謎のネット商人クリアとして、まずまずの知名度を獲得し始めた今日此の頃。氷川家の長男である氷川透は、秋原小学校に入学する日を迎えた。
「入学おめでとう。透」
『おめでとうですぅ』
『親方も本日より学生の身…目出てぇなぁ!』
『おめでとうございますマスター』
「ありがとう!皆!」
6歳の誕生日を迎えてから暫く、僕は秋原町にある小学校の入学式を目前に、家族からの暖かい言祝を受け取っていた。
誕生日のプレゼントに新しいPETと、それを収めるケースを2つを贈ってくれた。小学校に入れば外出する機会も増えるから、とても嬉しいプレゼントだ。新しいPETはヘイズマンの為に用意してくれた。流石に一つのPETにネットナビを複数は入らないので、誕生日の贈り物はどれも実用に適していた。
お父さんの誕生日には、僕特製の水属性バトルチップをプレゼントしよう。ネット商人業は順調で、ネットバンクの預金は既に200万を超えている。それだけのゼニーがあれば属性チップを購入する資金に不足はないのだ。
「アイスマンに合わせたものが良いかな?」
『透君?』
自分の名前を聞きつけたアイスマンに、軽くプレゼントの話をする。お父さんには内緒だよっと二人で笑い合いながら、お父さんの運転する車の中で、朗らかなひと時を過ごした。
「一年生の皆さん。ご入学おめでとうございます」
小柄で丸々とした校長先生のお話の中、透はある少年達を探していた。
視線を数順させると、目的の人物たちを視界にとらえることができた。
集中力を欠いた眠気眼を隠そうもしない、体格の良い少年。
希望に胸を膨らませた赤い髪をした少女。
トレードマークの蒼いヘアバンドが眩しい、小柄な少年。
この日、透はこれから始まる物語の主要人物達を目に焼き付けた。
後は見つからないように家に帰り、水道局の事件が起きるまで熱斗達に関わらないようにすれば良かったはずだった。氷川透は熱斗たちの隣のクラスに在席している生徒であり、彼等と同じクラスで過ごしている描写はない。
物語が始まるのは彼等が五年生の事だが、その間に同じクラスになった事がないとは言い切れない。そもそも、生徒のクラス配置など一生徒である透が関与できる話ではないので、致し方ないとも言える。
熱斗に存在が認識されない程度に、影を薄くして過ごすしかないという、灰色の学校生活が幕を開けた。
入学したその日に悲壮な覚悟を余儀なくされてしまった。
なんとかまどいという、カラードマンのオペレーターが目下の脅威なのだが、透か父清次のどちらかが誘拐されてしまう。その時に他の人質がいたら、日本は終わりである。
水道局が全国の水処理システムを統括管理している為に起こる悲劇である。
この世界は重要なシステム程、オートメーション化が進んでいる。ネットナビとプログラムくんに仕事を任せた方が、様々な面で効率的なのだろう。
簡単なホームルームの後、無難に自己紹介を済ませて帰宅した。いつか役に立つかもしれないと、意味もなく学校にHPメモリを仕込んでいて、帰りが少し遅くなってしまった。
『親方!親父殿が水道局から呼び出されたって、プログラムくんがメッセージを受け取ってたぜ!』
「うん?」
メッセージの内容を詳しく確認すると、新しい給水管の工事で暫く家に帰れない旨が記されていた。
「電脳世界でも鉄は錆びる…か。メイクマン、ヘイズマンのアップデートを始めよう」
冷静に見て、ナンバーマンを一撃で斬り伏せる程度の性能には仕上がってはいるものの、鎧のデザインを含めて、まだまだ納得の行く完成度に達していない。
「いっそのこと騎士に寄せきるか…携行させるのがダガーなのがちょっと」
カタカタとキーボードを打ち鳴らしながら、ヘイズマンの細かな運動データを更新してゆく。
『親方、バトルチップの作成依頼が来てますぜ』
「うん?」
メイクマンのいるPETを覗く、そこには炎属性のバトルチップを求めるメッセージが映し出されていた。
さぁ、皆さんにお題です。
炎属性のバトルチップを考えてみましょう。
このバトルチップの依頼者は、いったいナニケンなんだ。
活動報告でお待ちしております。