ルカリオにこんな設定があってもいいと思うんです   作:hareth

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結局神様は味方しない

「ルカリオ、”はっけい”!」

 

 碧い輝きが樹齢そこそこの木を穿つ。次の瞬間、当てた場所から見て12時と1時の中心に倒れた。

 森の奥深く、修行と称して木を倒しているユウマとルカリオ。しっかりと許可は頂いているのでそこの心配はしないで欲しい。

 

「こんなもんか。これ以上波導を込めるとどうなる?」

「バゥ…」

「了解。なら今日はこの威力でだな」

 

 首を振って「これ以上はキツイ」と表現するルカリオ。今日は修行よりも頼まれごとの消化の方が優先度が高いので、いつもよりゆるくやる(とはいえルカリオはギリギリまで波導を使っている)。

 

 

 何本か木を倒してルカリオに休息させていた時。それまで吹いていた風が急に北からの暴風となり、咄嗟にルカリオが波導壁を作ったおかげで吹き飛ばされることはなかったが状況がわからなくなってしまった。

 

「ルカリオ無理はするなよ」

「バゥ!……ッハ!」

 

 その短い気迫と共に”はっけい”を発動。その威力は突如吹き荒れた吹雪をかき消し、風を吹かした招待にを微量のダメージを与えることに成功した。

 

「あれは…フリーザーか」

 

 フリーザーはこちらを真っ直ぐ見据えて羽ばたいている。どうやらバトルをする気らしい。

 ルカリオは気合を漲らせているが、片膝をついている。先程の”はっけい”はそれまでのものより波導が込められたもので、その消耗具合は計り知れない。

 

「…ルカリオ。少しだけ休め」

「…?」

 

 ユウマの指示の意図がわからなかったルカリオ。自身が消耗していることには気づいているだろうが、まさかそのままの状態であれ程の相手と戦うというのか。

 

「消耗しすぎだ。アイツのめあてはお前だと思うが、消耗しすぎているお前を戦わせるほど俺は冷たくないつもりだ。だから少しでも体休めろ。時間は稼ぐ」

「……バゥゥン!」

 

 返事のあとすぐに俺の後ろで瞑想を始めたルカリオ。俺は1つだけ色が違うボール、ハイパーボールを取り出した。

 

「頼むぜ……エースバーンっ!」

「バーンッッ!!」

 

 エースバーン。ガラル地方御三家炎枠。ここカロスでは全く見ないポケモンである。なぜユウマが持っているかは、簡潔に言えば育ての親が親戚からもらってきたからとだけ言っておく。

 

「ちゃんとした初陣が伝説相手で悪いなエースバーン。”かえんボール”!」

「バぁニバーンッ!」

 

 小石をリフティングし着火、インフロントキックで蹴り出す。その火球はフリーザーより一回り小さい程度の大きさで襲いかかる。

 

「フォォォォォァァァァァッッ!!」

「!」

 

 その火球を”みずのはどう”で打ち消すフリーザー。これで互いに小手調べは終わりだ。

 ”みずのはどう”で打ち消したということは、れいとうビーム等他の技では打ち消せないと判断したものだろう。そして注意がそちらに行くなら……

 

「”アイアンヘッド”ッ!」

「バァァニッ!」

 

 フリーザーは動かない。ギリギリまで引き付ける気だろう。なら回避のタイミングを指示しなければ。

 ルカリオが立ち上がり、背中に両手を添える。同じようにユウマも手を伸ばし意識を集中させる。フリーザーが息を吸い込むその瞬間を狙って、

 

「今!とびはねろッ!!」

「バーンッッッ!!」

「フォ!?」

 

 新たな技を指示した。

 射線上から姿を消したエースバーンに驚くフリーザー。溜めていた”れいとうビーム”は外れ、無防備な背中に自由落下の速度が乗った”アイアンヘッド”が突き刺さる。

 思ったより痛かったのか少し暴れる。それもそのはず、本来エースバーンの特性は「もうか」なのだがこのエースバーンは非常に珍しい特性、「リベロ」を持つ。自身のタイプを使う技と同じにするという特性で、簡単に言えば「覚えるすべての技をタイプ一致で撃てる」というもの。故に威力も上がる。

