怪文書、集めました   作:へか帝

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ブルアカの面白い二次が読みたいという欲と、SEKIROの梟に焦点を当てた作品を書きたいという気持ちが融合事故を起こしました。
ブルーアーカイブのリリース一か月くらいに書いて以来、放置してたのでここに投下します。


ブルーアーカイブと大忍び

 かつて葦名に名を馳せた古い忍び、梟。

 彼は自らの老いたるを自覚したとき、忍びの在り方に背く願いを抱いた。

 それは『己の名を日ノ本中に轟かせる』というもの。

 その野望の根本には、死への恐怖があった。

 

 自分を殺し影に生きるのが忍びであり、死地に身を置くことなど、ありふれた日常でしかない。

 だが大忍びとさえ呼ばれた老獪な忍びなれども、あるとき酷く死を恐れるようになった。

 梟は気づいたのだ。隠密として生きた己が死んだとき、自分がこの世に生きた証をただの一つも遺せないことに。

 だから葦名を、生まれ故郷を謀った。

 

 虎視眈々と睨みを利かせる内府方と内通し、戦で疲弊した武家の内情を密告した。

 その目的は葦名に秘められた不死の血。竜胤と呼ばれるそれを手中に収めんと二年を跨ぎ張り巡らせた謀略は、やがて大詰めと至る。

 舞台は黄昏時の葦名城、天守閣。

 己が覇道に最後に立ちはだかったのは、かつて己が戦場で気まぐれに拾い、息子として迎え入れた野良犬。

 ほんの戯れにと己が技の粋を叩き込み、熟達の忍びへと育て上げた、梟ただ一人の愛弟子であった。

 野良犬は時を経て狼となった。既に倅は梟に従順な飼い犬ではなくなっていたのだ。

 狼は義父に嵌められた"掟"という首輪を引き千切り、主のため命を賭して義父と刃を交えた。

 そして、梟は狼に敗れた。

 

 生きた証を何ひとつ残せぬことをずっと畏れていた梟は、最期に父越えを果たした狼に葬られ、安らかに死を受け入れた。

 だが。

 

 

 ◆

 

 

「因果とは、まこと異なものよ……」

 

 梟は未だ生き長らえていた。それも異なる時代、異なる世界で。

 大規模な学び舎が幾千と寄り集まり、連邦を形成した巨大学園都市、キヴォトス。

 訪れた当初は困惑を極めたが、そこは忍び。忍び潜む事こそ忍の本懐。群衆に紛れ土地に馴染む能力もまた備わっていて当然である。

 迅速に地を掛けては聞き耳を立てて情報を収集し、あるいは忍び込んだ先で図書を読み耽り知識を集めた。

 建築物からして見慣れぬものだったため、異国に流れ着いた可能性もあったが、幸いにして言語は梟の知るものと類似していたことも僥倖であった。

 中でも目をむいたのは、銃火器の存在。連装式の石火矢は一心が所有していたが、この世界のそれは遥かに進歩した代物であった。

 殺しを生業とするものなれば、やはりどうしても興味を惹かれるものだ。それも一般的に流通しているとなればなおさら。

 他にも梟の知識では及びもつかないような文明の利器の数々。己の常識が根本から覆される感覚を梟は感じた。

 少なくない動揺はあったものの、梟はそれに柔軟に対応することができた。何故なら、梟は初めから生き方を変えることを決めていたからだ。

 もっと言えば、梟はとうに忍びとして生を捨てることを決めていた。

 

 大忍び、梟はあの日、斜陽の天守閣にて死んだ。

 他ならぬ自らの倅に父越えを果たされ、葬られたのだ。

 だから忍びとして梟はもういない。

 もとより、梟は自分を夢破れて最期を迎えた矮小な老人に過ぎないと捉えている。

 紆余曲折あったとはいえ、満足して亡くなった身の上。置かれた状況にしたって、あるはずのない余生を過ごしているようなものなのだ。

 未練などあるはずもなかった。

 

「いかがなさいました?」

「お気に召されるな。老人の独り言です故に」

 

