中編集 ラブライブ 虹ヶ咲   作:カーテンと手袋

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なまけ姫、反省 (近江彼方4)

もう次の日の夜、みんなが寝静まった頃、そろりそろり動く人影がありました。誰にもバレないように用心しています。物陰にうまく隠れながら進んでいます。

彼方「いてっ」

お姫様でした。お姫様はこそこそしています。こんな夜中に何処へ向かうのでしょうか。

彼方「あったあった」

コノエル家が去った後、ユウキーヌ家が街の護衛を引き受けたことで、人々は安心しました。罰を受けた人や質屋の女、脚の長い女、うさぎなどは病院へ運ばれ、治療を受けました。

彼方「まさか初お給料で買うとは」

お姫様は違和感を感じていました。病室で話していると、それは確信に変わり始めていたのです。

彼方「ばーん! 電動自転車!」

コノエル家は平和思想だったと話す王子様。街と交流を大切にしていたと言う質屋の女。お姫様をあまり見たことがないと言う友達。うさぎは脚の長い女がやられた時の話をしました。

彼方「ふっ、自慢するほどでもないか……」

鏡という単語に王子様は反応し、どうしてこの街を訪れたのか話し始めました。

この世界を支配しようと目論む魔女が、

勇者一行に討伐された。

世界の平和は保たれたが、

魔女が大事に使っていた雑貨達が逃げ出し、

色々な場所で悪さを始めた。

王子様はその雑貨の一つが、

この地区に来たという情報から、

ずっと追っていた。

それは"魔女の手鏡“

もしかしたらコノエル家は、

影響を受けているのかもしれない。

彼方「ちょっと悪い子だけど、ライトはつけずに行こう」

電動自転車を跨ぎ足をペダルに乗せようとすると、ガタッと物音がしました。お姫様はもう気付かれたかと思いました。

かすみ「こんなことだろうと思ったんだよね」

彼方「かすみちゃん……」

かすみ「酷いよ、ほんと。友達を置いていくなんてさ」

友達も両手にハンドルを掴んでいました。

彼方「買ったの?」

かすみ「うん、昨日ね。だって、彼方、ずっとソワソワしてたでしょ。私には分かるんだからね」

お姫様は有無を聞きませんでした。聞いても聞かなくても、きっとついてくるとしか言わなさそうだったからです。二人はライトをつけずに静かに街を出ました。

 

璃奈「また旅人に?」

大きな大きな木はスピードに乗った二人に話しかけました。

彼方「ちょいと城まで」

二人は地面に足をつけました。

かすみ「おっきな木だね」

璃奈「100年間木をやってる」

二人は植物の命に驚きました。

彼方「それじゃ」

二人がペダルに足を掛けようとすると、木は言いました。

璃奈「空を見て、星がいっぱいあるから」

二人は街を出てから初めて上を向きました。

かすみ「わぁ……」

彼方「おぉ」

周りなんかには目が向かないほど必死だったのです。

璃奈「同じ所ばかり見ていると、疲れちゃうよ」

二人は大きな大きな木の言葉を胸に刻みペダルを漕ぎ出しました。

 

警戒した二人でしたが、城へはすんなり入れました。こんな夜中に「お待ちしておりました」と門兵は言いました。

かすみ「まずい気がする」

彼方「うん」

場内を進んでいくと、食堂に行き着きました。すでに食事が用意され、着席している人物がいました。

しずく「お待ちしていました。どうぞおかけに」

二人は静かに従いました。

兵隊「こちらはブラガスのトルトルソース煮。こちらはララララ鳥のスープ。こちらは……」

料理を説明する兵隊の言葉を聞かずに、友達が言いました。

かすみ「何が目的なんですか?」

兵隊は呪文のように続けていました。それほどテーブルの上には料理が置かれていたのです。

しずく「愛されること」

お姫様はただ黙って見ていました。

かすみ「よく、分かりません。それがあの街でのこととどんな関係が」

しずく「……でも、もう難しくなってしまいました……どうぞ、お食事を。シェフが腕を振るっています」

かすみ「……あなたが食べないと食べません」

しずく「毒があるか疑っているんですね。貴女方を殺すと。心配なく。殺すのならば、もう街で殺しています。まぁでも……いいでしょう。食べましょうか、私の死んだ味覚でも良いのなら」

友達は食べている姿を確認すると、料理に手を伸ばしました。お姫様も同じようにしました。二人は美味しいと思いました。そしてお姫様は決めました。

彼方「……しずくちゃん。私、さっぱりなんだ。何がどうなっているのか。どうして、しずくちゃんが、そこに座っていて、兵隊さんがみんな言うことを聞いて、お姫様の、ううん。私の服を着ているのか、全然、分からないの」

しずく「……不服ですか?」

彼方「そういうのでは……ないけど……」

しずく「……」

手を二度叩くと、奥の部屋から一人の女性が出てきました。お姫様はその女性を忘れるわけはありませんでした。

彼方「お母様っ」

かすみ「え?」

母親「こんばんは。今日は娘の晩餐会にお越し下ってありがとうございます。大変だったでしょう。しずく、無礼がないようにね」

しずく「はい、お母様」

彼方「お母様! 私です! 彼方です! どうしてですか!? しずくちゃんは娘ではないはずです!!」

お姫様は理性を保つのに必死でした。お姫様の頭の中で色々なものが繋がっていきました。この状況も考えられることでした。なぜなら、街の人々は誰一人、お姫様のことを知らなかったからです。

かすみ「え、え?」

友達は話の内容を理解するのに時間が必要でした。

母親「あなた、ごめんなさい。存じ上げませんけど」

彼方「……っ! 娘は私です! いつもいつもダラダラしていた彼方です! なまけ姫なんて呼ばれてしまった不甲斐ない娘です!! それがいけなかったのなら謝ります! 私、数週間ですけど、頑張っています。家事もやっています、学校にも通っています、友達も出来ました。だから、だがら……っうそだったら、そうだってっ……言ってよ……お母様……」

お姫様は泣くのを堪えました。

母親「……? 何を言っ……うぅ」

母親は頭を抱えてうずくまってしまいました。

しずく「……なるほど、完全では無いんですね」

そう言うと、立ち上がり、手鏡を取り出しました。

かすみ「それは!!」

友達も立ち上がり、それを奪おうとしましたが兵隊に阻まれてしまいました。

しずく「鏡よ鏡。この城の娘はいったい誰ですか? おひめさまにふさわしいのはいったいだぁれ?」

鏡が光を放ち、城内の全てを覆いました。何もかもを覆い尽くし、まるで世界も包んでいくような眩い光でした。お姫様は眩しくて目を瞑りました。しばらくの間、瞼も明るいまま閉じる目を攻撃していました。

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