防振りオリジナル集   作:五月時雨

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 今夜0時に、『メイプルちゃんに、なりまして』投稿します。
 この告知のためだけにこの話を挿れた。
 知ってる人は読まなくていーよ。


白銀の比翼2

 

 街の外にも、街の中程ではないが人がいた。

 

「人が多いとモンスターすぐ狩られちゃうし、少し遠くに行こっか?」

「だね。ミィの魔法を試すなら、森よりも開けた場所の方がいいから、向こうの平原に行こっか」

 

 二人はそのまま同じようにてくてくと歩いて、森に近い平原までやって来た。

 

「この辺なら人も少ないし、モンスターもそこそこいるね」

 

 言いながら、ツキヨは鞘に収めていた双剣を抜く。ミィは既に杖を持って臨戦態勢だ。

 

「魔法で挑発して、こっちに呼ぼうか」

「おっけー!」

 

 十メートルほど先には、尖った角を持った白兎がいる。可愛いしモンスターでなければもふりたいところではあるのだが、二人はぐっと我慢する。

 

「いくよ!……【ファイアーボール】!」

 

 ミィが魔法名を叫ぶと、目の前にバレーボールほどの大きさはある火球が出現。真っ直ぐに白兎に向かうが、兎さんは当たる直前に熱気で気付いたか、身を捩ってぎりぎりで躱した。

 

「躱された!来るよっ!」

「前は任せてっと!」

 

 火球による攻撃を作戦どおり挑発と受け取ったのか、兎さんは一直線にミィに突撃する。そこへ、進路を遮るようにツキヨが割り込んだ。

 

(白兎の敏捷(あし)は早いけど、真っ直ぐに、単純にこっちに向かってきてる。なら、タイミングを合わせるだけでいい)

 

 兎さんは邪魔だぁぁ!とでも言わんばかりに角による突撃を繰り出すが、ツキヨは至って冷静に。

 

「―――()()()()

 

 角による突進にタイミングを合わせ、半歩だけズレることで打点から抜ける。同時に、もと居た場所に剣を()()()

 

 それだけで。

 

「キュ、キュゥ……」

 

 角兎さんの角は根本から絶たれ、ただの白兎さんになると共にHPが全損した。

 あとに残るのは、四散した兎のポリゴンだったものと、ツキヨが断ち切った角だけだった。

 いわゆる、部位破壊。モンスターの体の一部を破壊することで、その部分をドロップ品として入手したのだ。

 

 

「相変わらず、めちゃくちゃなプレイヤースキルしてるよね」

 

 ミィがそう評すのは、ツキヨの先程の動き。

 何をしたのかは分かった。ただ避けて、斬った。それだけ。だがたったそれだけの動作でありながら、ツキヨのそれは練度が違う。

 

「あはは、私は目がいいからね」

 

 ツキヨは苦笑気味に笑うと、どんどん行こー!とドロップ品をストレージに仕舞い、新しいモンスターを探しに行く。

 

 

――――――

 

 最初に白兎を倒してから、私とミィはずっと戦い続けた。

 草原に出るのは殆どが動物系のモンスターで、主攻撃は全部突進。攻撃が当てやすく、攻撃を躱しやすいためミィの魔法の練習にも、私の接近戦の勘を取り戻すのにも最適だった。

 

「あっ。……ツキヨごめん、MP切れた!」

「自然回復量より使用量の方が断然多いから、仕方ないね!っと」

 

 MPは時間と共にゆっくり回復するが、戦い始めてからずっと見的必殺(サーチ&デストロイ)していればMPも枯れる。

 

「じゃあ、今向かってきてる敵を倒したら、一度街に……ってちょ、何体いるのこれ!?」

 

 そこで、気付いた。今私達は、森と草原の境界線にいるのだ。草原で広範囲を狩場にしたら他の人の迷惑になるため、慣れてきた頃に少しずつ森の方へ移動していたのが仇となった。

 森から兎に猪、人サイズの百足、狼などなど。

 少なくとも三十は超えるだろうモンスター。

 そしてモンスターの脇から逃げるように飛び出す複数のプレイヤーの影。

 

やばい……()()()()()()()

 

 モンスタートレイン

 大量のモンスターのタゲを取ってしまった挙げ句、対処ができなくなってしまった初心者によく見られる光景。

 自分たちが逃げるために仕方ないと思ったのかもしれないが、そんな状況にもなるまで気付かないとかあり得ない!