 

 飛び上がったフリーザーが”みずのはどう”を撃つ。それもあまり狙いを付けずに適当とも言えるように。

 

「ルカリオの動きを見てるお前なら見切れるよな、詰めろ!」

 

 回避しつつ接近するエースバーン。すべてかわしきり”とびひざげり”の体勢に入った瞬間――

 

「フォオオオオオオ!!!」

「バニッ!?」

 

 ――フリーザーはエアスラッシュを至近距離で発動させた。かくとうタイプに変わっていたエースバーンには効果は抜群だ。

 

「大丈夫か!?」

「…ッバニ!」

 

 当たりどころも悪かったようで次の攻撃が最後になりそうだ。ぶっつけ本番にはなるが、アレ(・・)を試してみるか。

 

「エースバーン、自分の真上に”かえんボール”」

「バニッ!」

 

 ほのおタイプに変化し、火球を蹴り上げる。続けてユウマの指示。蹴り上げた”かえんボール”めがけて、時計回りに回転しながら跳躍。同時に”ブレイズキック”を発動させた。 

 

「もっと回れ…!……そこだ、”ブレイズキック”で蹴り出せッ!」

「バニバニバニバニバーーーッッ!!!」

 

 空中という安定感のない場所で高速回転し、その力と腰の入った”ブレイズキック”は”かえんボール”の中心を捉えた。炎の竜巻を纏い奔るそれ(・・)は、凄まじい速さでフリーザーに襲いかかった。

 

 フリーザーはその火球に対して、”みずのはどう”に”れいとうビーム”を重ねて球体の盾を作り出し受け止めようとしていた。しかし火球自体が高速回転をしているため貫通力が増しているので、火球は盾を貫きフリーザーに命中した。

 直後、”みずのはどう”が”竜巻かえんボール(仮名称)”の引き起こした水蒸気を突き破ってエースバーンに命中。戦闘不能になった。

 

「おつかれさまエースバーン、よくやった。ルカリオ、弔い合戦だ」

「バゥン…」

「……言葉の綾だよ」

「フォウ?」

 

 何言ってるだお前は、とルカリオの目が言っている。許してよ、あの攻撃を耐えられるとは思ってなかったんだから。

 それはそうとルカリオは回復を済ませていた。決して本調子では無いが、漲る闘志は最も調子のいいそれ。加えて、体は暖まっているので小手調べも必要ない。最初から全力を出す。

 

 先手はフリーザーの”みずのはどう”。ルカリオは身のこなしで回避、すぐさま”ストーンエッジ”を展開して機動戦に持ち込む。

 

「フォゥッ!」

「オゥン!」

 

 フリーザーはそれに”はがねのつばさ”を繰り出し、こちらのリズムを崩そうとする。対するルカリオは”つるぎのまい”を舞いながら”ブレイズキック”で応戦。その間波導で”ストーンエッジ”の石片を操りながら死角に、フリーザーの上に、常に有利に立ち回れるように絶えず動きながら”はがねのつばさ”をいなす。

 

「……ッつ…!今、”はっけい”ッ!」

 

 ”ブレイズキック”による蒼い炎を嫌い、距離を取ろうとした瞬間を狙って渾身の”はっけい”を撃ち込む。

 さて、今日ルカリオが大木を倒すために使っていた”はっけい”だが実はかくとうタイプが覚える本来の”はっけい”とは少し違う。あちらはかくとうタイプのエネルギーを手のひらに集め相手の体内へ流すものだが、ルカリオが使っているのは簡単に言えば”波導発勁”である。文字通りかくとうタイプエネルギーではなく、ルカリオ自身の波導エネルギーを流すものであり技ではない。

 即ち――

 

「そこから”しんそく”ッ!」

「バゥゥンッッ!」

 

 第5の攻撃の隠し玉として扱うことも出来る。そして、ルカリオならば展開された”ストーンエッジ”により鋭角的な動きによる攻撃を当てることができる。

 その攻撃に対するフリーザーの行動は、その強靭な翼から放たれる暴風であった。

 

