ルカリオにこんな設定があってもいいと思うんです   作:hareth

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仕留めるまでの時間は短いほうがいい

 天気は快晴。その予報だったはずだ。

 

 なのになぜ大雪(・・)が降っているんだここでェ!

 

 ここはフウジョタウンとヒャッコクシティを繋ぐ17番道路。年がら年中雪が降っているため、たとえ天気予報で快晴と言われても鵜呑みにしないのが基本である。

 

「天気予報なんて絶対信用しない」

「グレィ♪」

「お前はこおりタイプだから嬉しいだろうよ……」

 

 せっかくの雪なのでグレイシアを外に出してあげていた。

 

 しばらく歩いていると、豪雪地帯から抜けることができた。目の前には廃坑の様な広がっている。

 

「…グレイシア、なにか聞こえないか?」

「…レイッ」

 

 強く頷くグレイシア。廃坑の奥でなにかが起きているのは確実だった。それも……人為的なものが。

 

 ユウマは光源確保のためにバシャーモ、索敵のためにルカリオを出し洞窟を駆け抜けていった。

 

 

 ――その頃最深部では。

 

「ゲッコウガ、”みずしゅりけん”っ!」

「テールナー、”かえんほうしゃ”!」

「レントラー、”スピードスター”!」

 

 4人の少年少女が謎の朱服集団と戦っていた。

 

「ドラピオン、”ミサイルばり”よ」

「クリムガンは”きあいだま”!」

 

 朱服集団の方もなかなか実力が高く、攻めて攻められての繰り返しを行っているようだった。

 

「ピカチュウ、”10まんボルト”!」

「びぃかぁぁぁあ、ぢゅうぅぅ!!」

 

 ここまで何度も攻撃を繰り返していたためか、彼らの十八番でもある”10まんボルト”も威力が下がってきている。敵の攻撃を相殺できず直撃。ピカチュウは地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がった。

 しかし、これ以上でんき技を使うことはできないだろう。ピカチュウのトレーナーである赤いキャップの少年、サトシはそれを直感的に理解していた。

 

「ピカチュウ、一回下がれ」

「ぴぃか!?ぴかかぴかちゅぅ!?」

「違うそうじゃない!別方面の攻め方で行くんだ!」

「!ぴか!」

 

 この2人、長く旅をしているから会話による意思疎通ができている。

 

「バシャーモ、”まもる”!」

 

 そんなちょっとした作戦会議をしていると、後からバシャーモが飛び出しドラピオンとクリムガンの攻撃を防いだ。そして、

 

「ルカリオは”ストーンエッジ”、そのまま飛ばせ!グレイシアは”れいとうビーム”!」

 

 そのバシャーモの仲間であろうポケモンによる追撃。攻撃は当たらなかったものの、”ストーンエッジ”が砂煙を巻き起こしこの戦闘におけるブレイクポイントを作ることができた。

 

「大丈夫か?」

「私たちは大丈夫ですが…あなたは?」

「俺はシャラシティのユウマ。ちょっとした野次馬だよ。ルカリオ索敵だ、動きがあればグレイシアと突っ込め」

「バゥ!」「グレイっ!」

 

 気を抜けない状況なので、索敵はルカリオに任せ簡単な自己紹介を済ませる。

 どうやら彼らの仲間である’プニちゃん’がこの洞窟の奥へ向かっていったので、それを追っていたところあの朱服集団――フレア団に遭遇したとのこと。今はそのプニちゃんがどこに行ったかはわからなくなっているが、金髪のちびっこ――ユリーカはこの奥にいると言っている。

 

「シャーモっ!!」

「!?助かったバシャーモ!」

 

 どうやら話が長かったらしい。バシャーモたちが警戒していなければ吹き飛ばされていた。

 

「君ら消耗してるだろ、オボンの実があるから少しでも回復させて。あとそのピカチュウにはこれを」

 

 そうしてユウマが取り出したのはでんきだま。ピカチュウの火力を上げるためのアイテムである。

 

「ありがとうございます、ユウマさん!」

「タメでいい。それにお礼はここを切り抜けたら、な」

「…あぁ!」

 

 5人全員が前を向く。そこには先程のドラピオンとクリムガンに加え、レパルダスとライボルトが加わっていた。

 

「せっかくでんき補給したのに間が悪いな…」

「確かにな…シトロン、レントラーってなにが使えたっけ?」

「”かみなりのキバ”、”スピードスター”、”エレキフィールド”、”ワイルドボルト”です」

「間が悪いことこの上ねぇ…」

 

 言っても仕方のないことだろう。あれこれ煮詰めたいところではあるが、状況が許してくれない。

 

「おしゃべりなんて余裕じゃない、レパルダス”シャドークロー”!」

「ライボルト、”でんげきは”よ!」

 

 ”まもる”の連続使用は成功率を大幅に下げる。2連続で使えたのはほとんど奇跡のようなものだ。だからこそここは、

 

「バシャーモ、”ストーンエッジ”展開!足場にしてレパルダスに膝!」

「ゲッコウガ、”みずしゅりけん”で相殺しろ!」

「テールナー”めざめるパワー”!」

 

