昔々あるところに怠け者で有名なお姫様がいました。
彼方「くるしゅうない」
そのため、お城には沢山の召使いがいました。
朝起きるときから、
しずく「起こしますよ、せーの」
彼方「うい」
身体を全て預け、
しずく「ドレスのシワが気になりますね」
お着替えまでやってもらっていました。
お食事もお洗濯もお掃除も
栞子「お味はどうですか?」
彼方「うまし」
お風呂掃除も電球の付け替えも
栞子「私の身長では適正とは言えません」
お姫様は何もせず、机に突っ伏して、慌ただしい城内をのんびりと眺めているだけでした。
この状況に母親は大変困っていました。
どんなに綺麗であっても、街の貴族や他の国の王族に、こんな姿は見せられません。舞踏会や茶会では敏感に神経をすり減らしていました。その結果、頭を抱えすぎて胃潰瘍になってしまいました。ストレスはとても怖いものです。見兼ねた召使いが言いました。
しずく「私はもう耐えられません」
このままでは、全ての召使いが辞めてしまう。
母親「はい。可愛い子には旅をさせましょう」
母親は苦渋の決断をしました。
ある日のこと。
のどかな田園が見える丘で、お姫様はすやすやとお昼寝をしていました。寄りかかっていた大きな大きな木は、太陽の光を遮って、けれど時々は木漏れ日を作る粋な木でした。何時間も睡眠を取るお姫様を心配した大きな大きな木は、気にせず言いました。
璃奈「物語が進まない」
そう言うと、さやさやと枝を揺らして毛虫やどんぐりを落としました。
彼方「……すやぁ、いだ……むぅ……」
不機嫌そうに目を覚ましたお姫様に、大きな大きな木は言いました。
璃奈「旅として前に進んで下さい」
今朝、母親と召使いに連れられ、隣町のお城に向かうと言われたお姫様は、寝ている隙にこの木の下へ置かれたのでした。
彼方「拒否したい案件です……」
しかし、このままナマケモノのように過ごしていたらどんぐりと毛虫だけを食べる生活になってしまう。まずいと悟ったお姫様は、とりあえず道を進み始めました。
彼方「ふぅ。険しいぜ」
整備された綺麗な道でした。
しばらく歩いていると、一匹のうさぎが話しかけて来ました。
あゆぴょん「こんにちは。何をしているんですか?」
彼方「ふっ、行く当てのない旅である」
時速3キロ程度で歩くお姫様は、久しぶりの話し相手に嬉しくなりました。
あゆぴょん「わあぁ。凄いですね。私もお供していいですか。大人になりたいんです」
急な提案に驚きましたが、しめしめとお姫様は思いました。
彼方「私のお世話をしてくれるのならいいよ」
あゆぴょん「出来る限りのことは……」
お姫様は、まず移動がめんどくさいのでおんぶしてもらいましたが、上手くいきません。ならと、お食事を頼もうとしましたが、フライパンを持てそうにありません。ではと、着替えや髪をとかしてもらいましたが、ぐちゃぐちゃになりました。
あゆぴょん「ふえぇ……ごめんなさぃ。私、不器用で何にもできないんです……」
彼方「ふむ。一人で歩いていた方が楽かもしれない」
お姫様は正直に言いました。
あゆぴょん「そんな悲しいこと言わないでよぉ」
今にも泣き出しそうなうさぎはしょんぼりとしました。
彼方「かわええかわええ」
まぁとりあえず、何か出来ることはやって貰おうと、うさぎをお供にしました。
ロールスロイスに乗った大富豪がお姫様に声をかけました。
侑「YO! 旅の最中かい? 良かったら隣町まで乗せてやろうか!?」
お姫様とうさぎは、顔を見合わせて、喜びを隠しませんでした。
彼方「感謝」
二人は乗り込もうとしました。
侑「待って待って。そこのうさぎさんも乗るのかい? そいつはごめんだよ。俺のハイパーカーに汚れがつくだろ。それに俺はうさぎアレルギーなんだ」
あゆぴょん「がーん」
お姫様はふかふかな後部座席に身を任せていました。うさぎは固まっていました。
彼方「どうしても難しいと?」
侑「アレルギーはキツいんだぜ」
うるうるとお姫様を見つめていたうさぎは、諦めた様子で言いました。
あゆぴょん「……今までありがとうございました。お身体には……」
もう起こせないと感じていた身体を無理やり起こし、お姫様は言いました。
彼方「まったく……やれやれだぜ」
うさぎは本当に困ったやつだと、お姫様は思いました。しかし、置いて行くことも出来ないなぁとも思いました。
彼方「お気持ちだけ頂戴します」
侑「まぁ、頑張りなYO! 飛ばすぜ!!」
あゆぴょん「……あの」
彼方「もう少し頑張ろう」
ようやく街に辿り着きました。
お姫様は一銭もないので、質屋に向かいました。
彼方「たのもぅ」
愛「いらっしゃーい! うわっ、なになに!? 全身ボロボロじゃん! そんなんじゃ綺麗な顔とお洋服が台無しだよー! とりあえずさ、お風呂入っていきなよ!」
彼方「しかし、金は持ち合わせていないのです」
愛「いいっていいって。良いことした方がいいって、ばぁちゃんも言ってたし。たはは!」
なんと、お風呂で綺麗になっている間、お洋服まで洗濯してくれたのでした。お姫様とうさぎさんが感動していると、ジャムが塗られたパンもくれたのでした。
愛「なんかすっごい良い素材のお洋服だね」
彼方「姫である」
愛「えっマジ? あの一国の? たはは! お姉さん面白い冗談言うー!!」
彼方「ふむ」
あゆぴょん「あの、本当にありがとうございます。何から何まで……」
愛「はぁう! ちょっと待って! めちゃくちゃ可愛い! あのさ、一回だけぎゅってしていい?」
彼方「許可する」
愛「ふわああぁ!!」
うさぎさんはしばらくもふもふされました。
彼方「買い取っていただきたい」
愛「そっかそっかー お客さんだったねー 何でも鑑定するよー」
うさぎさんとお姫様は机の上に、旅の途中で拾った小石や枝、虫などを置きました。
愛「あはは……流石にこれは難しいかなぁ」
彼方・あゆぴょん「がーん」
愛「何とか助けになりたいんだけど、商売だからさー うーん、もしさ、もしお姫様だとしたらさっきのお洋服とか、うーん」
彼方「じゃあそのお洋服で」
愛「えっ! いいの!? 欲しいとかそう言うわけで言ったんじゃないよ!」
彼方「うん、よい。変わりにこの街に似合うお洋服を下さい」
愛「うーん、そこまで言うなら……よし! 買った! 交渉成立!! 握手握手」
彼方「あと、このうさぎさんにもかわええものを頼む」
そのお洋服にそぐわない大金を手に入れたお姫様は、質屋を後にして、食事をしようと歩き出しました。