 その人たちが私達に気付いたのか、申し訳なさそうに片手を上げて……" た の ん だ "……?

 

「は……はははっ…」

 

 何が頼んだ、よ?ふざけるな。こっちだって主攻撃のミィがMP切れてるのに。MPKされたと運営に報告してやろうか。デスペナルティーの経験値ロストが惜しかったとか理由にならない。こっちなんてレベルは上がってるけど連戦だったからステータスも振ってないレベル1状態なのに!

 

「ミィ、取り敢えず切り抜けよっか!」

「で、でももうMP無いんだけど!?」

「ミィは後退して自然回復を待って!」

「あああもう!さっきの人たち燃やす!絶対燃やす!」

 

 仕方ない。ミィが参戦できない以上、ここで私が逃げれば他の人に押し付けることになるし、それじゃあの押し付けた人と同じだ。

 そんなのは絶対に嫌だ。

 

 だから……

 

「こっちに来なさい!」

 

 モンスターの気を引く。

 ミィが下がったのを確認して、自らに注目を集め、タゲを取る。

 モンスターたちが私を見て、狙い通りターゲットに定めたようだ。

 もう割り切ろう。一時間ちょっと戦ったけど、完全に勘を思い出せたのか確認できる良い機会だ。

 

 目を閉じる。

 息を吸い、吐く。

 この緊張を鎮め、集中力を高めるように。

 

「ツ、ツキヨ!来ちゃう来ちゃう!」

 

 次に目を開けたとき、世界はゆっくりと流れていた。まるで、()()()()()()()()()()

 

「ははっ。……いくよ?」

 

 非道くゆっくりと流れていく世界で、私だけが(はや)く (はや)く (はや)く。

 

 

――――――

 

 

 久しぶりに見たツキヨの本気は、圧巻だった。

 

 兎が飛び掛かれば、その瞬間に首と胴が分かたれ、猪はツキヨが避けた途端にポリゴンの塵となる。百足はどうやったのか全身の節で何十等分にも分割され、狼は猪と同じ末路を辿る。

 霞むような速さとは、これを言うのだろうか。

 私は、自分のMPが回復したとしても、この戦闘に入ることができないと思う。

 

「今頃、私の声も聞こえてないよね…」

 

 ツキヨは小学校の頃に言っていた。『皆遅いね』と。別に、ツキヨの足が特別速いとか、そんなんじゃない。

 ツキヨの反射速度は常人を遥かに上回るのだ。

 反射速度とは、知覚し、理解し、対応する。この工程の処理の速さが反射速度で、常人は0.3秒程度。これをどんなに鍛えても、0.1秒にも届かない。

 

 ………ただ一人。ツキヨを除いて。

 

「ツキヨの反射速度は0.05秒を切るからなぁ…」

 

 ツキヨは、現実でも今と似たようなことができる。というより、初めてツキヨの本気を見たのが現実なのだ。

 また、常人より反射速度が早いとは、脳の処理データ量も比例して増えていくことになる。そして、ツキヨはこれに長時間対応できない。昔コントロールできなかった頃は、一日一回は気絶していたように思う。

 だから必死にコントロールを覚えた。どうやったのかは不明だが、今ではオンオフが可能になったらしい。目を閉じて深呼吸することで切り替わり、一日最大で連続六時間。断続なら合計十時間まで本気を出せる。

 ただ、現実でこれをやるには身体が付いてこない。数分なら良いが、早すぎる挙動に筋肉が断裂する。だが、仮想世界なら話は別だ。脳が思った通りに動く身体(アバター)は、ツキヨのこの技能を十全に発揮できる。

 現実での身体能力を反映して作られるアバターは、ツキヨのこの技能にも対応している。とどのつまりツキヨは、他の人が一つの行動をする間に、三つか四つの行動を起こせるのだ。常人が相手なら、平均して十の行動を取れるというのだから反則である。

