残金4803ゼニー。PETに表示された所持金を前に、透は頭を抱えている。
ウイルスバスティングだけでも、定期的に不安定な収入を得ることはできる。だけど他の人が作ったチップを購入したり、新しいパソコンを買うとか、いずれそれなりに纏まった金額が必要になる。なあなあで綾小路やいととも友人になるが、友人が金持ちだからと頼る訳にはいかない。
「よし、ネット商人になろう!」
電脳世界に無数に存在するバトルチップ販売のネット商人に。
「色々考えたけど、ヒグレヤみたいな店やるの楽しそうだし」
『おお、親方と作り上げたバトルチップを売りに出すのか、何だか緊張するなァ』
メイクマンは腕を組んだ状態で、顔を赤らめている。
「最初は流れのネット商人…ネット行商人?になって資金集めだな。資金が溜まったらネット店舗専用のパソコンを用意して、自作チップ販売しよう。メイクマン、納税とか必要なデータ調べておいて」
『ガッテンだ!』
メイクマンを商人として電脳世界に配置する訳には行かないので、販売を任せられるプログラムくんを用意する。ウイルスやワルナビなんかの対策にヘイズマンを護衛役として同行させよう。
あ、ヘイズマンにはオペレーションがなくても最低限戦えるように、なにか装備を追加しないとな。この間の反省を活かして、バックアップも取って置かなければ。
―秋原町電脳エリア1
電脳世界でも随一の安全性を誇るエリアで、一体の鎧を連れたショッププログラムが露店を開いている。こうした電脳世界にある安全性の高い場所では、個人の製作したデータを販売する楽市楽座を築いていた。
「こうなっていたとは…」
『マスター、この様子ですと護衛に立つ必要はなさそうですが』
ヘイズマンが若干の不満を匂わせながら、右手に握る長物を微かに揺らした。
透がバトルチップの販売する準備を整えた後で、ヘイズマンに一振りの刃を授けた。それはハルバートと呼ばれる長物の一振りであり、ソードを圧縮した高密度の刃は、ブレイク属性がないとダメージを受けないハルドボルズを容易く両断する自慢の一品だ。
まだ生まれて間もないヘイズマンはジッと立ち尽くすより、貰ったばかりのハルバートを振り回したいのだろう。ヘイズマンの子供らしい態度に頬を緩ませながら、透はプログラムくんに販売するバトルチップのデータを転送していく。
『コピープロテクトハ万全デス』
「確認してくれてありがとう、プログラムくん」
手塩にかけて創り上げたバトルチップをコピーされて、バラ撒かれてはたまったものじゃない。大元のデータは外部記憶媒体に詰めて保管しているので、自宅に盗みに入られたりしなければ安泰だ。
『透サン、販売価格ハドウサレマスカ』
「それが問題だよね」
自分のパソコンから外部にナビを送り出すと、必ず遭遇するウイルスから得られた使う宛のないバトルチップが、溜まってしまっているので相場より安値で売り払ってしまおう。問題なのはスローダガーを始めとした、相場が存在しない自作のバトルチップの方だ。
『近しい効果を発揮する物と比べるのはどうでしょうか?』
「そうだな…少し高めに設定して様子を見るか…」
販売するのはダッシュアタック、スローダガー、リカバースチール、ソードキャノンそしてヘイズマンの能力で生み出されたのがHPメモリが数点。
透は新しく開設したネットバンクに、露店の売上が転送されるように設定を完了させると、店をヘイズマンに任せてメイクマンと新しいバトルチップの開発を始めた。
まずはキャノンのデータを使って、ショットガンを作りたいな。