 梟に問いを投げたのは、長い黒髪に青い瞳の若い女性。名を七神リン。連邦生徒会所属の幹部であった。

 

「では改めて。あなたが、連邦生徒会長がお選びになった先生……でよろしいんですよね」

「恐らくは、じゃがの」

「こんな状況では、お互い推測形でお話するしかありませんか」

「構わぬ。して、仔細はどうなっておる」

 

 忍び以外の生き方など知らぬ梟であったが、人間万事塞翁が馬とも言う。長く生きれば何があるかなど想像もつかないものだ。 

 今や梟は装いも慣れ親しんだ鳥蓑を脱ぎ去り、格調高いとされるスーツなる衣服を着用している。

 

「話が早くて助かります。あの生徒会長がお選びになった方だというのも納得ですね」

 

 梟の置かれた状況からしてみれば余裕とは程遠いが、年相応の落ち着いた振る舞いを見せた梟にリンは安堵の表情を浮かべる。

 早速本題に入ろうとしたリンだが、間の悪いことに話し出そうとした彼女をエレベーターがチン、とフロアに到着した音が遮った。

 

「連邦生徒会長に会いにきました。風紀委員長が現状に対する回答を要求しています」

「主席行政官。お待ちしておりました」

「代行! 連邦生徒会長を呼んできて!」

 

 エレベーターからなだれ込むように飛び出してきたのは、三人の少女。

 一人は亜麻色の髪をした眼鏡の少女。左腕に『風紀』と書かれた腕章を巻いている。

 一人は黒い制服に長銃を携えた赤目の女性。腰より長く黒髪を伸ばしており、とてつもなく胸が大きい。

 一人は紺色のツーサイドアップが印象的な、白衣の少女。

 他にももの言いたげな制服姿の少女が数名続いていた。

 

 話に水を差されたリンは、いかにも面倒なことになったと言いたげに深く溜息をついてから口を開く。

 

「皆様のご用は今、学園都市に起きている混乱の責任を問うためでしょう?」

「そうよ! 数千もの学園自治区が混乱状態なの!」

「停学中の生徒が矯正局から脱出したとの情報もあります」

「出所不明な武器・兵器の不法流通の増加率が2000%を突破しました。学園生活に支障を来たすのも時間の問題です」

 

 梟はそれらの具申を、リンの隣で腕を組みながら寡黙にして聞き届けていた。

 傍らに静かに佇む2m超の巨大な老人の存在感は凄まじく、少女たちは苦情をまくしたてながらもちらちらと老人の様子をうかがっていた。

 

「まずは結論を。連邦生徒会長は行方不明になりました」

「え!?」

 

 リンがさらりと明かした事実に生徒たちが驚きの声を上げた。

 

「現在の連邦生徒会は行政制御権を失っております。ですが、ただいまその問題は解消いたしました」

「……それが儂を呼びつけた理由かの」

 

 蓄えた髭を撫でながら、梟が厳かに言う。

 

「はい。この先生こそが、フィクサーとなってくれるはずです」 

「この人が!?」

「待って。この先生はどなた?」

 

 生徒たちに動揺が走る中、紺色のツーサイドアップの少女──ユウカが冷静に問うた。

 

「これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が指名した人物です。お名前は──」

「儂の名は……よい。ただ、先生とだけ。それでよかろう」

「だ、そうです」

 

 腕を組んで仁王立ちをした梟が重苦しい声で言い、リンもそれに習うものだから、他の生徒は口を挟めなかった。

 

「さて、先生はとある部活の担当顧問としてキヴォトスにいらっしゃいました。名を連邦捜査部『シャーレ』。

 詳細は省きますが、一種の超法規的機関です。ここから30kmほど離れた部室に先生をお連れしなくてはなりません。モモカ!」

 

 リンが虚空に呼びかけると、人影がホログラムによって映し出される。白衣に身を包んだ桃色のツインテールの少女だった。

 

『直行ヘリの手配しろって? 無理無理、今シャーレの部室がある外郭地区は戦場だよ』

「……どういうことです?」

「停学中の生徒が辺りを焼け野原にしてるみたい。どこからともなく手に入れた巡行戦車まで乗り回してさ」

 

