉を続ける

 

「確認ヨシ!では、これより飲み会を始めます!!かんぱーい!!!」

 

かんぱーい!!!と宴会場に集まった全員の声が響き渡る。

各々グラスに注がれた飲み物を飲み、机に並べられたお節を食べはじめる。

 

「えー、ご飯が足りない人は宴会場の後方にて各陣営の料理がブッフェ形式で並んでいるので勝手にとって食べてください。並んでる分しかないので、それ以上食べたい人は名乗り出てください。各自対応します。お酒も同様です」

 

連絡事項を伝えて指揮官も自席に戻る。

隣には初老の重桜出身の男が座っていた

 

「お疲れ様です指揮官殿」

「いやいや、整備班長殿こそご協力ありがとうございます」

 

どうぞ、とビールを勧められるままに指揮官は自らのコップにビールを注いでもらう。

 

「対して協力なんぞしていませんよ。うちの班員も全員喜んでやってますから」

「すごく助かりましたよ。このお礼はまた別の機会に…」

「いやいや、お礼なんていらんですよ。この会に呼んでもらったんですから!」

「ですけど…」

「あんまりしつこいと女に嫌われますぜ、指揮官殿」

「それもそうですね。分かりました、私からお年玉ということで…おーい!明石ー!」

 

指揮官は明石を呼ぶ。

この指揮官、読者諸氏はそろそろ気付いているであろうが、恩はキチンと返すタイプである。どんな手を使っても。

 

「指揮官呼んだかにゃ?」

 

とてとてとジュース瓶を片手に明石がやってきた。

指揮官は整備班長のとなりに座っていた整備班員とアイコンタクトをとった。

整備班員は意図を理解して整備班長の隣の席を空け、明石をそこへ誘導する。

 

「さっ、班長殿無礼講ですから、明石と語り合ってくださいな。何やら積もる話があると伺いましてね」

 

整備班長は指揮官の言葉に冷や汗を流す。何か不利益が発生すると思ったからだ。

しかし、結論は違った。指揮官は整備班長に耳打ちをする

 

「聞いた限りだと、我が基地に多大な利益がありそうですな。予算はつけておきましょう。是非とも頑張っていただきたい」

 

そう言って明石を整備班長の横に据えて

 

「じゃあ、明石をよろしく頼みますよ」

 

と一言整備班長に声をかけ離れていく

 

指揮官はKAN-SENを労おうとフラフラ宴会場をコップ片手に歩いていると

 

「指揮官」

 

鉄血陣営の面々が固まっているエリアから、白銀の髪を携えた薄幸の戦艦に呼び止められた

戦艦ティルピッツ。鉄血陣営を率いる戦艦ビスマルクの姉妹艦である。

指揮官を呼び止めたティルピッツの表情は少し曇っていた。

 

「どうしたティルピッツ」

 

何かを察した指揮官はティルピッツに何があったのか詳細を尋ねる。良くないことだというのは分かっていた。

 

「オイゲンがいつの間にか重桜の酒とロイヤルのウイスキーをそれぞれ一本ずつ飲み干した挙げ句、宴会場から出ていったわ…。嫌な予感がするの…」

 

物憂げな表情でティルピッツは語る。

冷や汗が流れる。絶対ロクでもないことになると瞬時に察した。

 

「ティルピッツ、オイゲンはどっちの方向に行った?」

「指揮官の執務室の方よ」

「Scheisse!!!」

 

ティルピッツはビクッとした。突然指揮官が大声をあげたからだ。

指揮官が思わず鉄血の言葉で悪態をつくには理由があった。

指揮官にはオイゲンの目的が分かったからだ。オイゲンも所謂古参と呼ばれるべきメンツである。

なので、執務室に何があるかも知っている。オイゲンは持ってる酒だけでは飽きたらず、執務室にある秘蔵酒を取りに行ったのだ。

宴会場に並んでいる酒も決して安酒ではないが、執務室にある秘蔵酒とは比較にならない。

それぐらい高価な酒を安酒の如く飲み散らかせるなんぞ、陣営が許そうと指揮官個人が許さない。

 

指揮官は動揺しているティルピッツを気にもとめずにすぐに執務室の方へ駆け出した。

 

しかし、時既に遅し

執務室には重桜の21年もの、ロイヤルの青いラベル等のウイスキーの空瓶が転がっていた。

飲みかけであったが、一個一個は高額で取引されてるモノである。そして、重桜の有名な高級ウイスキーの瓶を抱え着物姿のオイゲンが執務室の床に転がっていた。

 

「…オイゲン」

「あら~しきか~ん。きらのね~♥️」

 

明らかに呂律が回ってない。指揮官の頭に血が上る。だが、酒で酔いどれと化したオイゲンは指揮官が激怒していることなどお構い無しである。

 

「お前、今自分がとんでもないことをしでかしてるって分かってるか?」

 

指揮官の手にはいつの間にかマチェーテが握られている。

オイゲンはマチェーテの存在に気付いていながら、指揮官を煽る

 

「ふふふ…もしかして~、お酒飲んで昂ってきちゃったのかしら~。無理やり晴れ着を剥がそうとしてるんでしょ~」

 

その発言を聞いた指揮官は怒髪天を衝いた。

 

「ブッコロス!!!」

 

怒りに任せてオイゲンの脳天に向けてマチェーテを振り下ろした

しかし、KAN-SENと人である。素の性能が根本的に違う。

オイゲンは片手でマチェーテを白羽取りした。

そして、クスクス笑いながら煽る

 

