入れてみたかったけど、必要ない話などを飛ばしております。
メイクマンの誕生から、一週間と平穏な時間が流れた。
あの自我が薄かったメイクマンも、今ではしっかりと疑似人格が形成されている。
パソコンの設定はメイクマンを通してプログラム君と話をする事で、簡単に終わってしまった。電脳ネットワークにアクセス出来る様になると自然とウイルスがやって来るようになって、一人で慌てながらのウイルスバスティングとなった。たっぷりと5分も時間を掛けたおかげで、初めてのウイルスバスティングレベルは2となった。
そんな失敗話を夕食を食べながら父とアイスマンに話していると、それならウイルスバスティングの勉強をした方が良いと家庭教師を雇う事になった。その先生は科学省に務める研究員をやっていて、日本を代表する人材の一人である。
なんでそんな重要人物が家庭教師なんてと疑問に思ったのだが、科学省では学生の見学を推奨しており、小学生の社会科見学として応対する練習に丁度良いと引き受けてくれたらしい。と言うのは引き受けるにあたっての建前で、実際の所は家庭教師の給金が目当てだったりする。
「はい、今日から透くんの家庭教師を務めます。
「加賀美先生、よろしくお願いします」
「早速だけど、今の知識を確認するためにテストをします。テストって解るかしら?」
「はい、試すって意味ですよね!」
「…そうね。気が済むまで答案用紙に記入して、分からない所は空欄で良いから」
「はい!」
これがアイドルオタクの先生との初めての会話である。
それからというもの先生から授業を受けて、ウイルスバスティングだけではなくバトルチップの開発に必要なプログラム関連の知識も手に入れることが出来た。ウイルスバスティングの授業は一度で済んでしまい、報酬が貰えなくなるとアイドルに貢げなくなるから他に学びたい事は無いかと聞かれた僕の希望が通った形だ。
バトルチップの開発には、センスが必要だ。無から有を作り出すと言うのは、労力を掛けるだけでは成しえない能力が必要なのだとバトルチップ開発者は語る。
今僕は先生のアドバイスを受けながら、アレンジチップを作っている。
アレンジチップとは、新しいチップをゼロから作り出すのではなく、元々存在するバトルチップに手を加えて生み出されるお手軽オリジナルチップである。有名な所だとフィスト系をアレンジしたガッツパンチなどのチップだ。
「良し…ソードのデータから形成される剣のサイズを変更しよう。今回はソードに能力を付加させるから、サイズを小さくして容量を稼ぐ」
「はい、先生」
バトルチップのデータが収められるブランクチップは、当然ながら最大容量が存在する。目一杯容量が使われているチップもあるが、ソードを収める分にはかなりの余裕がある。今回はバトルチップの制作練習を兼ねているので、触れる所は触っている。
「透君が持っているチップだとエリアスチールが適任ね。エリアスチールから、ナビの加速能力をコピーしてソードに付け加えちゃいましょう。エリアスチールそのもの程の加速は再現できないから、加速力を落としてね」
「先生、ただコピーしただけでは機能しないんじゃ?」
「その通り…良く気が付いたわね。失敗させて覚えさせる心算だったのだけれど」
そう言いながら先生は、キーボードを叩く。
「これでソードのプログラムとして機能する様になるわ。この方法は取り合えずの物だけど、今は良いわね」
「そんな単純な事で良いんですか?」
「ふふ、そうね。これだと無駄が多いから、余計な容量を使っちゃうし、バトルチップの転送時間も余分に掛るけど、ちゃんと作ろうとしたら専用のソフトウェアが必要になるから」
「専用…幾らするんですか?」
「非売品よ。犯罪者がポンポンとバトルチップを作り出したらとんでもない事だもの」
言われてみれば当然のことで、どんなとんでもないバトルチップを作り出すか分かったものではない。ダークチップがいい例ではないだろうか。
「じゃあどうやって手に入れるんですか?」
弱々しく吐き捨てる僕に先生はニヤニヤと笑いながら「自分で作るのよ」と新しい授業を提案した。
先生を雇って一年が過ぎた。
いつの間にか僕も四歳となり、部屋には子供らしい図鑑や木箱に積み上げられたブランクチップ。プログラム関連の参考書などが乱雑に散らばっている。
ここ最近は先生の授業で完成したバトルチップ作成ソフトを使って、初めて作ったアレンジチップを実用に耐えうる性能に引き上げたていた。結果として出来上がったのは、フミコミザンであった。結局のところオリジナルとは行かない物が出来上がった。
思わぬ副産物としてナビのカスタマイズ技能が向上した。ウイルスバスティングをしていると市販のカスタマイズパーツには限界があるのだと実感させられた。授業のネタを探していた先生に相談し、いともたやすく解決してしまった。今では生産特化のメイクマンに加えて、戦闘用のネットナビを所有している。
「透くんの吸収力には目を見張るものがあるね。教えるたびに何でも身に付いて…これが若さなのかしらねぇ」
「先生のおかげでバトルチップの開発を始められそうです。来年には小学校が始まりますし」
「…そうね。そろそろ教える事もなくなりそうだし、家庭教師の役目が終わるのも時間の問題ね」
この会話の三ヶ月後には、先生の家庭教師業は任期終了となった。光博士の謹慎期間が終了し、新しく研究チームが結成したのだが、そのメンバーの一人に加賀美先生が選ばれたのだ。それでも二ヶ月ほど粘っていたのだが、寝不足の状態が慢性的に続いたので倒れられては困ると一先ず家庭教師生活は終了となった。
「さてメイクマン。まずはソードから始めようか」
「おお、任せろ親方。最高の一振りを鍛えて見せるぜ!」