 誰が付けたか【神速反射(マージナルカウンター)】。いや付けたの私だけども。あの年頃はそう言うの大好きでしょ?だから『私は悪くない』……じゃない私はどこの過負荷(マイナス)だよっ。

 

 ものの十分、いや十分も経っていないとは思う。そんな短時間で、三十を超えるモンスター群は全滅した。もちろん、ツキヨは一切のダメージを受けていない。

 ツキヨにとっては全てスローモーションで見えていただろうし、剣で弾くも躱すも自由自在だっただろう。

 

「はぁー、つっかれたぁー!ねぇミィ?MP回復したなら援護してよ」

「本気状態のツキヨを援護とか無理。むしろ妨害しちゃうって」

 

 無茶言うな!と声を大にして言いたいし、全く持って危なげなく対処してるように見えた。

 そんなツキヨは、もう一度目を閉じて深呼吸をしている。あれで、もうオフになったのだろう。

 

「それに、まだ微妙に回復しきってないし」

「あれ?三十分近く戦ってた気がしたんだけど」

「十分経ってないからねー?ツキヨ、自力時間加速とかやめてよ?」

 

 昔から分かっていたことだが、この友人には常識というものが通用しない。もっとも、この常識破りな本気のツキヨを見たくて、ゲームに誘ってしまうのだが、それは黙っておこう。

 

 

――――――

 

 

 あぁ…疲れた。

 ミィにはオンオフを切り替えてるって言ってるけど、本当はそんな都合の良いものじゃないからすっごい疲れる。まったくさっきのプレイヤー、顔覚えたからねー?いつか倍以上にして返してやる。

 

「とりあえずお疲れ様。ダメージ受けたようには見えないけど、ポーションいる?」

「ポーションはいらないけど、休憩したいかな。なんか今のでスキル取れたし、確認したい」

 

 戦闘が終わったら、スキル取得通知が届いたのだが、疲れててどんなスキルが取れたのか確認していない。休憩ついでに確認しようと思う。

 

「どんなスキル取れたの?」

「んーと……『挑発』と『精密機械』……?」

 

―――

 

【挑発】

 モンスターの注意を一点に引き寄せる。三分後再使用可能。

取得条件

 十体以上のモンスターの注意を一度に奪うこと。アイテム使用可

 

【精密機械】

 弱点攻撃時、このスキル所有者の【STR】を(STR+DEX)×2とする。

 弱点以外を攻撃時、(DEX−STR)÷2を【STR】とする。

取得条件

 一定時間内に一定数の敵を倒すこと。またその間全ての攻撃を弱点に当てること。

 

 

―――

 

 『挑発』は最初にタゲ取ったからか…。

 

「弱点を攻撃した時だけ【STR 170】として計算されるってこと?これ、かなり凄いスキル?」

「【STR 170】って相当強いよね!?」

「うん。でも弱点を外すと…確か小数点以下切り捨てだから【STR 27】になるみたい」

「うわ…ツキヨじゃないと難易度ルナティックだ」

 

 言ってて思うけど落差がひどい。……でも、マイナス分の【STR】をこのままに、【DEX】を上げ続ければ、それほど気にならない攻撃力を保てるかな?

 

「まぁ、これからも【DEX】を上げ続ければ、問題なし!それに元々、弱点攻撃の一撃離脱を戦闘スタイルにする予定だし、なんとかなるでしょ」

「ツキヨが弱点外すとか考えられないしね」

 

 あれ?ミィがなんか遠い目をしてる。

 

「さてと。初日だし、そろそろ街に戻ってログアウトする?」

「そう…だね。でもその前に、レベルアップ分のステータスポイントだけ振ってもいい?次こそはMP切れにならないようにしたい!」

「じゃあ、私も振ろうかな」

 

 初日に数時間だけ戦って、レベルは11まで上がった。ステータスポイントは二の倍数のときに5ずつ、10の桁が増えた時だけ10ポイント貰えるため、使えるポイントは30ある。ちなみにミィは最後のトレインに参加していないためレベル9だ。

 さてどのステータスに振り分けるかだけど、外すつもりは無いけど、攻撃が弱点から外れた時にマイナスが大きくならないように、【STR】は振らない。【DEX】に多めに入れて、本気を出した感じ、【AGI】がもっとあったら、現実じゃできなかった『アレ』ができそうだけど…

