プシューッ グチャァ ジジジ……
生まれた数……0匹
戦いで死亡……100匹
日没で死亡……0匹
新大陸にダマグモキャノンがいる
新大陸。その海岸から、僅かに内地へと寄った場所に大蟻塚の砂丘はある。そこには、巡り続ける生態系から逸脱した異物が鎮座している。
それは球の形をしていた。
すり鉢状に窪んだ砂地の中央にて、下半分が地中に埋まっている。表面には鈍い黄土色の金属板が貼り合わられており、日射の光をギラギラと反射していた。
球体はあちこちから細長いパイプが上向きに生えており、天頂には、小さな環状の鉄輪が天使の輪のように伸びている。
そんな砂丘に鎮座する異質な物体に興味を示すモンスターがいた。
クルルヤック。またの名を掻鳥。
二足歩行の恐竜のようなシルエットのモンスターで、空いた両前足で卵を抱えて持ち運ぶ習性のあるモンスターだった。
いつものように餌を求めて探索していれば、自然とその球体は目に入った。
はて、いつも食糧にしている卵とはなにやら趣が違う。
けれど丸いし、キラキラしてるし硬そうだ。大きさも丁度いい。
卵ではないかもしれないが、見ていて綺麗だし、巣に置いておけば外敵に襲われたとき武器になるかもしれない。
クルルヤックは球を遠目に眺めながらそう考えた。
よし、持って帰ろう。
そう心に決めてずんずんと砂丘を降り、暗い金の卵を両の前足で掴んだ時──それは起動した。
ぷしゅーっ! 無数のパイプから真っ白な蒸気が、天に向け勢いよく噴き出す。
想定外の球体の突然変異。それから、掴みかかった球の表面が想像以上の高熱だったことに驚いて、クルルヤックは大慌ててで飛び退いた。
その間にも球体は新たな動きを見せる。
地中に畳んで埋めていた四本の足を取り出し、立ち上がったのだ。
細い黒足を柔らかい砂地に突き刺し球状の胴体を持ち上げていく。そして最後の一本の脚を突き立てたとき、カン! と甲高い音が鳴った。
球体の脚のうち、三本は針金のように黒く細長い形状で、だが残る一本が部品が複合した金属質の義足であり、金属音の正体はこれだった。
三つの黒足と一つの鉄芯で丸い体をぶら下げた金属生命体は、呑気に欠伸でもするようにもう一度、ぶしゅーっと深く蒸気を噴出する。
未知の生命体との遭遇。クルルヤックは十分に距離を取ったうえで、それを呆然と見ていた。
それは通常であれば十分すぎる間隔距離。相手が繁殖期のディアブロスなどであれば少々心もとないが、ほとんどのモンスターから逃れるのに不足はない位置だった。
謎の物体を遠巻きから戦々恐々と眺めるクルルヤックに、球体がアクションを起こす。
クルルヤックは球体の動向をつぶさに観察し、警戒していた。
突進をしてくるだろうか。あの細い足と、小さくて丸い身体で?
ならば、飛竜のように口から灼熱の息吹を飛ばしてくるか。口すら見当たらないあの卵が?
そのどれでもない。
クルルヤックの耳は、肉の裂かれる生々しい水音を聴いた。
それはまさしく、野生に生きる彼らが眼を疑う光景だった。
球体の生命体は下半球が二つに割れ、展開されたのだ。断面に見える明るいピンク色の肉の隙間から顔を出したのは、漆黒の円筒。
じじじ、と羽虫のような振動音を伴いながら、円筒から延びる真紅の光がクルルヤックを貫く。
生き物のあるべき姿を逸脱した冒涜的な容姿に、『おぞましさ』という未知の感情をクルルヤックが抱いた瞬間。
黒い円筒の炸裂を見た。刹那、クルルヤックは身体が灼けるような感覚と共に倒れ伏していた。
二発三発と続けて、高熱の何かに体を撃ち抜かれていく。訳も分からないまま必死に起き上がり、発達した後ろ脚のバネを全開に狭い洞窟の中へと飛び込む。
岩の壁面ごしに爆発音が等間隔に響いている。音に怯えて、足を引きずりながらクルルヤックはさらに洞窟の奥へと消えていく。
目標を見失った奇怪な生命体は最後にもう一度勢いよく放熱して、引き裂いた下半身を閉じて球状の姿へと戻った。
そしてゆっくりと胴体を降ろし、また最初のように砂に半身を埋めたのだった。
「なんだ、あれは……!」
そして、それを見ていた者がいた。
新大陸のハンターの一人。調査団の者。偶然にも掻鳥と球状生命体の顛末を見届けていた者がいた。
人工物と融合し、機械化した正体不明の怪虫。これの存在はただちに調査団の本部へと伝わり、更なる調査活動の実施が決定。
過去の文献情報や既存の生態系、そして新大陸の植生。
そのどれにも属さない、まったく新しい異端の存在を指し。
──調査団および書士隊は、これを新たな『古龍』と認定した。
こういうのをここに集めます。