中編集 ラブライブ 虹ヶ咲   作:カーテンと手袋

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お姫様の日 (近江彼方6)

「あのね、これ……あなたに」

 

「いいんですか!? いただきますね!」

 

「プラプラの果実。この木から取れるの」

 

「むしゃむしゃ。これは、とっても美味しいです!」

 

「よかった」

 

「あなたの名前は?」

 

「私は……カナタ……コノエル・カナタ」

 

 

兵隊「本日の舞踏会は、ユウ伯爵も来られるそうです」

しずく「そうですか」

サーモンのカルパッチョやコーンスープが並べられたテーブルを前に、兵隊はスケジュールを話しました。

兵隊「ニジガサキ王国全土から貴族や華族が来られます」

お姫様はオムレツを食べました。無機質な粘土みたいな感触でした。味は分かりません。

母親「ユウキーヌ家の王子も、しずく。粗相のないように」

しずく「当たり前ですよ」

お姫様はシャンパンを一つ開けました。コップを持ったであろう右手を眺めながら、口へと運びました。恐らく喉を通りました。この量では身体は重くなりません。コップを眺め、空になったことを確認すると、お姫様は飲んだことを理解しました。脳みそがきゅっと締め付けられた気持ちがしました。

しずく「ようやく、ちゃんと会えるのだと思うと、幸せな気持ちでいっぱいです」

ご馳走様をしました。

 

舞踏会はチョルンチョルン王国の七城で行われます。お姫様たちは列を作り、三日を掛けて辿り着きました。くたくたになった一行は、十分な休息を取り、その日の翌日、七城へと向かいました。階級や人種、家柄を持った人々だけが集まる城内は、優雅に、しかし厳格に統制されていました。お姫様は、ずっと夢見ていました。この情景を、ひとりの少女のように。

 

侑「よく似合ってるYO!」

伯爵はお姫様が着用したイブニングドレスを褒めました。純白な礼服は、少しばかり目立ってもいました。

しずく「デビュタントですから」

侑「そこまで堅苦しくしないで、はっちゃけはっちゃけ!」

初めての社交界に緊張するお姫様を、伯爵は優しくはっちゃけました。お姫様は伯爵に御礼を述べた後、次々と参られる貴族や華族に挨拶をしました。心身ともに、これはお姫様を疲労させました。

赤いドレスの人「わあぁ、ユウキーヌ王子よ」

耳たぶにほくろがある人「高潔な血よ」

語尾にザマスがつく人「凛々しさの中にカマキリざます」

王子様はその場に居る人たちの視線を、一瞬で奪いました。

 

お姫様はダンスの場から少し離れた場所で、静かに踊る貴族を見ていました。憧れていた情景と、その裏側で繰り広げられる探り合いのギャップに、お姫様のやる気は削がれていました。ここは親たちによる見合いの要素が強い舞踏会でした。

せつ菜「お疲れですか?」

でも、お姫様は焦ってはいませんでした。

しずく「ええ。少し」

ユウキーヌ家とコノエル家は代々良好な関係を築いていました。

せつ菜「一緒にいても?」

周りがどう立ち回ろうとも、決められたレールの上なのです。両家の親は既に縁談を進めています。これは顔合わせみたいなものでした。

しずく「楽しくさせられるか、不安ですが」

せつ菜「それは私の仕事ですので、心配なさらず」

二人は他愛もない会話をしました。そこに居たのは、ただの男と女。何者も二人の仲を侵害することはできません。

せつ菜「知っていますか?」

しずく「なにを?」

王子様は質問しました。

せつ菜「私たちは婚約するということを」

しずく「知っています。ずっと待ち侘びていましたから」

お姫様はそれに答えました。

せつ菜「だから、ここでキスをしても何も問題がないってことも、知っていますか?」

しずく「はい。心配するのは、周りが慌てることくらいですね」

王子様とお姫様は幸せなキスをしました。

せつ菜「……ブルーベリーの香りがしますね」

しずく「はい」

お姫様は何の味もしませんでした。恐らくキスしたのであろうことも、王子様がそう発言されたので分かりました。

せつ菜「踊りませんか?」

お姫様は王子様の手を掴んだことを、しっかりと見ていました。

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