「グッ……!そりゃズルいぞっ!」

 

 両腕に焼け付く痛み(・・・・・・・・・)を感じながら悪態をつく。バシャーモが場に出てユウマの前に立つ。ガートしてくれるのだろう。

 ユウマの視界には今2つの景色が広がっている。一つはフリーザーとルカリオが対峙している光景。もう一つはルカリオを吹き飛ばさんとしている目の前のフリーザーの姿(・・・・・・・・・・・)である。

 

「ルカリオッ!行けるな!?」

「バゥ!」

 

 その時、暴風を空中で躱し続けていたルカリオから突風のようなものが吹き荒れた。

 手の甲にあるはがねのトゲが無くなり前腕を覆う。碧く煌めくソレは、さながらカタナの様だ。

 それ以外は殆どメガルカリオの様だが、その瞳に光る色は深紅と灰のオッド。ユウマの目と同じ色をしている。

 

「行くぞルカリオッ!”波導発勁”!」

「アォォォォォォンッッ!!」

 

 雄叫びを上げて宙に浮かぶ石片を蹴り加速する。先程までの動きよりも疾く、鋭く迫っていく。フリーザーは姿を変えたルカリオを警戒して最初は動かなかったが、トップスピードで迫る碧い閃光に暴風で対抗した。が、

 

「アォォォンッ!」

「フォ!?」

 

 放たれた暴風はルカリオではなく、舞い散る粉雪を吹き飛ばしただけだった。暴風に呑まれる直前にフリーザーの真下に回避、そして無防備な腹に発勁を叩き込んだ。

 フリーザーは吹き飛ばされるもすぐに体勢を整え、急降下を始める。おそらく”ブレイブバード”の構えだ。

 

「相手もなりふり構わず突っ込んでくるぞ!ルカリオ、”せいなるつるぎ”ッ!」

 

 両前腕からあふれる碧い輝きが剣を形作った。蒼炎の纏い突っ込んでくるフリーザー。それに対しルカリオは目を閉じたまま腕を交差させ集中力を今まで以上に高める。そして、

 

「フォォォォォォオオオッッ!!!」

「……シッ」

 

 ルカリオが上体を反らし、先程掌打を与えた腹を”せいなるつるぎ”で振り抜いた。

 

 

 

 

 

 その後目を回したフリーザーを一時的にモンスターボールに入れ、一番近くのポケモンセンターにて自身の手持ちポケモンとフリーザーを治療した。ユウマはポケモンセンターについた瞬間倒れたのでその辺の受付はバシャーモが行ってくれた。

 エースバーンとフリーザーの治療はすぐに終わったが、ルカリオは3日間事実上のバトル禁止、ユウマ自身はそこのポケモンセンターに3日入院することになった。主な要因はルカリオの腕からシビレが取れなかったこと。そして丸一日目を覚まさなかったユウマの治療のためだ。

 

「なんでこんなに無茶したんですか!」

「バトルを途中で投げ出したらフリーザーに失礼じゃないですか」

「そういうことじゃありません!」

 

 というように、ユウマはかなり絞られた。これにはルカリオとエースバーンを除く手持ち全員がジョーイさんに味方していた。

 幸いにも体力を使いすぎただけだった様ですぐに回復した。

 

「さて無事退院できたことだし、あとはお前をどうするかだな」

 

 そう言ってフリーザーを出す。ユウマとしてはあくまで一時的な処置としてゲットしたのであって、今後行動を共にするためにゲットしたのではない。なので逃がす前提でフリーザーを出したのだが。当のフリーザーはユウマの前から飛び立つのではなく、翼でボールと自身を指した。

 

「いいのか?俺と一緒にいるとこれまで以上に面倒なことになるぞ?」

「フォゥ」

 

 うなずき返されたので元々入っていたモンスターボールをしまい、新たにダイブボールを取り出しフリーザーをゲットした。

 

「出てこい、フリーザー」

 

 ユウマはフリーザーの背に乗り、現在地から真反対の西を目指し飛び立った。

 

 俺とルカリオに起きたエセメガシンカの謎を調べるため、ユウマたちはシャラシティへ向かった。




あけましておめでとうございます。

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