 リンが鋭い声で聴き返すが、モモカと呼ばれた少女はあくまでもマイペースに気ままにお菓子をつまみながら、他人事のよう詳細を報告する。

 一方の梟も、小難しい顔をしてモモカを、いやホログラムそのものを睨んでいた。

 

(自らの姿を遠方に投射しておる。幻のようで現でもあるか。科学。幻術とは似て非なるものよな) 

 

 未知そのものである科学の産物を目の当たりにした梟は、瞳の奥で静かなる感嘆を持ってホログラムを観察していた。

 梟が常識を覆す代物を目の前にしてなお驚く姿を見せないのは、容易く隙を見せまいとする、忍びとして染みついた癖のようなものであった。

 

「シャーレの建物を占拠するのが狙いかな。何か大切なものでもあるんじゃない? あ、私お昼ご飯届いたからこの辺で。じゃあね先輩っ」

「っ……」

 

 不穏な情報だけ残して一方的に通信を切ったモモカ。後輩の傍若無人なふるまいには相応の怒りを抱いているらしく、リンは苦虫を嚙み潰したような表情で静かに体を震わせていた。

 

「手筈が狂うたか」

「だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

「……えっ? 何、どうして私たちの方を見るの?」

 

 唐突に視線を向けられた生徒たちがおもむろにたじろぐ。面倒ごとの気配を感じとったらしい。

 

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいますので。ええ、心強いですね?」

「……えーっと」 

「さ、行きましょう」

「ちょ、どこに行くのよ!?」

 

 矢面に立たされたユウカが言葉を濁そうとするも、リンは有無を言わさず全員を外郭地区まで連行した。

 

 

 

 

 

 

「なによこれーっ!!」

 

 着弾した砲弾の轟音、まくりあがるアスファルト、土煙。がけたたましい銃撃音の飛び交う中、ユウカは抗議の声を上げた。

 

「なんで私たちが不良たちと戦わないといけないのよっ!」 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためにはシャーレの部室奪還が必要ですから……」

 

 風紀委員の腕章をつけた少女、チナツがユウカを冷静に諭す。

 

「それはわかってるけど! うちの学校じゃ生徒会所属でそれなり扱いの私が、なんでこんな……!」

 

 なおもぶつくさと不平不満を漏らすユウカ。彼女の主張は尤もだが、今は場所が悪い。ここは戦場だった。

 タタタタッ、と銃声が響き、凶弾がユウカを襲う。

 

「い、痛ったぁ! これ違法JHP弾でしょ!」

「ユウカ、伏せてください。それにJHP弾は違法指定されていませんよ」

 

 黒髪の少女、ハスミが冷静にユウカを窘める。ユウカと異なりハスミは完全に状況にこの戦地に適応していた。 

 

「うちの学校じゃこれから違法指定されるの! 傷が残ったらどうするのよ」

「ともあれ今は先生を守ることが最優先。部室奪還はその次です」

「ハスミさんの言う通りです。先生はキヴォトスの外からいらした方。銃弾一つで命にかかわる恐れがあります」

 

 チナツがハスミの主張に同調し、ユウカもすぐに頷いた。

 

「分かっているわ! 先生は戦場に出ないで安全な場所にいてくださいね!」

 

 だが、あの梟が戦場で女子供に守れているだけの軟な男であろうか。いや、そんなはずはない。

 

「否、心配には及ばぬ。戦場など庭同然よ」

「ええっ! 先生自ら出るんですか? まあ、先生ですし……」

 

 梟の発言に思わず否を唱えようとしたユウカだったが、明らかに常人離れした梟の体躯を視界に収めると、まあ大丈夫かと考えを改めた。

 なにせこの梟、明らかにただの老人ではない。傍にいるだけで感じ取れる威容は、その巨躯だけが理由ではないはずだ。

 

「分かりました。これより先生の指揮下に入ります」

「生徒が先生の言葉に従うのも道理ですね。よろしくお願いします」 

 

 





第一段落だけコピペすれば他のクロスオーバーに使えそう
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