 バシャーモはルカリオがいつもやるように”ストーンエッジ”を展開、”シャドークロー”をかわして”とびひざげり”を叩き込んだ。

 ルカリオはユウマたちトレーナーの前に出て波導の盾を出して爆風の余波から守る。ゲッコウガはテールナーの援護を受けて”でんげきは”を打ち消したあと、距離を詰めて”いあいぎり”。スピードタイプなポケモンを押し返した。だが、まともに戦えば先に息切れするのはこちらだろう。ほぼ全快なのはユウマのポケモンたちだけだ。

 さらにゴーグル野郎共の後から更にフレア団のしたっぱが現れ、デルビルやスコルピを出してきた。

 

「…プニちゃんとやらはどこに」

「さっき銃みたいなので撃たれたんだ。多分湖の中だ」

「…擬態しているのかもな」

 

 こうして相手している間は別のことに気を割くことはできないはず。なら……

 

「グレイシア、こっちはいい。プニちゃんとやらを探せ」

「なら、わたしも!」

「頼む!」

「…ならレントラーはユリーカについていって上げてください」

 

 なにかためらうような言い方ではあったが、シトロンもユリーカに護衛を付かせる。

 さて、スピード型であるレパルダスとライボルトはおそらくどうにでもなる。最終的にはサトシのゲッコウガとピカチュウ、ユウマのルカリオとバシャーモが崩せるからだ。だがその全員をそっちには付けられないとなると……

 そうやって思考していると、件のライボルトとレパルダスがユリーカの方へ向かった

 

「サトシ、ライボルトたちを追え!」

「わかったぜユウマ!行くぜ、ゲッコウガ!」

「コォォォォォゥガァッッ!」

「は?え、あの、あれ、え?」

 

 突如雄叫びを上げたサトシ。それと同時にゲッコウガが水流に包まれ変わっていく。ゲッコウガがサトシ(・・・)の様に、いやそのものになろうとしている。

 

 ――メガシンカ。この世には進化を超える進化というものが観測されている。特定のポケモンが持つ潜在的な力を開放する途方も無い力。ユウマもその身で実感している。当然ルカリオも。

 目の前で起こっている現象も似たようなものなのだろう。サトシはメガストーンを所持していないからメガシンカでないことはわかる。メガシンカ特有の繭のようなものも出ていない。彼らにしかできないことなのは確かだ。だが、

 

「不安定すぎる…。ルカリオ、指示は出さない。ゲッコウガにつけ」

「バゥウン!」

 

 直感(・・)で何かを感じたユウマはルカリオをゲッコウガの元に向かわせる。戦力的には問題ない。こっちが押し返せば余裕だろう。

 

「セレナ、”めざめるパワー”をあそこの岩に」

「わかったわ」

「シトロンは」

「僕も分かってます。行きますよ、ホルビー!」

 

 ホルビーは”あなをほる”の準備を始めた。さらにセレナのボールから飛び出したヤンチャムがそれに続く。

 

「ちっ…しつこいわねぇ、ドラピオン”ヘドロばくだん”!」

「クリムガン、”ドラゴンクロー”よ!」 

 

 遠近両方の攻撃を同時に行うことで対応を惑わす作戦か、頭はキレるようだ。だが、それだけじゃフルスピードのフレアドライブ(かそくしきったバシャーモ)を止められはしない。

 

「ドラピオンは頼んだぞ」

「えぇ!」

「バシャーモ”フレアドライブ”、薙ぎ払え!」

「テールナー、”めざめるパワー”よ!」

「バッッッシャァァ!!」

「テーナッ、テナッ!!」

 

 バシャーモは”ストーンエッジ”を展開し、縦横無尽に跳ね回ってクリムガンを叩き落とした。

 一方セレナとシトロンはユウマの策通りに岩を破壊して視界を遮り、ホルビーの”あなをほる”について行ったセレナのヤンチャムの”ストーンエッジ”と、ドラピオンの真正面に躍り出たホルビーの”マッドショット”を顔面に叩き込みダウンさせた。

 

 そこに緑のナニかがユウマたちとフレア団の間に乱入してきた。次の瞬間その体が輝き、小さな体にエネルギーを溜めていく――

 

「プニちゃん!」

「あれが…?」

 

 輝きが収束するとそこには、ヘルガーのような黒と緑のポケモンが大地を踏みしめていた。

 

 

 

 

 

 その後はプニちゃんによる圧倒的蹂躙により、フレア団のポケモンのほとんどが戦闘不能。ライボルトの”フラッシュ”により全員撤退した。

 プニちゃんはそのまま去ってしまった。あれ程の力を持つポケモンはおそらく伝説のポケモンだろう。ならば人の元から去るというのは当然のことだし、それなりに長い時間一緒にいたなら離れるのもわかる。

 

「まぁ、またきっと会えるさ」

「……うん!」

 

 それからユウマはサトシたちと別れ、ヒャッコクシティに向かった。サトシもカロスリーグに向けてポケモンを鍛えているところと言っていたから、対戦するのはその時がいい。それまでにルカリオたちもきっちり鍛えなければ。

 

 新たな決意と約束を胸に、この道を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

「それにしてもルカリオ、さっき俺がお前の視界を見ることができたのってなんだったんだろうな」

「バゥウン!?」

 

 

 




続いちゃったよ
最低でもカロス終わるまでは続けたいです

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