怪文書、集めました   作:へか帝

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コーラちゃんはこれで品切れです


コーラちゃんかわいいヤッター!(5)

「悪いな春田さん、手伝ってもらっちゃって」

「いいんですよ、これくらい」

 

 基地の倉庫で、春田さんには資材の整理を手伝ってもらっていた。

 普通、こんなものは指揮官や戦闘を行う人形が当たる作業ではない。でも普通の話をしたって仕方がないんだ。だってうちの基地にそんな人的資源の余裕はないからね。

 ちなみに春田さんをお手伝いにチョイスした理由だけども、ある程度身長のある人形なら誰でも良かったんだよな。

 ただ、近いうちにそう言う人にこえをかけようとしているという相談を春田さんにしたら「私がいるじゃないですか」と即答されたのでそのままお世話になっている。

 

「気を付けて下ろすんだぞー」

 

 棚の上のダンボールに手を掛けている春田さんに注意する。あのダンボールは確か飲料水が入ってるから、見た目より重いはず。

 

「あら、へっちゃらですよこれくらい。こう見えて私、力持ちなんですから……いたっ」

「ああ、言わんこっちゃない……」

 

 頭上に抱えるようにダンボールを持ち上げていた春田さんだが、重さを甘く見ていたのか手を滑らせ、ゴスっという痛々しい音と共に頭をぶつけていた。

 

「けがとかしてない?」

「あいたたた……お恥ずかしい。はい、なんともないですよ」 

 

 そりゃよかった。角からいったように見えたから見た目以上にグレートな一撃かと思ったが。時々忘れるけど彼女たちは俺らと違う人形なんだもんな、そら防御力も違うか。

 

「そういえば私、指揮官と一緒に作りたいものがあるんですよね」

「ん、今か?」

「ええ、丁度二人きりなので都合がいいんですよね。お願いできますか?」

「まあ、物によるとしか言えないかな。何を作るんだ?」

 

 春田さんには普段からにお世話になっているからな、まあよっぽどの者でもない限りはかなえてあげたいと思う。ましてや春田さんの方から何かをねだることなんてめったにあることじゃないからな。

 

「子供をつくりましょう」

「うわああああああ!」

 

 俺は逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日以来、春田さんの様子がおかしい。

 

「指揮官? どうしました?」 

「い、いや。なんでもない」 

 

 あのあとも、春田さんには変わらず副官をお願いしている。特に不審な言動や動きはない。ひょっとすると、あのときの倉庫での出来事は悪い夢か何かだったんじゃないだろうか。だって春田さんはこんなに真面目なんだから。

 

「そうですか。指揮官は子供が何人ほしいですか?」

「おっと?」

 

 ゆめのつづきがはじまってしまったようだ。 

 

「あー……春田さん。子供は作らないよ?」

「なんでですか?」

 

 なんでですかってなんですか?(困惑)。そっくりそのままお返しさせてくれ。

 

「だってほら、障害だって色々あるしそもそも俺たちってそんな関係じゃないし、ね?」

「私の何がいけないんですか? 教えてください。全て直します。最悪取り替えます。だから、だからそんなこと言わないでくださいっ」 

 

 悪いのは多分頭なんだよなぁ……。というか最悪取り替えるって何よ。いや、できるのか……? だとしてもそんな軽率にポンポンと変えていいようなもんじゃないのは素人の俺にもわかるぞ。

 なんとかして、なんとかして切り抜けなくては……

 

「とりあえず春田さん落ち着いてください」

「いいえ落ち着いています。ただ今から冷静さを欠こうとしているだけで」

「なおさら悪いわ!」

 

 春田さんがこんな調子になってしまったのは十中八九あの日倉庫で頭をぶつけてしまったのが原因だろう。ここはひとつそれを春田さんにわかってもらって修理に赴いてもらうしかない。 

 

「春田さん、あなたはいま様子がおかしいんだ。まずはそれをわかってほしい」

「はい。愛ゆえに……ですね?」

 

 違います。でもいちいち突っ込んでたら話が進まない。ここはぐっとこらえて先に進まなくては。  

「だから、一度IOPまで出向いて検査を受けてほしいんだ」

 

 春田さんは微笑んだ。

 

「……そうやって私を遠ざけようとしているんですね?」

「えっ」

「私がどんな思いでこの基地に来たと思っているんですか。戦果主義の中央の老害どもの命令を一介の人形風情に過ぎない私が蹴るのがどれほど大変だったと思っているんですか。逃がしませんよ絶対に。私はずっと指揮官と一緒にいるんです。指揮官もそのほうが嬉しいでしょう。なのにどうしてそんなことを言うんですか。そんなに私の事が嫌いなんですか?」

「ま、待つんだ春田さん。俺が春田さんの事を嫌いだなんてとんでもない。こんな辺鄙な基地に春田さんが来てくれたおかげでいつも助かっているし、今日だって副官としての働きにどれだけたすけられたことか。普段の雑談から重要な会議まで真摯に相談に乗ってくれる春田さんのことがまさか嫌いだなんてことあるはずが」 

「じゃあ好きなんですね?」

「そ、そうなりますね」

「あ、ああっ指揮官っ!」 

「ひぇ」

 

 しまった。春田さんが両手を広げて近寄ってくるものだからつい避けてしまった。 

 

「……どうして避けるんですか?」

「ほ、捕食されるような気がして」

「まだそんなことしません!」

「まだっていった!今まだっていった!」

 

 この春田さん危険すぎる! この前までの温和な春田さんを返して!

 

「いいじゃないですか両想いなんですから! 逃げる必要なんてありません、今すぐ早く一緒になりましょう!」

「ま、待つんだ春田さん!」

「覚悟の準備をしておいてください! 近いうちに籍を入れます。姓名も変えます。結婚式にも問答無用で来てもらいます。招待状の準備もしておいてください! あなたは私の伴侶です! 人生の墓場にぶち込まれる楽しみにしておいてください! いいですね!」     

   

 い、行ってしまった……。

 それにしても何だったんだあの迫真ともいえる凄みは。まさか春田さんにあんな一面があったなんて……。

 

 というか、春田さんはあれほどの啖呵を切って一体どこに行ったんだろうか。 

 

 ……。 

 

 な、何かわからんがすごくマズい気がする! 後を追わなくては!





春田さん:今回頭のネジと一緒にいろんなものが外れた
指揮官:このあと実印を奪おうとする春田さんを何とか阻止した

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