 

「ねぇミィ」

「ん?どうしたの?」

「私も魔法、取っていい?遠距離攻撃の手段が欲しい」

「サブに取ってる人は多いもんね」

「うん。ミィが火だし、私は『水魔法』にしようかな?」

 

 【AGI】はあとからでも十分上げられるし、ここは【INT】を優先しよう。

 

 

―――

 

ツキヨ

Lv11 HP35/35 MP21/21

 

【STR 15】 【VIT 0】

【AGI 40〈+10〉】 【DEX 60〈+25〉】

【INT 15】

 

装備

 頭  【空欄】     体 【空欄】

 右手 【初心者の双剣】左手【初心者の双剣】

 足  【空欄】    靴【初心者の魔法靴】

 装備品【空欄】

    【空欄】

    【空欄】

 

スキル

 【双剣の心得Ⅰ】【連撃剣Ⅰ】【挑発】【精密機械】

 

 

――――――

 

 ツキヨは最後にステータスを確認すると、満足気に頷いた。

 

「終わった?」

「終わったよ。ポイント全部【MP】と【INT】に振っちゃった。これで今日の失態はしないよー?」

「なら、明日以降は期待してるね」

 

 初日でトレインと戦うといったトラブルもあったものの、二人は一頻り笑い、街に戻ってからログアウトした。

 

 その頃ネットのとある掲示板では。

 

―――――――――

 

【NWO】凄い双剣使い見つけた

 

1名前:名無しの大剣使い

 なにあれすげえ

 

2名前:名無しの槍使い

 kwsk

 

3名前:名無しの弓使い

 どうすごいの?

 

4名前:名無しの大剣使い

 何か西の森の入り口で30体くらいのモンスター殲滅してた

 

5名前:名無しの魔法使い

 レベル高ければ誰でもできるだろ

 

6名前:名無しの大剣使い

 いや見た感じは初期装備だった

 近くに初期装備の魔法使いもいたけどMP切れたんか佇んでた

 

7名前:名無しの槍使い

 初心者装備でそれは自殺行為

 

8名前:名無しの大盾使い

 それ俺も見たわ

 別の初心者パーティがトレインしたやつを押し付けられてた

 助けようと思ったんだが殲滅しだしたから様子見した

 

9名前:名無しの双剣使い

 は?なにそれ押し付けた奴らゴミじゃん

 ちなみに俺がそいつと同じ状況だったら一瞬で逃げますはい

 

10名前:名無しの魔法使い

 実際30体のモンスターって初心者装備で殲滅できるんか?

 

11名前:名無しの双剣使い

 まず無理

 双剣はそれなりに高い攻撃と敏捷が基本だがそれだけ多いと押し切られる

 

12名前:名無しの大剣使い

 双剣使いの美少女ほぼ全部一撃だったぞ

 

13名前:名無しの槍使い

 やっぱ極振りか?って言うか女かそれも美少女か

 

14名前:名無しの大盾使い

 いやめっちゃ速かったぞ

 多分【AGI】40はある

 魔法使いの方も美少女だったぞ

 

15名前:名無しの弓使い

 なら隠しスキルでも見つけたとかかもしれん

 

16名前:名無しの大剣使い

 んーまた追々情報集めるしか無いか

 トッププレイヤーになるのなら自然と名前も上がってくるだろ

 

17名前:名無しの双剣使い

 同じ双剣使いとして今度何か見かけたら書き込むわ

 

18名前:名無しの魔法使い

 情報提供感謝します!(敬礼)

 

―――――――――

 

 こうして、二人の知らない所で少しだけ話題になったツキヨとミィだった。




 
 これ、ほとんどPS特化の連載版のコピペなんですけど、今読み返すと凄い駄文ですね。自分で書いたものですけど、凄い酷評したくなる。

 修正しないのかと言われると迷いますが、多分内容がガラッと変わりそうなのでやんない。

 PS極振りを、極振りじゃ無いって感想を昔に頂きましたが、プレイヤースキル…つまりプレイヤー自身の技術力が振り切って高いのを、ここではそう称しています。
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