中編集 ラブライブ 虹ヶ咲   作:カーテンと手袋

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居眠り (虹が咲3)

かすみ「あ、またこんなところで寝てるんですか。彼方先輩」

まだ日陰のベンチで綺麗に丸くなりながら器用に寝ているのは、私が所属する同好会の先輩だ。まるで猫のように、それほど大きくはないベンチに乗っかっている。何やってるんですか、もう。かすみんはランニングをしているというのに。……いや、でも、これはこれで差をつけられるチャンスなのでは?

彼方「ZZZ」

寝息が聞こえるか聞こえないかの塩梅で、彼方先輩の背中は上下を繰り返していた。よく全体をぼんやりと見ると、ゆったり、上半身が風船みたいに膨らんでいる。そして、口や鼻から一定量の空気が放出され、本当に小さなスゥーという音が聞こえた。

かすみ「……にしし。少しイタズラしてしまいましょうか。えっと……うーん。そうですねぇ。あ、これがありました」

ポケットの中にしまっていた毛虫の玩具。リアルシリーズというガチャガチャで引き当てたのだった。本当は猫ちゃんが欲しかったのだけれど、当たらなかったのだから仕方がない。それにしても、毛虫が入っているなんてどういうこと? 全然可愛くないんですけど!

かすみ「彼方先輩の〜 髪の毛につけて驚かせてしまいましょう」

急遽思いついたこの作戦で彼方先輩を驚かせて見せます。私は右手で摘んだ毛虫の玩具を、彼方先輩の髪の毛のどこにつけてあげようか、色々と探索します。

かすみ「……」

ここでもないし、あそこでもないし。

かすみ「……彼方先輩、髪の毛に枯葉が付いてます。一体どこで寝たんですか、もう」

よく見ると、細かな枯葉が数枚髪の毛に絡み付いていた。むしゃくしゃします。こんなの可愛くないじゃないですか。彼方先輩はもっと自分の可愛さを大事にしてください。

かすみ「あぁ。こんなところにも」

毛虫はベンチの端っこに置いて、両手を使って、髪の毛を持ち上げたり下げたりした。さらさらと、掴んでいなければ逃げてしまう髪質に、少し嫉妬した。ある程度は取り終わった。

かすみ「こんな固い所でよく寝れますねぇ……ある意味羨ましいです……」

彼方「……なら、その願い叶えてしんぜよぉ〜」

かすみ「ええっ、起きてたんですか!」

私が覗き込むように屈んだ時、彼方先輩は薄目を開けて、そう呟いた。突然の出来事に、私は大きなリアクションをとった。完全に不意を突かれました……不覚です。

かすみ「起きてたのなら起きてたって言ってくださいよぉ! びっくりしたじゃないですか。もしかして、始めから起きてたんですか!?」

彼方「そんなことないよ〜」

良かった。どうやらイタズラは気づかれていないらしい。仕掛けてすらいなかったけど。

彼方「まぁ。かすみちゃんがランニングしてるところくらいからかな〜」

かすみ「えっそれって初めからじゃないですか!」

まだ状態はベンチに身体を全て預けたまま、顔だけは私に向けて笑っていた。

かすみ「忍び寄ったのにぃ……」

彼方「かすみちゃんの可愛い気配を感じてしまってね〜」

かすみ「なっ」

そんなの当たり前じゃないですか。かすみんが可愛いことなんて。これから全人類が思い知ることになるんです。まぁ、後々ですが。それにしても彼方先輩はずるいやつです。最初から気づいていたのに、気づいていないふりをしていました。イタズラをするつもりが、イタズラをされていたなんて。

彼方「まぁまぁ。かすみちゃんはさ、お疲れなんじゃない? ほらおいでおいで。ほら」

彼方先輩はまだ横になったまま、手でお腹あたりをポンポンしました。そんなに狭いベンチで、二人も寝られるわけないじゃないですか。私が静かに待っていると、彼方先輩はまだゆっくりとお腹あたりをポンポンしています。

かすみ「そこになんて座れませんよ」

彼方「ありゃりゃ」

彼方先輩は肩透かしを食らったような、まぬけな声を出した。そして「よっこらしょ」と上半身だけを起こし、今度は膝の上をポンポンし始めた。きっと座るまで続けるんだろうなぁ。

かすみ「わかりましたよぉ……」

根負けした私は、隣に腰掛け頭を膝の上に乗せた。弾力があって、案外悪くはない。しかし、ランニング途中の身体は、変な匂いは出ていないだろうか。そんなことないだろうけど、ちょっと不安だ。そんなことないだろうけど。

彼方「かすみちゃんは臭くないよ」

エスパーですか!

彼方「それと、今回のことは、目を瞑っておくれ」

かすみ「それって、どっちの……意味ですか」

彼方「あぁ、彼方ちゃんも眠くなってきたよぉ〜」

さっきまで一定のペースで撫でられていた頭も、独特なリズムに覆われていた。その不規則なリズムが睡魔を呼びかけて、私の瞼は重くなっていった。ランニングの疲れも少しあるのかもしれない。あんまり覚えていないんだけど、彼方先輩の手が柔らかく頭の上に乗っかっていた所まで、ギリギリ覚えている。

 

果林「あらあら」

かすみと同じようにランニングしていた果林は、偶然見かけたベンチを見て、静かに微笑んだ。

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