中編集 ラブライブ 虹ヶ咲   作:カーテンと手袋

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なまけ姫はいなくなった (近江彼方5)

彼方「はっ!」

お姫様は目覚めました。

彼方「ここは……」

璃奈「やっと起きた、物語が進ーー」

彼方「みっみんなは!? かすみちゃん!?」

大きな大きな木は、先ほど、ここに連れられたお姫様が騒ぎ出して驚いてしまいました。

彼方「お母様!」

お姫様はお城の方へと駆け出しました。

璃奈「行っちゃった」

お城はずいぶん遠いのです。先程は電動自転車ですいすいでしたが、お姫様の走力では時間がかかってしまいました。しかし、進んでいれば必ず着くのでした。

彼方「私です! 開けてください! 通してください!」

門を通ろうとするお姫様を門兵は止めました。

門兵「帰れ。どこの誰だか知らない奴が、勝手に入れる場所じゃないぞ。本日は客人はないと聞いている」

彼方「なにを……わたしはっ! コノエル・ラック・カナタ! この城の第二王女です!」

門兵「何を言っているんだ。この城の王女は一人しかいない。コノエル・ラック・シズク様だけだ」

彼方「っ! どうして!?」

このような押し問答を繰り返しましたが、門兵が本気で排除しようとしたので、お姫様は諦めました。

 

とぼとぼと来た道を歩いていました。

大きな大きな木までは遠い道のりでした。

お姫様は生き別れになった友達に会いたいと思いました。訳が分からないこの状況を受け止められなかったのです。

侑「YO! 旅の最中かい? 良かったら隣町まで乗せてやろうか!?」

ロールスロイスに乗った大富豪がお姫様に声をかけました。

彼方「あなたは……」

侑「おっと、俺も有名になっちまったみたいだなぁ。大富豪すぎるもんな」

お姫様は乗り込み、ふかふかな後部座席に身を任せました。

侑「シートベルトは閉めた? OK! 飛ばすぜ!!」

景色が移り変わります。お姫様は鉄の乗り物になるのは初めてでした。たわいのない話をしながら、お姫様はそわそわしていました。

 

すぐに街に着きました。お姫様はお礼を言いました。そしてすぐにお金が掛からなそうなお店に入りました。学校は開いている時間ではありません。友達が働いている時間を、お姫様はしっかりと記憶していました。

かすみ「いらっしゃいませー」

彼方「かっかすみちゃん! 良かった、元気だね。怪我ない? どうやって帰ったの、心配だったんだよ! 急に居なくなるから」

かすみ「えっと、あのっ、わっ! あのあの」

彼方「お城でのこと覚えてる? 私全然覚えてなくて。あーでも本当に元気で良かったよー!」

かすみ「あの、どうしてっ。どうして私の名前知ってるんですかー? あああ」

お姫様は友達を揺すったり抱きしめたりしていました。お客さん達はそんな様子を見ていたり見ていなかったりしました。

彼方「あはは、何言ってるのー かすみちゃん。一ヶ月以上の仲じゃない」

かすみ「しょっしょたいめんですー!」

彼方「えっ?」

お姫様は固まってしまいました。

かすみ「えっと、私……あなたと友達になった記憶がまったくなくて……」

彼方「冗談だよね……? じゃないと、怒るよ?」

かすみ「すみません、冗談じゃないです。もしかしたら人違いなんじゃ……だって私には……親しい人なんて……」

お姫様はお金が掛からなそうなお店を飛び出しました。頭がこんがらがって、泣きたくなって、喚いてしまいたくて、どうしようもない気持ちになりました。

お姫様は外観が良さそうなお店に入りました。

エマ「あれ、今日はお休みだよ?」

彼方「知ってます……」

エマ「それじゃあどうしたのかな?」

彼方「私のこと、覚えていますか……?」

エマ「えっ、えっと……ごめんねっ。会ったことあるような、ないようなー」

彼方「ぐすっ……」

エマ「ああっ。頑張って思い出すから! ちょっと待っててね! えっと、えっと!」

お姫様にはその優しさが胸に余計沁みました。謝罪をして、そのお店を出ました。

次に、質屋に向かいました。

愛「いらっしゃーい! べっぴんさんだねー この街では見ないし、旅の人!? 色々置いてあるよー!!」

彼方「……」

お姫様はすぐに察して、質屋を後にしました。お姫様を覚えている人は誰もいませんでした。泣きたい気持ちはいつの間にか消えていました。ぼんやりと街並みだけを見ながら歩いていました。辿り着いたのは、街の隅にある小さなベンチでした。それを見つけた途端、急に歩くことが億劫になりました。誰に見られても良いような気持ちにもなりました。お姫様は座って何処を見ることもやめました。ベンチに丸く小さくなって横になりました。難しいことはあんまり考えないほうがいいと思いました。お姫様はゆっくりと目を閉じました。深く深く。睡眠の奥へと向かおうとしました。また、怠け者に戻ろうと思いました。

 

 

 

「…方……!!」

 

 

 

「彼…さ…!!」

 

 

 

「彼方さん!!」

遠くでお姫様を呼ぶ声がありました。

お姫様は意識の中で聞いていました。

「彼方さん!」

それは聞いたことがある名前でした。

お姫様は目を薄く開けました。

「彼方さん!」

夕焼けがやけに眩しく侵入してきました。

お姫様はその声を聞いていました。

「こんなところにいたんですね!」

影になったシルエットを覚えていました。

お姫様は覚えられていました。

「探したんですよ! みんな私のこと覚えてないし、気がついたら道で寝ていたし、いったいどう言うことなんですか!」

正義感に満ちた声でした。

お姫様はそっと手を伸ばしました。

「またこんなところでお休みして! さぁ立ってください!」

小さな手はお姫様の服を引っ張りました。

お姫様はうさぎの頭を撫でました。

彼方「かわえぇ……かわぇぇ……」

きゅぅと力の抜けるうさぎが怒りました。

お姫様はそのままぎゅっと抱きしめました。

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