「指揮官~、ただの人間がKAN-SENに勝てるわけないじゃない」

「んだと?試してみなきゃぁ分からねぇだろうが、酔いどれ。寝言はキチンと寝てから言え」

「常日頃から夢見がちな坊やには言われたくないわねぇ~」

「坊やで悪かったな、白髪ババァ」

 

この発言を聞いたオイゲンは先程までの余裕の表情が消え、眼光が鋭くなる。酒で赤くなってはいるものの指揮官をまるで射殺すように睨み付ける。

 

「……あんた。今なんて言った?」

「耳まで遠いときたか。ババァも結構年みたいだな」

 

2人の間を静寂が通り抜ける。

 

「…コロス」

「それはこっちの台詞だ」

 

オイゲンは構える。ボクシングのファイティングポーズである。指揮官は執務室にあった軍刀を鞘から抜き構える。

オイゲンが先に動いた。リーチの差が大きくあるにも関わらず、素早い動きで指揮官の間合いへ突撃していく。

あまりの早さに指揮官は対応できず、懐に入られてしまう。

オイゲンは着物の動きにくさをものともせず、的確に指揮官の顎を狙ったジャブを繰り出す。

指揮官は構えを解き、ジャブを食らわないようにギリギリでかわす。

それを狙っていたように、オイゲンは片手持ちになった軍刀を手刀で落とす。

カランと軍刀は床に落ち指揮官の手元から離れる。

指揮官は軍刀は放置し、徒手の間合いまで来たオイゲンの膝に向けて蹴りを放つ。

オイゲンは足元への意識を怠った為に、モロに攻撃を受けてしまう。

指揮官はその隙を逃さず、今度は同じ膝の側部から蹴りを加える。

オイゲンは姿勢を崩し、倒れるが、その勢いのまま横へ転がり、一旦指揮官と距離を取る。

 

「少しはやるわね。ちょっと前まではすぐ押し倒されてたのに」

「日々人間は成長するんでね。お前は衰えてるんじゃないか?」

「まだ軽い体操程度よ…!!」

 

オイゲンは地面に空瓶を指揮官の顔面向けて投げる。

指揮官は思わずオイゲンを視界から外し、避けるが避けた方向へオイゲンが指揮官の脇腹へと蹴りを入れる。

指揮官は受け身も取れず横へ吹き飛ばされる。

 

「あら?もう終わり?」

 

オイゲンは煽る。しかし、本人も分かっている。指揮官はこの程度でやられるほど柔ではないと。

その予想は正しく指揮官はわき腹を軽くさすりながら起き上がる。

 

「んなわけないだろうが。随分と人間相手に卑怯な手を使う。騎士の矜持とやらはないのか?」

「これは戦いよ。手段を選んでるほどかわいいものじゃないわ」

「そりゃそうかい。こちらもそのつもりだよ。お前が謝るまで徹底的にやらせてもらうからな」

「子供じみた理由ね」

「お前が安酒の如く飲み干した酒の金額は、子供が聞いたら腰抜かすだろうけどなぁ!!」

 

指揮官は懐から手裏剣を投げ放つ

オイゲンは常人ならできない、手裏剣の持ち手を的確に手甲で弾き、指揮官にとどめを刺そうと拳を握りしめ接近する。

指揮官は畳返しの要領で執務室のフローリングを踏み抜く。

オイゲンは身体をのけぞらせて急停止をかける。それを予想して指揮官は前方のフローリングを蹴り飛ばす。

オイゲンは身体を無理に捻り、木片を回避し床に転がる。

そこに接近し指揮官が踵落としを決めようとした瞬間

 

「恥れ者が!何を騒いでいる!!」

 

執務室の扉が勢い良く開かれた。

突然の出来事に動揺し、2人揃って扉を方を見る。

そこには鉄血の航空母艦グラーフ・ツェッペリンの姿があった。

その顔は真っ赤に染まっている。

 

「ティルピッツに頼まれて、卿とオイゲンの様子を見に来れば…主賓が祝いの席を放置するどころか、労い合う戦友を感情のままに罵り、攻撃し…」

 

ツカツカと2人へ近づきながら怒りを吐露していく。

 

「挙げ句には執務室を破壊して…誰にこの事態を収集させるつもりだったのだ!!!後先も考えずに行動しおって!!!」

 

2人の胸ぐらを掴み目の前で怒鳴り付ける。

2人は先ほどまでの血気盛んな様子が嘘のように黙り込み縮み上がっている。

 

「…片付けろ」

「「…はい?」」

「今すぐにここを片付けるのだ!!!」

「「ハイ!!」」

 

ツェッペリンから解放された2人はそそくさと執務室の片付けを始めた。

 

散らかった破片を回収し、穴の空いた場所はテープなどで一時的に塞ぎ、床の穴は周りにカラーコーンをおいたりした。

 

全てが完了したのをツェッペリンが確認し

 

「我は宴会場に戻る。2人もすぐ戻ってこい、いいな」

 

そう言って執務室を出ていく

 

残された2人はツェッペリンが出ていったのを確認し、ため息をついて同時に呟いた。

 

「「ツェッペリン、怖…」」




無くてもいいかもしれない補足

ティルピッツ

薄幸美人さん。鉄血の中でも落ち着いている人

グラーフ・ツェッペリン

にくすべお姉さん。
面倒見はいいが、何か周りに大きな不利益をもたらす個人的行動は絶対許さないウーマン



今年も更新頑張るゾイ。

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